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就活戦争

作者: 鹿沼部直作


「失礼しました」

東京、五本木にある五本木ヒルズ。そこの55階にあるオフィスから出てきたのが、主人公 大泉慎之助おおいずみしんのすけ22歳。鳳凰大学四年。絶賛、就活中である。

五本木ヒルズを出て駅の近くでランチをしながら誰もいない所に向かいつぶやく。

「受かったな…まぁ、余裕だったな」

余裕の笑みを浮かべながら、バックにあるタバコを取り出し火をつける。

ブーッブーッ。

 ポケットにしまってある携帯が震え、画面を確認する。どうやらつい先ほど受けた企業からのメールであった。

 文頭には「当社に面接にお越し来ていただき〜」と始め、そして最後には「今後の貴殿の就職活動をお祈りします」

 不採用通知。通称、お祈りメールであった。

「いやー、俺が入るには小さい会社だったからなぁ! 俺に乗っ取られるかと思ったのかな!」

昼時と言うこともあり、お客はそれなりに入っている。それなりのお客が彼の事を奇異な目で見つめる。

「ん?なんか視線を感じるな…。ふっ、今更俺の魅力に気づいたか。いやー!人気者はつらいな!!」

…そう、彼はポジティブなだけではなくナルシストでもある。先ほどの面接でも…。

~二時間前?~

 「大泉さん、御社を志望した理由はなんですか?」

 「はい、理由は2つあります」

 彼は一つ「こほん」と咳払いし、先程読んだ「勝てる、就職活動!!」とかいう本に書いてあった事をそのまま復唱した。

 「1つ目は、御社がコンサルティングから始まり、設計、開発、保守管理までをトータルにサポートしている点です。 お客様の業務知識を積極的に吸収し、コンサルティングのできるエンジニアを目指したいと考えています」

 「そして2つ目は、整った社内研修制度がある点です。 進歩の速いIT業界においても、自分から日々勉強に励むことで、最先端の技術や必要知識を習得できると思います」

 「なるほど」

 無論、嘘である。本当の理由とは…。

 (募集出しててちょうど目にとまったからに決まってんだろカスが)

 「では次の質問にまいります」

 「はい」

 「なぜ、コンサルティングをしたいのですか?」

 「はい、お客様の命運にかかわる責任の大きい仕事ですが、それだけにやりがいを感じられると思うからです」

 (面倒だな〜。早く「採用です、明日からにでもお願いします!」って言って土下座してくれないかな〜)

 「現時点では~」

 無難な質問に無難に返し、時々、心のなかでは毒づく。こうして彼の面接は2つの意味で終わりを告げた。

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