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4話 状況確認 前編 話を聞こう


 いやね、まぁ所々似てるなー……とは思ってたけどな。

 しかし本当にここは私の知るアステリムなのか? 私の知るところでは『トリニ』という大陸の名前もアレス王国という名前も聞き覚えはない。

 まぁ、私が死んでからそれなりに時間が経ったと考えるのが妥当か。


「あのー、それで私はこれからどこに連れて行かれるのだろうか……?」


 現在私は数人の騎士達に囲まれながら村の中を連行中である。一体どこへ連れて行かれるのやら……。


 それと、歩きながら魔力回路の調整を行ってみたが、これは一朝一夕でどうにかなるようなもんじゃないな。

 ま、なにも昔のようにすべて手探りで回路を調整するわけじゃないからそこまで難しい話じゃないんだが……。


(せめて補助器具でもあればいいんだがな)


 しかし今は魔力の制御より日本へ帰る方法を知りたい。

 でもこういった異世界召喚モノのセオリーではすぐに帰れないものが多いんだよな……ま、ネット小説とかの話だけど。


「警戒しなくて大丈夫よ、落ち着いて話ができる場所に行くだけだから。少なくともあの地下牢よりはいい場所なのは保証する」


 おっと、ちょっと考え事が過ぎたな。昔(前世)から頭を使うと思考を回しすぎるは私の悪い癖だ。


「ごめんなさい……いきなり乱暴されて信用できないのはわかるけど……」


「あ、いや、そんなつもりじゃ……。それにあんなことが起きたら警戒されるのも当然だからな」


 ちらっと牢屋の方を見たら騎士の人達が後片付けしてた。皆さんすんません。


「でもリィナさんの言うことならまだ信じられますよ。優しくて丁寧でその上美人だしな!」


 私の直感が「この人は無害だ! むしろバッチ来いだ!」と言っているからな。

 むしろ問題は今も後ろで睨んでいる獣人族カロフだ……。いきなり乱暴してきたし、ちょっとあいつとは簡単に仲良くはなれそうにないぞ。


「ふふ、ありがとね。あとそんなにカロフのこと責めないであげて。彼にもちょっと事情があるのよ」


 む、リィナがそう言うのならこちらも善処せねばなるまい。まぁ別に責めたつもりはないんだが、美人のいうことは聞いておこう。

 それよりも……。


「それよりもリィナさんは今恋人とか……」


「あ、着いたわ。話はまた後で聞かせてもらうね」


 くっ! ファーストコンタクトは失敗か。だがまだ諦めんぞ……。


 しばらく歩くと村の中でも結構立派な家の前で止まった。

 お、家の中から偉そうな人が出てきた、察するにこの村の村長あたりか……。


「おおリィナ、久しぶりだな。話には聞いていたが立派になって……」


 おや、リィナはこの村の出身だったのか。そういやあの獣人族カロフとも親しそうだったからな。


「村長、積もる話は後で。ちょっと部屋を使わせてもらってもいい?」


「ああ、事情はわかっている。二階の空き部屋を使ってくれ」


 私はリィナに連れられて二階へ。まさか女性と二人っきりの展開になるとは……フラグか? 違うか……。


「あれ、カロフはこないの?」


「俺ごときが割って入っていい話ではないでしょうや。下の部屋で待ってるんで手早く尋問済ませてくんさいよ」


 そう言って、カロフは階段を降りていった。その背中はどこか寂しげに見える。

 しかし尋問て……え、私どうなっちゃうん?


「ちょっとカロフ! もう、私はまた昔みたいにあなたと接したいだけなのに……」


 あー……なんだ? この私の場違い感は……完全に蚊帳の外っぽいんだが。

 一応今回の事件の重要人物だよな、私。


「ワンワン!」


「きゃ!? な、なに?」


 そういや犬のことをすっかり忘れてた。こいつ私の後ろをずっとついてくるんだよな。

 私のことを飼い主だとでも認識してるんだろうか?


「えー、それで……私はこれから尋問されるのだろうか」


「ご、ごめんなさい。あ、さっきカロフが尋問とか言ってたけどそんな大げさなものじゃないから心配しないで」


 そうなのか……それを聞いて一応は安心したが、いろいろ聞かれることには変わりないということかね。


「コ、コホン! ではまず君のことを教えてほしいの」


「私の事?」


 おいおい、初対面の異性に対してその質問はどうなんだい? 何かトキメキが始まっちまうんじゃないか。

 はいすいません冗談ですごめんなさい。でも私は常に恋に飢えてるぜ!


