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第2話 出会い

 少年がしばらく歩くと、道端に一つの影がうずくまっていた。

「……あの、すみません」

「はい?」

「あの、何か食べ物を頂けないでしょうか」

 少年は驚いて、目の前にいるショートヘアの少女を眺めた。この世界で物乞いをしているとは、一体どういうことなのか。どこか虚ろな少女を見て、少年は持っていた合成パンを慌てて差し出した。

「明日の朝食に買ったものだけど……、これで良ければどうぞ」

「いいんですか!? 本当、申し訳ないです」

「まだ食べ物は家にあるので、大丈夫ですよ」

 少女も飲み物は持っていたようで、多少なりともお腹は満たせたらしく、食べている姿は満足そうだった。途端に、少女の目の焦点が少年に合うようになった。

「ありがとうございます。こんな見ず知らずの人間に……。またの機会にでも、ぜひお礼をさせて下さい」

「嬉しいけど、日々の食事に困ってる人に、頼み事なんか出来ませんよ」

「食事が取れなかったのは今日だけです! 普段はそこの職業斡旋所にいるんですが……。良ければ今度来てください。職業訓練を受けていないなら、良い所を紹介しますよ」

 新世界のティーンエイジャーは、基礎教育の他に、しばしば専門職の職業訓練も受けていることがある。職業斡旋所は、そういった職業訓練や、就職・転職の手続きを一手に担う場所である。少年は基礎教育しか受けていなかったが、ここで少女に職業訓練を勧められたのも、何かの縁のように思えた。


 少年は日を改めて、休日に職業斡旋所へ行ってみた。中へ入ると、あの時の少女がそこにいた。少女はここで、主に雑用をしているようだ。少年が視線を向けると、しばらくして少女と目が合った。

「こんにちは! この前はお世話になりました」

「いやこちらこそ。斡旋所があるのは知ってたけど、来る機会なんて無かったから」

 少年はあのままキザに「見知らぬ人」で通そうかとも考えたが、斡旋所などいずれは来る所だし、何より少女からの誘いを無下にするということが、どうももったいなく感じたのだった。

 改めて自己紹介もして、少年の名はテルル、少女の名はクロムということが分かった。前に物乞いをしていた理由もそれとなく聞いてみたが、クロムが押し黙ってしまうので、深く聞くのは止めておいた。さしずめ、何かミスをして夕飯を抜かれたりでもしたのだろう。

 それはさておき、せっかく来たので、興味の持てそうな仕事を探してみることにした。特に働くことなど考えていなかったのだが、いざ調べてみると、様々なことが分かって面白かった。中でも目を引いたのは、「統括本部システム整備」の職業訓練だった。統括本部とは、イデアや幹部達がいる、新世界の中央機関の一つである。

「おや、お客さん、こちらの職業に興味をお持ちですか? さすが、心の広い方は志も高いのですね!」

「うーん、そうだねえ、じゃあやってみようかなあ」

「分かりました! では登録申請をしておきます」

 テルルは冗談半分で言ったつもりだったが、クロムが乗り気で奥へと帰っていくのを見て、ただ茫然としているしかなかった。

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