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52話 今後の方針


「サティ! レイ! ムゲン君! よかった、皆無事だったのね……」


 帰宅早々三人共リアに抱きしめられる。その瞳には若干涙が溜まっていた。


 激動の日々から三日、私達はやっとのことでアジトに帰還することができた。

 この前はホリィさんの家で一夜を過ごさせてもらい、疲れきった体の英気を養わせてもらった。その次の日の朝イチに私達はアジトへ出発した、若干の食料ももらって。家が少し遠くにあると話したら快く食料までくれて本当に助かった。

 「本当にいいのか?」と聞いた所、「どうせガッちゃんの分だから気にしないでください」と言われたありがたく頂いておいたぞ。本当に感謝してもしきれないな……え、ガレイ? 知らんがな。あの野郎、童貞なかまだと思っていたのにあの様子じゃあ結構しっぽりやってんだろ絶対……もしくはこれからだな。


 とにかく、今はそんなことは置いておいて。


「ただいまリア。どうしたんだいそんなに泣いて、アタシ達がいない間に何かあったのか?」


「馬鹿! 何かあったのはそっちの方でしょう! 昨日先に帰ってきた偵察隊の皆から、三人が厄介な事態に巻き込まれたかもしれないって聞いて……」


 なるほど、そういえばサティがレディスの街で偵察させていた奴らを先に帰らせたって言ってたな。

 そうか、私達の危機を知らせに早足で帰って来てくれていたのか。


「皆が明日までに帰ってこなかったら救援隊を編成して飛び出してる所だったわよ」


「そうだったのか、行き違いにならなくてよかった」


「ええ、でも意外と早く帰ってきてから逆にびっくりしちゃった」


 それもそうだな、リアは知らないだろうが馬も使わずにこの期間で帰ってくるなんて普通は不可能に近いからな。


「姉さん……ごめんなさい、心配をかけさせて」


「本当よまったく。厄介なことに巻き込まれたかもしれないって聞いてたし……ミミちゃんも嫌な予感がするって言うからますます心配になって。でも、何もなかったみたいで安心した」


 ミミのいつもの予感か、今度ちゃんと魔力の制御をさせてみたほうがいいかもしれないな。

 今回の嫌な予感ってのもあながち間違ってないしな。


「あー……いやな、何もなかったって訳じゃないんだよなこれが」


「え、どういうこと?」


「待ったムゲン、この件は団の全員に話しておきたい。アタシ達“紅の盗賊団”の今後の方針にも関わることだからね……」






 ……さて、場所は変わって食堂。この洞穴のアジトの中でも団員全員が入れる場所だ。

 食事の時以外にも皆が集まる場所として使われる、現在も何人かはここに集まっているみたいだな。


「さて、サティが皆を集めている間に広間の皆にただいまの挨拶でも……ん?」


 奥の方から土埃を上げながら何か迫ってくる……あれは?


「うえ゛~ん! おにいぢゃぁ~~ん!」


「み、ミミ!? 一体どうし……ぐはぁっ!」


 私が喋り終える前に涙を流しながら猛スピードでタックルするミミに動揺し、止める間もなく私の腹へと吸い込まれていった。

 ぐおお……久しぶりだから油断していた。だが泣きながら私を求めてくるその愛らしい姿を避けることなど私にはできない!

 だから耐える! 耐えて笑顔をキープするんだ私……!


「ぐぐ……た、ただいまミミ! どうしたんだそんなに泣いて、怖い夢でも見たのか」


「ぐすっ……うん、すごく怖かった。お兄ちゃんがここからいなくなっちゃうの」


 私がいなくなる、一歩間違えれば本当にそうなっていたかもしれない。

 思い出されるのは『幻影の森』での出来事、メールの主と幻影神の助力がなければ私達は死んでいた。いや、もしかしたら死ぬよりももっと酷い目にあっていたかもしれない。


「大丈夫だミミ。私がミミに何も言わずにいなくなる訳ないだろう」


「本当?」


「ああ、だから安心しろ」


 その言葉を聞いて安心したのか、ミミは泣き止んでくれた。

 しかしちょっと意地悪な言い方をしてしまったな、『何も言わずにいなくならない』ということは『どこかへ行くために別れを告げるかもしれない』ということだから……。


「大丈夫ムゲン君?」


「ん? ああ、大丈夫だ問題ない」


 まだ少しうずくまっていた私を心配してリアが駆け寄ってきてくれた。


「ミミちゃん最近嫌な予感とか悪い夢をよく見るって言ってたからずっと不安になってて。そこに三人が危ないかもって知らせがきたものだから……」


 わんわん泣き出してしまったと。

 よく見るとミミの目元が赤くなっている。


「そうだったのか……ごめんな、不安にさせて。でもほら! 別にどこも怪我してないし、ちゃんと帰ってきたからな」


「うん、そうみたいだね」


 と、こうして私達が話してると周りがざわつき始めた。


「お、お頭達帰ってきたみてぇだな」

「あっちでムゲンの野郎がミミちゃんのこと泣かしてたぞ、ぶっ飛ばそう」


 泣かしてねぇよ! いやまてよ? ミミは私がいなくなることに対して泣いていたいたのだから、これは私が泣かしたということになるのか?