「君は多分この世界とは別の場所……うまく説明できないけど、とにかくそういった場所から来たんじゃないかな」


「うむ、確かに私はこことは別の世界。地球の日本というところから変な渦に巻き込まれて気づいたらここにいた」


「ワン!」


 うんうん、犬も肯定している。しかし"別の世界"という認識はあるのか。

 ん? リィナはなんか資料みたいなものを広げ始めたぞ。


「なるほど、ちょっと待ってね。地球……日本……あ、あった!」


「へ、あったって?」


 え、なにその資料? なにが載ってるの? 超気になるんですが。


「え、えっと……リィナさん? その資料は……」


「これは今までの“特異点”の発生によって現れた異世界の住人の記録なの。それによると500年前に一人と……5年くらい前に二人、あなたと同じ世界からやって来たと思われる人物がいたらしいわ」


 そんなんあんの! つか私の前にもこっち来てた日本人がいたのか。いったい一体全体どんな奴らが来たんだ……。

 いや、だがそうなると他に気になることがあるぞ。


「その人物達は今どこでなにをしているんだ?」


 一応聞いておいて損はないだろう。

 もしその人が日本に帰ってたりしたらその記録とかも残ってるかもしれないしな。


「えーっと、記録によればその内二人はもう死んでるわね」


「なに!」


 500年前の人は寿命だとして、もう一人はなんでだよ!


「5年前の一人はなんでも特異点から現れた後、この世界の説明を受けた次の日に街を飛び出しって行った翌日に遺体で発見されたらしいわ」


 なんだそのバカは……もうちょっと慎重になればいいものを。

 でもまぁ、私みたいな異端者じゃなければ突然こんな世界に飛ばされたらはしゃぐか戸惑うかぐらいか。


「その男は「俺にはきっと異世界チートがあるからこんな世界余裕で救ってやるぜ。そして、ハーレム作ってウハウハだぜ!」と、訳のわからないことを言ってたらしいわ」


 まったく、なんの根拠があってそんなことを思ったんだか。おい犬、何だその目は……。

 え、お前も別世界でいきなり「魔法使えるんじゃね?」とか思ってただろって? 私のは根拠があったからいいんだよ、私の中でだが……。


「しかし、気になったのだが、世界を救うというのはどういうことだ? この世界はなにかヤバイことになっているのか?」


「うん、それも含めてこれからこの世界のことを話すね。あなたのこれからにも関わってくることだから……」


 ようやく本題だな……。

 この世界が本当に私の前世の知る世界なのか。どんな問題を抱えているのか。特異点とは一体何なのか。

 そして、私は無事この世界から帰ることが出来るのか……。




「まず、この世界の名前はアステリム。この世界は7つの大陸に分かれていて、そこには様々な種族が暮らしているの」


 それは知っているぞ、なにせ私が様々な種族をこの世界に共存させた張本人だからなっ!(ドヤァ!)

 7つの大陸というのも私の記憶と一致する。


「種族にもいろいろあってまず世界に一番多い種族である私達人族。人族は様々な国や文化を築いてきて、世界の中心の種族になってるの」


 ん? 今では人族が一番多いのか? 昔は極稀な種族を除いて皆同じくらいの比率だったはずだが。


「他にはさっきのカロフみたいな亜人族。二番目に多い種族ね」


 おいおい、カロフみたいな奴は全員亜人族として扱われる様になったのか……。

 昔は獣人、魚人、鳥人などと分けていたものだが……。え? じゃあ今人族ってどんだけ多いんだよ。


「後は人が作った文明が多いところにはあまり顔を出さない種族ね。エルフ族、ドワーフ族は時々見たりするわ。滅多に顔を出さないのは精霊族、龍族、そして旧魔族ね」


 ちょちょちょ!? なんで皆バラバラに暮らしてるんだ! つかそんなことより気になる単語が。


「きゅ、"旧"魔族?」


 私の知る限りでは、前世の時代で一般的に『魔族』と称される種族は一種類しか存在しなかったはずだ。

 なんだよ旧って、新しいがいるの? 初耳なんだが!?


「そうね……これは君に関しても重要なことだから、話しておかないとね」


 リィナの顔が急に険しくなった。


「少し長くなるけどちゃんと聞いてね。この世界の歴史について、そしてその中で重要になる“特異点”と『新魔族』のことを……」



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