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間章:深い闇の穴
闇の中に、光の粒が浮かんでいる。
洞窟を抜ける風が、ひょうひょうと鳴っていた。水のせせらぎも聞こえる。音だけの世界で、彼は中空に光の粒を見出しては、口元をほころばせていた。
「よくぞ、来た」
彼は暗闇で繰り返した。光の粒の動きに、喜ぶような意思を感じたからだ。
「よくぞ、来た」
彼は繰り返し、腕を広げた。
水と風の音が聞こえる。
彼は迎え入れるように腕を動かしながら、遠い遠い南にいる誰かへ、声を送り続けた。
闇の中に、輝く瞳が浮かび上がる。獣毛に包まれた手を組み合わせて、彼は祈りを捧げた。
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第3章はこれにて終了です。
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