表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/392

83話 思いでは心の中へ


コツ……コツ……


 ここはブルーメの東側、ギルドや店が立ち並ぶ中心街とはちょっと離れた薄暗い雰囲気の場所。今私はその一角にある巨大な施設の地下へ下り進んでいる。

 やがて施設の下へ降りるとそこには厳重に閉ざされた門の前に人が二人、見張るように立っていた。


「ギルドの者だ、そこを通してもらいたい」


「ムゲン様ですね。面会の話は伺っております、どうぞお通りください」


 私がギルドカードを見せると看守は道を開け、門の先へと通してくれる。まるで牢獄……いや、ここは文字通り牢獄なのだ。

 特別な装置でマナの薄いこの場所では魔術はいつもの威力を発揮できない。まさに魔導師のための牢獄。

 では何故私がそんな牢獄などに足を運んでいるのか? それはここ……正確にはこの先にいる人物に用があるからだ。


「よう、気分はどうだ。まぁこんなところじゃいい気分になんてなれないか?」


 私が話すのは鉄格子の先にいる人物。そこにいたのは……。


「いえ、またあなたと話せると思うと心が弾む気分ですよ……我が神よ」


 リオウ・ラクシャラス、先日私との死闘を繰り広げた男。

 三千年近く昔の時代から今の世へ蘇り、革命を起こし世界の変革を目指した転生者。


 なぜ今このような状況になっているのか、話は数日前のあの戦いの直後に遡る……。






-----






 それは数日前、革命騒動におけるリオウ達との戦闘を終えてからの話。


「兄さん!」


 戦いを終えた後、動けなくなったリオウを担いで通路を戻るとシリカが目に涙を浮かべながら走ってくる。

 レオンもエリーゼもいつも通り、どうやらこちらも一件落着したようだな。


「大丈夫ですか兄さん! 怪我はありませんか!」


「はは、大丈夫だよシリカ。怪我はしたけれど治してもらったから心配しないでくれ」


「喋る元気が戻ったなら自分で歩けいごらぁ」


 こっちだって全開集束魔術を二連発で使ったせいで体ガッタガタなんだぞ。さらに二人分の傷を治すために無理して回復魔術を使ったために私だって今すぐ倒れたいほどヘトヘトだってのに。


