めがねっ娘の未来
「何らかの理由により視力の低下を余儀なくされた者に救いの道として提示されたのが〝眼鏡〟であった。眼鏡はその落ち込んだ視力を分厚いガラス板、通称〝レンズ〟によって補い、ボヤけた視界の再明確化を促す医療器具としてその地位を確立したのであった。しかし時は流れ現代。もはや眼鏡の在り方は視界確保の補助器具としてではなく、フォーシーズン、あるいはその日の気分によって付け替えるアクセサリーとしての意味合いの方が強くなっている。当然メーカーはよりファッション性に富んだフレームを発表し、販売店もこぞって〝オシャレアイテム〟としての眼鏡を店頭に陳列した。表情のキツい人にはあえて野暮ったく見える太縁眼鏡。幼すぎる人にはハーフリムタイプでスマートさを演出。このように眼鏡の使い方も多岐に及ぶに至り、人々の中で確実に眼鏡に対するイメージというものが変化していった。
そんな中において眼鏡っ娘愛好家たちは、実際に目が悪くないのに眼鏡を使用する女の子たちを、果たして真摯に眼鏡を必要としている女の子たちと同列に扱ってよいものかどうかという命題にぶち当たり、頭を悩ませていた。眼鏡っ娘愛好家たちは前者を〝サバエ(視力に対してサバを読んでいることから)〟、後者を〝ネガウ(切に視界確保を願っていることから)〟と呼んだ。
答えは次代へと持ち越されることとなったが、その頃にはもう流行は変わっているだろうし、人類は眼鏡やコンタクトを超える発明〝*アイリフレッシュ〟の実用化に成功していることだろう(*それはips細胞を目薬の要領で直接眼球に浸透させることで視力を蘇らせるというものに違いない)。
そうして、眼鏡っ娘たちの姿は街から消えるのだ」