 と、考えてる内に団の野郎共に捕まった私とレイはあっという間にもみくちゃにされてしまった。


「ともかくよかったぜ、オメーらやお頭に何もなくてよぉ」

「偵察隊の奴らからヤバイかもしれないって聞いた時は焦ったぜ」

「ま、でもお頭やお前らには過ぎた心配だったようだな」


 頭をガシガシしたり、肩をどついてきたりと結構お構いなしだな。


「てかそろそろやめい! 何度も触らんでもこの通りピンピンしとるわ!」


 私が怒鳴り散らすと皆ハイハイと笑いながら元いた位置に戻っていく。


「まったく皆素直じゃないわね。皆サティ達の危険を聞いてすぐにでも飛び出しそうだったくせに」


 それをリアが止めててくれたのか、自分が一番飛び出したかっただろうに。

 てか皆ツンデレかよ……ったく、本当にこの盗賊団には良い奴ばかりだな。


「こっちは長旅で疲れてるってのに、少しはいたわれっての。なぁレイ」


「……」


「レイ……?」


 こいつ最近こういうこと多いよなぁ。

 ま、この数日に色々あったんだ、考えることも多いだろう。


「ん? ああ、すまんムゲン」


「で、今度はどうしたんだ? なんかちょっとニヤついてるけど、嬉しい事でもあったのか?」


 こいつのこんな顔は、実は最近良く見る。嬉しい時や相手を想う時レイはよく笑うようになった、この数日でなんとなくレイとの距離が近づいた気がする。

 ちなみにサティはこの変化に気づいてないと思う……。


「いや、こういうのも……意外に悪くないものだと思ってな」


 ああそうか、気づいたんだなお前も……この暖かさを。家族の温もりを感じれるようになったんだな。

 以前までのレイは自分だけの力ですべてをこなそうとしていた、誰からの恩恵も受けずに。それは、姉であるリアでも例外ではない。リアはレイにとって守るべき存在であり、その存在から助けを与えられることは無いと思っていた。


 でも……。


「集落では得られなかった温もり。フッ、ここが……俺の帰るべき場所なのかもな」


 レイも、歩き始めているんだ。


グイッ


「んおっ!?」


 突然マントを捕まれ引っ張られたと思うと、リアがちょいちょいと手招きをして耳をかせといったジェスチャーをしている。


「なんだリア。このマントは大事な物だからあまり引っ張らないでほしいんだが」


「あ、ごめん、でもビックリしたから。ね、ねぇムゲン君、レイどうしちゃったの? 途中で変なものでも食べた?」


 そうだよな、自分の弟が突然口にしないであろう発言をしたんだ。しかもついこの間までリア以外だれかれ構わず噛み付く野犬のような性格だった男がだ、そりゃ驚くのも無理は無い。


