81話 想いを伝えるために 前編(VSシリカ)
「この先に……二人が」
「最上階には居住スペースと塔の操作室しかないらしいからな。実質ここが最奥部ってとこだ」
執事と話を終えた私はレオン達と合流し、塔を駆け抜けていく。
この先にあるのは大きな部屋が二つと最上階へ続く階段のみ。そこで奴らは待っているだろう……。
「部屋が見えましたわ!」
「よっしゃ、突撃だ!」
今回はコソコソ隠れる必要なんてない。あちらも私達がここまできていることはわかっているはずだ。
罠の反応もない……いつでもどうぞってことだろう。余裕かましやがって。
そして通路を抜けると、そこには私の迷宮と同じような巨大なモンスターと戦うために用意されたであろう開けた部屋へと辿り着く。
「そこで止まってください!」
部屋に入るといきなり声をかけられ私達は動きを静止すると、そこにいたのは……。
「この声は……」
「こんにちわ、レオンさん」
シリカ・ラクシャラス……オルトロスの上に乗りながらこちらを見下ろしてくる。ホームグラウンドだからか、いつもオドオドしてる彼女でも結構声が出てる。だが妙だな……。
「あら、あなた一人だけですの? お兄さんはどうしたのかしら」
そう、シリカの兄……この事件の首謀者でもあるリオウの姿が見えない。
キレ者の奴のことだから、シリカとオルトロスだけでは私達三人を相手にさせるのは無謀だとわかっているとは思うが。
「兄さんは奥の部屋で待っています」
奥……この階層にあるもう一つの部屋か。しかし待っているとはどういうことだ?
「レオンさん……兄さんは今一度あなたと話す機会が欲しいと考えています。勿論……一対一で」
「リオウ君が……僕と……」
まぁ予想はしていた。敵対したとはいえやはり向こうもレオンとは争いたくないんだろう。だが……。
「それは駄目だな。今レオンを一人でリオウに合わせるなんてことはできない。リオウとは私が話を付けに行く」
レオンを信じてない訳ではないが、奴の話術に動揺してしまう可能性は極めて高い。もしかしたら、もっと別の切り口で攻めてくる可能性だって考えられる。
いずれにしてもレオンとリオウを二人きりにさせるわけにはいかない。
「てな訳で通らせてもらうぞ」
「駄目です、兄さんからはレオンさん以外通さないよう言われてます。だから……」
シリカが臨戦態勢に入るとそれに呼応するかのようにオルトロスが低い唸り声を立てる。
やはりはいそうですかと通らせてくれはしないか。
「レオン、エリーゼ……任せてもいいか」
「はい、師匠。リオウ君のこと……頼みます。シリカちゃんは僕達が必ず止めてみせますから」
「ふん、こちらもすぐにかたをつけてそちらへ向かって差し上げますわ」
「ワウ(二人共頼もしいっすね)」
そうだな、レオンなんて最初会った時とは比べものにならないほどだ。
二人を信頼し、私と犬はそのまま走りだしリオウのいる最奥の部屋へと向かう。……だがまぁ、あちらもすんなり通してくれはしないよな。
「行かせません! オルちゃん!」
「ガァ!」
シリカの命令でオルトロスの爪が私を狙い爪を立てる。魔術を使って迎撃することはできなくもないが、ここはあえて何もせずそのまま走り抜ける。
信頼をしているからな!