「おお、すみません神よ。この身をここまで運んでいただき誠に感謝致します」


「……神?」


「えっと……兄さん、神って……?」


「はいはい細かいことは気にしない。結果として戦争が起こることはなくなった、この戦いはこれでお終いだ」


 そう、戦争は始まることなく終わりを迎えた。

 首謀者であるリオウがこうして私に屈したことにより、先導する者がいない革命軍は集まること無く解散となり事なきを得た。


「じゃあ、もう戦争を起こす気はない?」


 レオンの問いにリオウは深く頷く。


「ああ、神に諭され気づいたよ、俺がどれほど馬鹿なことをしようとしていたのかを」


「え~っと……さっきからリオウ君が言ってる神ってもしかして」


 あ、レオンやめろ馬鹿、こっち見るんじゃねぇ。気にするなって言ったのに。


「そう! この御方こそ俺に過ちを気づかせ心の腐食を取り払ってくれた現代に蘇りし神! 何から話そうか、まずは俺が彼を崇拝するその……」


「やめろアホォ! 話をややこしくするんじゃない!」


 頭をボカリと殴って暴走しかけるリオウを止める。まったく、勢い余って前世のことから話そうとしやがって。

 リオウのやつ、あの後私の話を聞いてから大人しくなったのはいいんだ……そのかわり私のことをこれでもかというぐらい崇拝し始めたのが問題なんだがな。

 まぁリオウにとって前世の私は自分の死後に大切な妹を救ってくれた恩人。それがお互いに転生しこうして出会った奇跡も相まって私の事を神と崇めるようになってしまった。


「そちらで何があったのかは知りませんが、これで任務完了ということですわね」


「そうだね、リオウ君もこうして改心してくれたしこれからは皆で手を取り合って生きていこう。もう二度と間違えないように」


 そうだな、今回の戦い……いや、私が来てから今までの出来事すべてがこいつら全員が進むべき道を見つけた。


「僕も決めたよ。僕は昔の僕のように落ち込んでいる人達を助けてあげたい。そして教えてあげたい、君にもきっとできることがある……って」


 僕もまだまだですけど、と笑いながら語るレオン。


「私も、レオンさんのお手伝いをしたいです」


 引っ込み思案だったシリカも想いを伝えたことでどこか吹っ切れたようだな。


「あら、その思想がわたくしの理想の少しでも助力になるのでしたら、お手伝いしてもよろしくてよ」


 エリーゼも根は変わってないが、誰かを信頼し、認めるようになった。それもエリーゼが求める一つの強さの形と言ったところかね。


「それはいいが、もし度が過ぎるようならまた容赦はしないぞエリーゼ。あ、勿論我が神のご意向なのであれば付き従いますよ」


 リオウもこれからは死に急ぐような無茶な行動は起こさないだろう、それがミレイユの願いでもあるしな。あと我が神っての言うのやめて。


「皆で変えていこう、少しづつでもこの世界を。皆と一緒ならきとできるよ! ……ってあれ、皆どうしたの?」


 レオンの希望に満ち溢れた言葉。だがここにいる全員がレオンのように明るい気分になっているわけではない。

 なぜなら……。


「リオウ様! シリカ様! 大変でございます!」


 微妙な空気に包まれていた広間に慌てて入って来たのは私達が下の階で出会ったリオウ達の執事だった。


「じぃやか。どうした、何があった」


「塔の入り口付近においてしびれを切らしたギルドマスターが自らと大量の上級魔導師による突入作戦を決行しようとしているのです」


 ついにマステリオン自身が動くのか。確かに指定されたタイムリミットまでの時間が迫ってきている今、この現状を知らない彼らが強行手段に出るのも無理は無い。


「そうか……ならもう行かないとな」


 痛みも気にせずスッと立ち上がり歩き始めるリオウ。その瞳にはどこか決意が感じられるようで……。


「待ってください兄さん! そんな体で一体どこへ……」


「……リオウ君! まさか!?」


 まったくこういう時だけは察しがいいなレオンのやつ。

 そうだ、私達の任務はまだ完了していない。今回の事件の首謀者であるリオウをギルドへ引き渡すことによってはじめて終了したと言える。


「そんな! でも兄さんがギルドに引き渡されたりなんかしたら……」


「未遂とはいえ仮にも中央大陸最大の都市に戦争を仕掛けようとした首謀者……良くて無期懲役、悪ければ極刑……かしらね」


 エリーゼの言葉にレオンとシリカの背筋が凍りつく。

 二人にとってはリオウとの未来は何もかもがこれからのはずだったからな……。


「そんな悲しい顔をしないでくれ、これは仕方のないことなんだ。俺は許されないことをした、それは償わなければならない」


「だったら私も一緒にいきます! 私だって兄さんの作戦に加担したんですから」


「それは駄目だ」


 同じ罪をかぶろうとするシリカをリオウは止める。


「どうして……兄さんは私をいつも助けてくれる。だから私も兄さんのために何かしてあげたい。そう思っているのに……」


「……シリカ、今まで俺はお前を後悔の念で見ることしかできなかった。いつかの偶像をお前に重ねてしまっていたんだ」


「兄さん?」


 そう、転生したリオウの前に現れた自分の妹という存在。彼は前世の妹であったミレイユを助けられなかった後悔からシリカにその姿を重ねていた。


「でも気づいたんだ、心が洗われた今でも変わらない。リオウ・ラクシャラスは妹であるシリカ・ラクシャラスを大切に思っていると。だから俺はお前の幸せを願う、それが今の俺の望みだ」


