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クリスマスには関係ない思い出

作者: 鈴原 イサ

ちょっとだけ本当の話。

 クリスマスと言えば友達とわいわい馬鹿みたいに遊ぶ事が恒例な気がするがそんな仲のいい友達が出来るずっとずっと昔の話。


 ※※※


 つくばの冬はよく冷える。


 しんしんと降りしきる雪が辺り一面を覆い雪景色をつくっていた。


 僕はお気に入りの長靴で綺麗で雪の積もった道をサクサクギュギュと音を鳴らしながら近所にある公園に行った。


 明日は年に一度のクリスマス。サンタさんからプレゼントを貰える日だ。今年僕はサンタさんにゲームを頼んだんだ。だから今から遊ぶのがすっごく楽しみだった。


 それにしても何で僕は今日公園に行ってるかというと××君と遊ぶ約束をしていたんだ。雪がいっぱい積もってるけど一体何をして遊ぶんだろうと思い雪合戦でもするのだろうかとワクワクしていた。


「おーい××××早く来いよー」


 ××君が僕を呼んでいる。脇に小さなボールを抱えた小さな男の子だ。


「お待たせー、××君来るの早いねー」


「今日で遊ぶのが最後だからな」


「今日で?」


「まあそんなことよりもこれで遊ぼうぜ」


 ××君は脇に抱えた小さなボールを器用に足の甲に乗せて軽やかにボールを操った。××君の足にまるでノリでもついてるかのごとくボールは離れることなく××君の足にへばりついていた。


「ほへー××君凄いー。これなーに?」


「サッカー」


「サッカー?」


「うん。他にもこんな事するんだぜ」


 そう言うと××君はボールを高く蹴り上げ落ちてくるボールを××君は屈みながらそれを首と背の間に乗せた。


「どうだ」


「すごいすごーい」


 僕は思わず手を叩いた。


「まだまだー」


 ××君のボール捌きは止まらない。首を軽く沈め瞬時に跳ね上げることでボールを真上にあげる。その上がったボールを器用に両足でポンポンとリズムカルに小さく蹴る。


「うわー」


 僕は見とれていた。思ってみれば幼い時の記憶なんて朧げで思い出そうにも思い出せない事が圧倒的に多いのにも関わらず僕は××君のボール捌きが未だに頭の隅にこびりついていた。


「どうだすごいだろー」


「うんうんこれがサッカーなんだあ」


「まあちょこっと違うけどな」


「ねえねえ僕にも出来るかなあ」


「××××にも出来るさ。練習してみよう」


「うん!!」


 その時僕は初めてサッカーボールに触れた。思えばリフティングに関してただならぬ情熱を抱いてたのはこのことがあったからだろうか?


 それから暗くなるまで二人で仲良くボールを蹴っていた。


 ※※※※


「ふーたのしかったー」


「俺もー」


 外はすっかり茜色に染まっており白一色の雪景色は柔らかなオレンジ色を含んでいた。


「じゃあ僕そろそろ帰るね」


「ああじゃあな」


「バイバイまたね」


「ああいつか会おうな」


 彼は少しだけ悲しそうな顔をしていた。僕は公園を出ようとしたその時。


「そうだ××××。これやるよ」


 そう言って××君は小さなボールを僕によこした。


「俺がどっか行ってもそれを見て思い出してくれよな」


「うん? でもありがとー」


 当時俺はどこか知らない土地に行くということを理解していなかったからこの時××君と会えなくなるとは思ってなかった。


 そして××君と別れたあと家に帰ったらクリスマスパーティーを近所に人達と一緒にした。楽しかった。


 そこで僕の記憶は途切れている。


 今××君はどんなサッカー選手になってるか気になるが名前の書かれた小さなボールはとっくの昔に無くなり思い出も風化したため何も思い出せない。


 ただ××君のお陰で僕は人生の半分の時間を消費したスポーツに出会うきっかけとなった。


 クリスマスの前の日に関係ない話だったが僕にとっては凄く心に残った話なのでここで筆を執らせてもらった。


 ここまで見てくれたあなたありがとう。


 そしてあなたにも思いれのあるクリスマスの思い出がある事を願って。


 Have a Merry Christmas

××君は実在しません。けど小さなボールは実在しました。

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