「やらせないよ! 『引き寄せる重力』!」
「グルァ!?」
レオンの重力魔術でオルトロスの動きが鈍る。私を巻き込まず範囲を絞った精密的な動き……黒棒を制御しながらの特訓でその部分も十分鍛えられたようだな。
「くっ、レオンさん……。だったら、私が……『光の鎖』!」
今度はシリカが放つ光属性の鎖が四方八方から襲いかかる。だが、そんなことで私が歩みを止めることはない。
「あら、わたくしを無視するなんていい度胸ね……『対魔力衝撃』!」
「……!? そんな、これはオルちゃんの……」
放たれる魔力に光の鎖はその形を留めることができず崩れ去っていく。その類まれなる才能と特訓により、エリーゼは相手の魔力に対応する力を開花していた。
リオウ達に……なにより今隣に立っているレオンに追いぬかれたくない。そんな気持ちが彼女の心を突き動かした結果だ。
これが今の二人。あいつらはもう自信を持って世に送り出せるこの時代の私の弟子達だ。
「だから私は安心して前へ進める……さぁ、ノンストップで行くぞ犬!」
「ワウン!(ラジャーっす!)」
シリカとオルトロスの猛攻をくぐり抜け通路へと抜ける。シリカ・ラクシャラス……あの子のことはきっと二人がなんとかしてくれるだろう。
なに、この私が指導したんだ、負けるなんて微塵も思っちゃいないけどな!
「くっ! 抜けられるなんて、早く追わないと……」
「それはさせないよ、シリカちゃん!」
オルトロスが通路へ抜けていった師匠を追おうと向き直るが、僕はその前に立ちはだかる。
彼女を止めるのは、僕の役目だから。
「シリカちゃん、君は優しい子だ。そんな君が戦争なんてもの……本当は望んでいないんじゃないのか!」
「確かに……戦争なんて、恐ろしいことだと想います。でも、兄さんがそれを望むなら……私はそれを支えてあげたい」
「どうしてそこまでリオウ君のために……」
彼女が何故ここまでリオウ君に心酔しているのか、僕達にはそれがわからない。だけど、それこそがシリカちゃんの心に触れるための入り口なのかもしれない。
「私はラクシャラス家で忌み嫌われる存在でした……妾の子で、何をやっても失敗して何度も何度も叩かれて……」
淡々と自らの過去を語りだすシリカちゃん。彼女の口から聞かされたのは、他にも彼女が体験した辛辣なイジメの数々……。
「そんな……」
「ある日、私はまた失敗して叩かれそうになりました。でもそんな時、兄さんが助けてくれたんです」
なんと、リオウ君とシリカちゃんが出会ったのはその時が初めてだったという。
二人の親は、二人を会わせれば優秀な兄に悪い影響を与えると考えていたのだ。リオウ君はそのことにも過剰に怒りを震わせ、そこから物凄いスピードでラクシャラス家を自分のものへと掌握していったらしい。
「それから兄さんは私のためにその身を削ってまで尽くしてくれました」
シリカちゃんの話では、自分が望むもの以上にものを与えてくれたり、少しでも体調が悪くなったと思ったらすべての用事を投げ出してつきっきりで看病してくれた。
「その時の兄さんは何かに怯えるように必死で……私が無事だってわかると凄く安心したような……でも少し悲しそうな顔をするんです。……その時に思ったんです、私も兄さんのために何かできることをしてあげたいって」
「それが……君の戦う理由」
そうか、やっとわかった。シリカちゃんも……僕と一緒だったんだ。
誰にも認められず居場所もない、そんな時に現れたリオウ君に助けられた。
「兄さんに助けられたレオンさんを見た時、まるで昔の自分を見ているようでした。でも、それは違った……あなたはどんな状況でも諦めることはしなかった。そんなあなたに、私は段々惹かれて……好きになっていったんです!」
「え、ええ!?」
そ、それってどういう。そういえば師匠にも色々言われたことはあるけど、まさか本当に?
動揺が隠せない。いや、こんな状況で告白されたからってこともあるけど……僕にとって初めての告白だし。
「だから……どいてくださいレオンさん。私はあなたとは戦いたくありません」
「だったら、わたくしがあなたの相手をしてあげますわ」
「エリーゼ・ライズ……ティレイル……!」
さっきまで暗い雰囲気で話していたシリカちゃんがなんか怒ってる?
