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初めて

「だって好きだもん」


そう言って僕に近づいて来ると。


「来て」


と手を引っ張って僕を席から立たせる。

僕は必死に抵抗しようとするが、君の顔を見てそれを止める。

なぜか、泣きそうになっていた。


言葉が詰まっていた僕を引っ張って教室を出て、そのまま下駄箱で急いで靴を履き替えるとせかせかと僕を引っ張っていく。


「痛いよ、離して!」


校門を出る頃に運動が苦手な僕は急に走って息が荒くなっていた。

その様子に気がついて足を止めてくれた君は、荒々しく空気を吸って吐いている僕を見つめていた。


「ごめんなさい……」


萎れたように僕に謝ってくる君。

よく分からない。


「ねぇどうして、僕にしつこく付きまとうの?」


僕は息を整えながら君に質問した。

そうすると君は「それは……」と口ごもる。

僕はとにかく知りたかった。

仲良くなりたい以上に、僕の何が良いのかを。

やがて彼女は決心したかのように胸元に手を置いて僕を見つめる。


「それはね……わたしの超能力であなたが驚かなかったことがなんか気に掛かって……それに全然興味も示さないところとか……かっこいいなって」


それを聞いて僕は唖然とする。

君は最初から本気で僕と仲良くなろうとしていたのかと。

しかもそんな理由で……。


なんて馬鹿馬鹿しいんだろう、僕はついフフフと笑ってしまう。

そんな僕に頬を膨らませて怒りそうな顔をする君。

だから僕は見せてあげることにした。

今なら誰も見ていないから、特別に。

僕はポケットからハンカチを取り出すとそれを手放し、宙に浮かばせてみせる。


「僕が君に興味を示そうとしなかったのは、こーいうことなんだ」


初めて親以外の人間に見せる能力。

その能力を見て君は、いつも僕に向けていた笑顔以上に眩しく笑っていた。


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