「なに、男子三日会わざれば刮目して見よという。あいつにも色々あったんだよ」


「いやいや、その色々って何!? なんであんなになってるの? 何がどうなってるの~!?」


 そこまでおかしいか、今のレイは。

 しかしアレを話していいものか……ま、いいだろ、姉なんだし。


「まぁそうだな、やはり一番決定的なのはあいつがサティにこ……」


「おいムゲン! お前ちょっと姉さんに近すぎじゃないか。もっと離れろ!」


 いいところでシスコンの割り込み。

 まったく変わったとは言ってもこういう所はそのまんまなんだからなぁ……。


「え、なに? なんなのムゲン君!? 一体どういうことなの~?」


「おいムゲン! お前なに姉さんを困らせてるんだ!」


 いや困らせてるのは実質お前だから。

 しかし事態の収拾がつかなくなってきた、どうしよう。


「おーい、皆揃ったからそろそろ始めるぞー」


 と、ここで救世主サティ登場! ナイスタイミング。


「ほら、二人共話が始まるから座って座って」


「う、うん……ムゲン君、後できっちり聞かせてもらうからね!」


「ムゲン、後で魔術戦だ。今日こそ叩きのめしてやるからな!」


 この姉弟は……。


「ムゲンー! お前もこっちきてくれー」


 おっと、お頭から呼び出しだ。確かに私でないと説明できない所もあるからな。


「わかった、すぐ行く」


 こうして紅の盗賊団全員に私達が見てきた惨状、そして今までに潰してきた違法奴隷商人の元締めのような存在がそこにいるのだという事実が語られた。






「……と、いう訳だ」


 サティの話が終わり皆ざわつき始める。


「アタシは奴らが許せない。だから今度、奴らの『エルフ族狩り』計画とやらが始まる前にかたをつけたい」


 皆の表情は困惑している。

 無理もない、実際この話はたかがイチ盗賊団が圧倒的戦力を持つ大領主に戦いを挑むということなのだ。

 今までとは何もかもが違う……。


「勿論強制はしない、でもアタシはやると決めた。元々この東領に入る道のりだって違法奴隷商人の元を叩くためだったんだ。命が惜しい奴はここで留守番してくれてていい」


 なるほど、つまりサティ達は元々あいつらを潰す予定ではあったんだな、その規模は予想以上だったが。

 さて、私やレイはついていくのは確定として……この話を聞いてついてきてくれる奴が果たして何人いるか。


「お、俺はついてくぜ! お頭には恩があるし、その領主も許せねぇ!」

「俺もだ、やってやるぜ!」


 サティに恩を感じる者、レイと同じように領主が許せない者は賛同してくれる。

 だが……。


「でも、相手との戦力差は歴然だよな……」

「そ、それに、噂の新魔族もいるって言うんだろ。勝ち目なんてないんじゃ」


 やはり、敵の力に絶望し逃げ腰になる者もいる。

 ただ意見の対立する者達がこうしていると……。


「なんだテメェ! お頭に助けられた恩を忘れて逃げんのか!」

「い、いやそういう訳じゃ……。ただ今のままじゃどうにかできるのかって話で」


 案の定喧嘩が始まってしまう。

 まぁこれも想定の範囲内、打ち合わせ通りサティに収めてもらおう。


「皆聞いてくれ! 今回の相手は本当に危険だ、死ぬ可能性だってある。ここにいる奴らは皆アタシが勝手に救った命だ。だけどその使い方まで強要する気はない。お前らの人生はお前らのもんだ、それを簡単にドブに捨てるような考えはやめてくれ。だから今この場でアタシについてこようとしてる奴もよく考えて決めてほしい。だが期限は二日後の日没までとする、以上!」


 辺りはしんと静まり返っていた。

 これだけ言えば皆もちゃんと考えてくれるだろう、私達は皆と闘いぬきたいのであって捨て駒にしたいわけじゃない。


 期限は二日、その時に集まったメンバーで作戦を立て次の日には出発といったところだろう。

 領主達も『準備は順調』と言っていた、迷っていられる時間は……そう長くない。


「ムゲン、さ、サティ……。ちょっといいか」


 解散後、レイが私達を呼んでいた。

 サティもってことは魔術戦を挑みにきたわけじゃないんだな、よかった。てかレイの奴、サティを呼ぶ時にいちいちどもるのはどうにかできんのか。


「どうしたレイ、リアも一緒か」


 レイもリアも先程より表情が険しい。

 リアは初めて聞いたから当然だ、だけどレイはどうしてだ? 思い出して怒りが再発でもしたか?


「二人共聞いて欲しいの。多分、領主達が『エルフ族狩り』の対象にしてるのは、私達……正確には襲われた後の転移した集落だと思うの」


 なんだって!


「おいおい、それは確かなのかいリア!?」


「ええ、おそらく。私の記憶では父の残してあった記録にこの『トルウェ』の存在する全ての集落が記されたものがあったの。その記録が今も変わらなければこの東領に存在する集落は一つしかない」


 それが、二人の故郷だということか。

 だから二人はこんな険しい顔をしているのか、辛いのによく我慢している。


「だから、俺は姉さんと共に一度集落に行き、この事態を伝えようと思う。勝手に抜けだした俺を快く入れてくれるとは思えないが……」


「大丈夫よ、お父様は頭は堅いけど話せばわかってくれる人だから」


 ちなみに私もついていく予定だ、二人からはオススメされなかったから勝手にな。


「でも大丈夫か? 帰ったらそのまま連れ戻される可能性もあるだろ。まぁお前らがそれでいいならアタシは文句はないけど」


 その言葉にリアはふふん、とした顔をした。

 リアならその心配はないと自信満々に宣言するんだろうな。


「サティ、私は……」


「そ、そんなことはない! 俺達はあっちに戻ったりはしない、必ずここに帰ってくる! なぁ姉さん!」


「え、あ? そ、そうよサティ、私達にとってはもうここが帰る家なんだから」


 弟にセリフを取られ一瞬ポカーンするリアだったが、なんとかいつもの調子で繋げることができたみたいだ。


「そっか……ありがとな、二人共」


 二人の言葉に満面の笑みを浮かべてお礼を返すサティ。そして顔を赤らめながら視線を逸らすレイ。


 その後、サティは団員に呼ばれて席を外した。私はリアに腕を引かれ絶賛問答中、まぁこうなることはわかりきってたけどな。


「で、あれはどういうことなの!?」


 あれとはレイのことだよなどう考えても。

 やれやれ……ま、説明するからにはリアにも手伝ってもらうとしようか、私の作戦をな。



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