リオウ君は自分の理想に邪魔な存在として見ていた。けど、シリカちゃんはもっとこう……個人的な敵対心をリーゼに向けているような……。
「私はあなたが嫌いです。いつも弱者を見下して、レオンさんだってそのことでどれだけ苦しんだか……」
「あ、いや、そのことはもう僕は……」
「確かにあなたにそう思われるのも当然ですわね。あの頃はその力を開花できないのなら早急に立ち去るべきだと考えてましたから」
僕の入り込む隙がない。というかリーゼは今もそこまで考え方は変わってないと思うけどね。
「今ではレオンもその力を開花させてくれる人に出会い、一人の魔導師としてわたくしも少しは認めるほどになりまわしたわ。だからこうして一緒に戦っているの」
「なんですかその手のひら返しは! なにより、そんなあなたがレオンさんの力を利用するために隣にいることが許せません!」
その後に「本当は私がその場所にいたいのに……」と、ぼそっという声が聞こえた。そ、そこまで思ってくれるのは嬉しいけど凄く恥ずかしいな。
というかシリカちゃんってこんなに激しく喋る子だったっけ……リーゼに対しては凄く感情的だな。でも、それは僕も変わらないか。
「レオンさん! この女はいつかあなたのことなんて見限って他の男の下へ行きますよ! ボロ雑巾のように捨てられるに決まってます!」
いや、捨てられるって……僕は別にリーゼと付き合ってるわけでもないし。というか……。
「いやいやシリカちゃん。僕達はあくまで仲間であって別にそういった感情は……」
「あら、わたくしはレオンのこと好きですわよ」
「へ?」
え? 今なんて言った? リーゼが僕のことを……。
「言っておきますが冗談じゃありませんわよ。普段は頼りないくせに、ここぞという時は自分を顧みずに戦う姿に惹かれましたの。だからレオン、わたくしと付き合いなさい」
「やっぱりそうでしたか……。この女狐! あなたみたいな傲慢な人間とレオンさんでは絶対に上手くいきません!」
「あなたのようにいつもオドオドして誰かに頼っている人こそふさわしくないわ。それこそレオンの成長を止めてしまうでしょうから」
二人の口論は次第にヒートアップしていく。
あ、あれー……僕達は戦争を止めさせるために話し合ってたはずなのに、どうしてこんな話になっちゃったんだろう。
というより、もしかしてリーゼがシリカちゃんに話したかったことってこれ?
「グゥ~ン……」
なんだかオルトロスも困った顔をしてるように見える。
「それで!」
「レオンさんはどっちを選ぶんですか!」
「え、ちょ……!?」
そこで僕に来るの!? そんなこと言われても、恋愛なんてしたことない僕にはどっちかなんて選べないよ。僕にとっては二人共大切な存在だし……。
なんだろう……師匠が通って行った通路の奥から凄い悪寒が感じられる。
「まぁレオンですから決められないでしょうね」
「ええ、レオンさんは優しいですから」
なんでそこは意見が合うの!?
「やはりここは魔術戦で決着をつけるしかないようですわね」
「そうですね、でもオルちゃんがいるこちらの方が有利だと思いますけど」
「あら、こちらにはレオンがいますわよ」
「レオンさんはやっぱりエリーゼさんの味方なんですか……」
「ま、まぁ君がまだリオウ君の戦争に賛成するならね」
もし戦争なんて関係なくて、二人が普通に喧嘩してても止めるだろうけど……その場合はリーゼも一緒にね。
「では、そのデカブツに動かれる前にこちらからいかせてもらいますわ! 『凍りつく大地』!」
先制速攻、戦いが始まった瞬間にリーゼはオルトロスの足元目掛けて魔術を展開する。それにより、まるで世界が凍りつくように部屋全体が凍りついていく。
「くうっ! オルちゃん、お願い!」
「ガウ、『ガァ!』」
オルトロスの咆哮……魔力に直接ダメージを与えるあの力によって部屋の氷がすべて砕け散りキラキラと舞い散る。
だがこれで、自然属性を打ち消す咆哮はしばらく使えない。
「畳み掛けますわよレオン!」
「うん、ごめんねシリカちゃん。いくよ、『炎の矢』!」
オルトロスへ向かって放つ小さな矢、この矢は僕の意思で動かせる。
ここからが僕の本領発揮だ!