 そう言うリオウの顔は晴れ晴れとしたものだった。リオウの言葉にシリカは何も言えずに泣きだしてしまう。

 今回の事件はすべてリオウが表立ちシリカやじぃやさんの存在を知る者は私達だけ。つまり私達が黙っていれば彼女達は罪に問われることはない。


「じぃや、俺が正面からギルドの者を引き付けている内にシリカを隠してあった裏口まで連れて行って脱出してくれ。オルトロスもその大きさなら大丈夫だろう」


「ガウー」


 シリカの横で魔力を使い果たしたオルトロスが吠えるがとてもあの怪物と同じには見えない。大きさも犬よりちょっとでかいくらいだしな。


「承知いたしました」


 泣き崩れるシリカを連れてじぃやさんが塔の別ルートへ歩き出す。

 さて、そろそろ私達も行かなければ。形式上は私達がリオウを捕らえたことにしなければならないからな。


「リオウ君、君は本当にそれでいいの。全部……全部これからなのに」


「レオン君、キミが……キミ達が共に変えていく未来に俺も加わりたかった。でも俺は行くことはできない、過ちを認めてしまったから」


「そんな……」


 落ち込むレオン、だがリオウは屈託のない笑みをレオンに返すと。


「でも……もしも俺の罪が許されもう一度表舞台に立つことができたら、誘ってくれるかい」


「勿論だよ、絶対に……今度こそ一緒に戦おう!」


 新たに交わされる約束、その約束は果たされないかもしれない。だが未来は誰にもわからない。

 いつかそんな未来を夢見て、私達はリオウを連れ塔を出る。




「では、リオウ・ラクシャラスの身柄は我々魔導師ギルドが預かる」


 塔を出ると、突撃の準備が完了していたマステリオンと丁度鉢合わせることとなり、事件はすでに解決したことを伝えるとすぐに護送班の用意と任務完了の伝令が行き届く。


「ギルドマスター! 彼は……リオウ君はこれからどうなるんですか!」


 先程のリオウの覚悟を聞いたとしてもレオンにとってはかけがえのない友人。心配するのは当然か。


「どうなるかは私にもまだわからない……だが、無期限の収監は免れない。シントの要請次第では極刑もあるかもしれない……」


「そんな……」


 シント王国か……奴らにとってはリオウなんて邪魔者にしか過ぎないからな。奴らの意向次第ではすぐに死刑執行なんてことも起こりうるだろう。


「兄さん!」


「ッ! シリカ、どうしてこっちに!?」


 裏口から脱出し、事が終わるまで隠れているよう言われたシリカだが、大切な兄と会えなくなるかもしれないことを恐れて出てきたようだ。


「お願いします、兄さんを……兄さんを殺さないでください!」


「僕からもお願いします、どうかリオウが極刑にならないようマスターからも進言を!」


 必死に訴える二人。だがマステリオンをまだ顔をしかめている。


「私も極力彼が極刑にならないよう努力はするつもりだ。だがいちギルドマスターだけの進言ではシントの政界には……」


「なら、わたくしの家からも各所に声をかけますわ」


「リーゼ!」


 今まで口を閉ざしていたエリーゼだったが、ここに来て一発大きな手助けをしてくれたか。


「確かにキミの家の声があれば各国の政界に強く出ることができる。だがいいのか? 彼を擁護すればシントからのキミの家の信頼はガタ落ちだ」


「ふん、その程度の問題を乗り越えられずに世界を変えることなどできませんわ。でしょう、レオン」


 それならばとマステリオンはいい顔でギルドの者達に手配を進めさせる。

 これならリオウが死ぬ心配は無くなったようだな。


「……エリーゼさん、兄を助けていただきありがとうございます!」


 シリカがエリーゼに深々と頭を下げる。だがエリーゼは顔をしかめて。


「やめてくださらない? わたくしはリオウが亡くなってしまえばあなたがどうなるかわかったものではないから協力しただけ。これからのライバルに頭など下げてほしくありませんわ」