「第二術式展開! 『炎の竜巻』!」
術式の追加によって、炎は渦を巻きながら大きくなっていく。
僕だってあの頃のままじゃないんだ! 特訓のお陰でオルトロスの動きも目で追えるようになった。
「やりますねレオンさん。でも、こっちも以前とは違いますよ、オルちゃん」
そう言うと、オルトロスの体がどんどん小さくなっていく。
そうだ、前回と違って今回はシリカちゃんがキチンと命令できるし、魔術で対抗できるだろう。
「私もいかせてもらいます! 『反射分身』!」
「なっ! オルトロスの姿が沢山に!?」
「うろたえないでレオン。これはただの幻よ」
そうか、さっき砕かれた氷の破片。あれを利用した光属性の魔術でこれだけの幻を。
そういえばシリカちゃんは付与……いや、特殊属性の魔術が得意だった。
「小さくなったのもなるべく数を増やすためですわね。だったらこれでどう? 『炸裂突風』!」
「この風は……きゃ!」
リーゼが放つ突風によって幻を映し出していた氷を吹き飛ばす。
それと同時にオルトロスをも吹き飛ばされそうになる。体を小さくしたことが仇となったみたいだね。
「まだです! オルちゃん、大きくなって! それともう一つ、『光の鎖』!」
オルトロスが風の影響をものともしないほどに大きくなり、その上でシリカちゃんが無数の光の鎖をばらまく。
「この鎖……追ってくる!?」
「ちょっと! どうしてこちらの方がこんなに多いんですの!」
鎖は僕の方に三本、リーゼの方に……七本!? 明らかに目の敵にしてるなぁ……。
「まだまだ、オルちゃんの攻撃もありますよ!」
間髪を入れずにオルトロスが爪と牙を立てて飛びかかってくる。
同時に襲いかかる攻撃に僕らは戸惑う。だけど……!
(鎖の軌道を読んで隙間を抜け……次はオルトロスの爪を!)
戦いの中、師匠が与えてくれた特訓を思い出す。動きながら何度も岩を投げてくるゴーレム、その避けている隙を狙った一撃を受け流す方法を!
「ここだ!」
爪を黒棒で受け止めた瞬間、重力魔術を展開!黒棒を中心に相手の攻撃を逸らすよう重力を膜を作れ!
「『流れる重力道』!」
「グルァ!?」
オルトロスの攻撃はその腕ごと受け流され体制を崩される。
僕の方はこれで大丈夫……リーゼは。
「ふっ、はっ!」
鎖をステップで華麗に避けつつも向かってくるオルトロスの攻撃からは目を離さない。凄い、魔力の流れを完璧に感じ取っている。
「さて、ここで十分かしらね……『対魔力衝撃』!」
そしてオルトロスを十分に引きつけたところで避けきれない鎖を『対魔力衝撃』で打ち消した。
これはキマる……リーゼの技が!