 はいはいツンデレツンデレ。だけどライバルねぇ……こりゃレオンも忙しそうだ、爆発しろよ。


「では……これよりリオウの身柄を連行する」


「兄さん!」


 リオウがギルド員に連れて行かれそうになり、シリカがリオウに抱きつく。極刑は免れた、だがやはり割り切れないものはある。


「シリカ、俺は大丈夫だ。彼らと一緒に待っていてくれ。それと、これからは自分の好きなように生きるんだ。なに、彼らと一緒なら、きっと大丈夫だから」


 我が神もおられるしね……ってやめい。私は日本に帰るために忙しいんだからそっちにかまってやれないっつーの。


「リオウ君、僕は待ってるよ。今度こそ……」


「ああ、それまでシリカを頼むよ」


 ここが彼らの一つの分岐点、未来へ進むための約束。

 私は思わずスマホのカメラでその光景を写真に収めていた。バックにはリオウが作り上げた塔……一つの約束が果たされ、新たな約束が生まれた場所。






-----






 そんなこんなでリオウは投獄、私は捕らえた者として特別に面会の許可をもらいこうして話をしにきたわけだ。


「てな感じでシリカはレオン達と元気にやってるよ」


 あの事件以来ラクシャラス家は没落。行き場のなくなりかけていたシリカをエリーゼが改築した私達の寮へ住まわせるようになった。

 ついでにじぃやさんも寮の執事としてフィオさんと共に働いていくれている。


「それはよかった、シリカはレオン君のことが好きなのは以前から知っていたしね。彼ならシリカを任せてもいいと思っているから」


 まぁそれはいいんだが……。シリカの部屋はこれまた狙いすましたかのようにレオンの隣だ。

 だが忘れてはいけない、レオンの貞操を狙っているのは一人だけじゃないことを。


「ぜひともエリーゼには負けてもらいたくないね」


 そう、あの二人たまに……というかよくレオンの部屋で鉢合わせになって揉め出すから上にいる私の方まで声が響いてくるんだよ。


「まぁ予想してなかったわけじゃないからな。さて、他に聞きたいことはあるか」


「そうですね。やはり……ミレイユのことが知りたいです」


 そうだろうな、あの時二人共意気消沈ではロクに話せなかったからな。詳しいことは伝えていない、ミレイユがどのような生き様だったかを。


「いやぁ、ミレイユはしっかり者で器量もよくて可憐でおしとやかで虫も殺せないような自慢の妹でしたからね、きっと人気者になっていたでしょう」


 ……いや、いいんだ。そりゃ大切な元妹だ、家族補正で少々……多少美化されていても何も問題はない。

 だが私のよく知るミレイユは……。



 狩りの時も……。

『ちょっとガロウズ! またあたしの得物横取りしたでしょ! 今度という今度は許さないわよ!』


 戦闘の時も……。

『死になさいこの人間のクズ!』

コキャ!(←首の骨が折れる音)


 料理の時も……。

『あ、魔法神さま、ガロウズ、ちょっと待ってて。今からこれを美味しく仕上げますから』

ドスッ! ブシュー……(←生きてるウサギの腹にナイフを突き立てて血抜きをする音)



 可憐だとかおしとやかだとか私の記憶からは微塵も感じられないんだが!?


「いや、でもまぁ結婚してからは少しはおしとやかにはなってたかな……」


 それでも料理の時の豪快さなどは変わらなかったけど。

 と、考えこんでると私のボヤキを聞いていたリオウがなんだかワナワナとしていた。


「か、神よ……今なんと。ミレイユが……結婚!?」


 あー、そうなるか。そういやこいつ重度のシスコンだからな、前世でも今世でも。


「い、いや、ミレイユだって生きていれば大人になる、結婚するのも不思議な話じゃない……だが、だが! くっ、俺がその時代にいればそんな奴はとっちめたのに……!」


「一人で盛り上がってるとこ悪いが……もしお前がその時代にいてミレイユの結婚相手をとっちめようとしても返り討ちに合うだけだぞ」


「え、それはどういう……」


 以前も話したと思うが、ミレイユと添い遂げた相手は前世の私を勝手にライバル認定していた獣人、ガロウズ。ただその実力は私の知る中でも五本の指に入る強者だ。

 ガロウズはその昔私が“獣深化”を知るキッカケとなった人物でもある。言わば獣深化の始祖のような存在だ。その実力はあのドラゴスでさえも五分五分の戦いを強いられる。

 故にリオウが戦ったところで一瞬でその勝負はつくだろう。


「む、むぅ……まぁいいでしょう。ミレイユが幸せだったのならそれで」


 それからいろんなことを話した。前世の世界ではあの後どんなことが起きたのか、それこそこの面会時間では語り合えないほどに。

 そして、あと少しで面会の時間が終わるところまできて。


「なぁリオウ、私からも一つ質問していいか」


「俺に拒む理由はありませんよ、我が神よ」


 だから今の私には結構恥ずかしいんだよそれ。今は他に聞いてる奴をいないからいいけどさ。


「転生した時のことを覚えているか」


 私にとっても重要な質問。生まれた世界の違いはあれど、私にしろリオウにしろ元々はこの世界の住人だった。今更どうして転生したのかなど深く追求するつもりはなかったが、貴重な体験者がいるのだから聞かないわけにはいかないだろう。