「以前はその大口に敗れてしまいましたが……今度はそうはいきませんわよ! 魔術式1、2、再展開……そして合成ですわ! 受けなさい、『氷結烈風』!」
「これ……は! 先程までの魔力をもう一度使った!? それに一つになって威力も……駄目っ! オルちゃん!」
オルトロスは必死に咆哮を放つ体制に入ろうとするが、僕が体制を崩したため遅れが生じてるようだ。
「遅いですわ! 第三魔術『風翔乱撃』!」
「『ガァ!』」
よし、リーゼの方が早い! 咆哮の影響はあったみたいだけれど、新しい術式を組み込んだ魔術の勢いは衰えずオルトロスに畳み掛けていく。
「グ……グウウ……」
「大丈夫オルちゃん! 再生のために私の魔力を沢山使って構わないからね」
だが、まだだ。このままダメージを与えてもシリカちゃんがいる限りそれは回復されてしまう。
決定的な一撃を与えなくては。
「……まさか、ここまで凄いとは思いませんでした。こうなったらこっちも……一気にキメさせてもらいます!」
「レオン、きますわよ」
「うん、わかってる」
どうやらシリカちゃんも次で勝負をキメるつもりのようだ。だとしたら……お互い最高の攻撃をぶつけあうことになるだろう。
「まだ、これは未完成で兄さんにも止められてるけど……お二人に勝つにはこれしかありません」
「ガルル」「グアア」
二つの首が揃いこちらへ向き直る。そして……これは、シリカちゃんからオルトロスへ力が伝わっている。
凄いのが来る……この距離でもハッキリわかる。
「あら、怖気づきましたの?」
「ちょっとね……でももう大丈夫。必ず打ち破ってシリカちゃんを止めてみせる!」
「あと、戦いの決着がついたらちゃんとどちらの方が好きか決めてもらいますわよ」
「ええっ!?」
いやいや、そんなこと言われても僕にもいろいろと悩む時間が必要というか……。
「……冗談ですわよ。でも、いつかキチンと答えを出しなさい、あの子もそうしてほしいと思っているでしょうし」
勝つのはわたくしだけれど……と最後に付け加えてリーゼもシリカちゃんの方へ向き直る。
答え……か。正直今の僕には先のことなんてわからない。リオウ君やリーゼのようにしっかりとした未来のビジョンがあるわけでもない。
「でも……これからの僕なら見つけられるかもしれない。師匠と、リーゼと……シリカちゃんとリオウ君も一緒に!」
皆で笑いあえる未来があるなら……僕はそれを目指したい。
「これで、最後です! 超魔術、『螺旋の炎撃』!」
「『ガァ!』」「『グオォ!』」
オルトロスの両の口から発射される炎は渦を巻き、より強力に力を増しながら襲い掛かる。
(うっ……やっぱり、制御が難しい! 兄さんはさらに強力な力になる可能性を秘めた技って言ってたけど)
シリカちゃん……辛そうだ。それだけ本気なんだろう……だったら僕達もそれに答えてあげなくちゃならないよね!
「いきますわよ! 第四魔術式、追加 《雷》、『翔ける雷嵐』!」
先ほど発動されていた風と氷の魔術に雷の力を加えることにより、リーゼの魔術はすべてを飲み込む嵐を生み出した。
「凄いですね……でも無駄ですよ! この魔術には先端にオルちゃんの咆哮の力を纏わせています!」
オルトロスの咆哮……力の力だ。でもその可能性も考えていた、オルトロスの力を最大限に活かしてくるだろうと。
だからこそ、僕の力が必要なんだ!
「術式展開、リーゼの魔術を守れ! 『三重の重力壁』!」
「……これは!?」
重力の壁は咆哮の影響を受けない。つまり、この魔術のぶつかり合いは純粋な力比べになる!
「く……うう」
「ガ……ガルゥ……」
パリン……! パリン……!
重力の壁が二つ割れる。だけど、未完成の魔術を無理に使っているせいか、向こうには限界が来ていた。
「シリカちゃん、僕達の……勝ちだ!」
パァン!
最後の重力壁が割れると同時にあちらの炎も消え去る。
そして……決着だ。
(兄さん、ごめんなさい。私はあなたに……何もしてあげられなかった)
「……ここは?」
「あ、大丈夫シリカちゃん? 気分はどう」
「レオンさん……どうして」
戦いが終わり、僕は気を失ったシリカちゃんを介抱していた。魔術が直撃する時、リーゼが大きなダメージにならないよう威力を抑えてくれたため外傷も殆ど無い。
「この勝負はわたくし達の勝ちですわ。だからあなたは大人しくそこで寝ていなさい」
「あなたまで……」
僕達の戦いは終わったんだ、これ以上はもう必要ない。
オルトロスもその力を使い果たしたのか、僕達と同じぐらいの大きさにまで縮んでしまっているし。
「だからもう僕達は待つことしかできないんだ」
「そう……ですね。兄さん……」
奥の部屋からはこちらとは比べ物にならない戦いの振動が伝わってくる。
師匠、後はお願いします、必ずリオウ君を止めてください。僕は……信じてますから。
修正しました(10章時点)