「そう、ですね。完全に死んだ……と思い意識が暗くなった次の瞬間、白い暖かな光に包まれ、気が付くとこの世に生を受けていました」


 なるほど、私と同じだな。しかしそれ以外は流石にリオウもわからないらしい。


「すみません神よ」


「いや、いいさ。元々期待はしてなかったし、今更こんなこと考えてても何も変わらないさ」


 さて、流石に面会時間ギリギリだ。今日のところはここまでにしておこう。


「神よ、本日は貴重なお話をありがとうございました」


「おう、また機会があれば会いに来るよ。いつか出られるといいな」


 あと神神って連呼すんのやめてくれよ、私は名前を書いたら人が死ぬノートで新世界作る人じゃないんだからさ。


「はい、俺も神が元の世界へ帰ることができるよう祈っております。それと……」


 ん、まだなにかあるのか?


「シント王国に存在するという“女神”にお気をつけください。俺はその存在こそがこの世界に悪影響を与えている存在だと考えています」


 “女神”か……七神王の一角であり歴史の起源とも言われる存在。私に関わりがあるかどうかはわからないが、心にはとめておくか。


「……サンキュ。んじゃな」


 看守に挨拶をした後、あいつらが待ついつもの場所へ帰る。


 




 寮へ戻ると奥からレオン達がやって来る。どうやら一仕事終えたあとのようだな。

 最近はあの三人で近辺の依頼を受けているようだ、まだチームワークはバラバラっぽいけど。


「あ、ムゲンさんお帰りなさい。あの、兄さんの様子はいかがでしたか?」


「ああ、元気だったよ。今度はシリカも面会に行けるようギルドマスターに言っておく」


「ありがとうございます、何からなにまで」


 別に私が全部どうこうしたわけじゃないからそんなに深々とお礼されてもな。


「師匠、そういえばマレルさんからこんなものを預かってますよ」


 そう言って渡されたのは一枚の封書。マレルから私に?


「なんだ、ついに私に告白するためにラブレターでも送ってきてくれたか? 一直線に見えて意外と奥手な……」


「そんなわけないでしょう。後ろにキチンとギルドよりと書いてありますし」


 くっ、エリーゼめ、少しは夢見たっていいじゃんかよぅ。

 しかしギルドからの手紙とは一体……。


「どれどれ内容は……おお!」


 その内容を見た私はいてもたってもいられずに寮を飛び出した。


「え、ちょっと! 師匠、どこ行くんですか!?」


「心配するな、晩飯には帰る!」




 寮を飛び出した私はまっすぐにギルドの中心にある施設へ向かっていく。


「ワウワウ?(急にどうしたんすか? あの手紙には何が書いてあったんすか?)」


「それはな、これだよ」


 犬に手紙の内容を見せる。



ムゲン殿へ


 この度の騒動の事件解決に尽力していただきギルド各員からお礼を申し上げる。

 つきまして星の授与ともう一つ、以前から保留となっていたゴールドランク魔導師に与えられる研究室の目処が立ちましたことをお伝えします。

 通常の研究室はすべて埋まっていたため、特別に以下の場所を研究室としてお使いください。



「それが……ここだ!」


ガラッ!


「ワウ……(なるほど、どうして意気揚々とこっちに向かってると思ったら……)」


 私達がいるのは以前少しだけ訪れた場所。レオンとはじめて出会ったあの学舎……の中の使われていない一室だ。


「今日からここが私の研究室となる!」


 ここからだ。この場所を拠点とし、魔術の……そして特異点の研究を進めていく。

 私がもとの世界へ帰るための足がかりがここから始まるんだ。


「ワゥ~ン(思えば長かったっすねぇ)」


 アステリムに戻ってきて、第三大陸で大騒動。

 第二大陸では旅をしてたら盗賊になって。

 中央大陸でやっと研究できると思ったら革命騒動だからな。


「そうだな確かにいろいろあった。だが私の研究はこれからだ! 必ず日本へ帰る方法を見つけ出してみせる!」


 打ち切り漫画のような締め方だがまだまだ終わらないからな! さぁ、お楽しみはこれからだ!





第3章 魔導師ギルド 編   -完-





これにて第3章終了です!

ここまで読んでくださった方ありがとうございます!


4章前に恒例の3章の人物紹介や閑話をちょこっとはさみます。


誤字脱字、質問や感想などはお気軽にどうぞ!


修正しました(10章時点)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