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229話 “龍帝”捜索開始!


 俺達はムゲンから頼まれたある人物を探すため、情報を求めて入った建物の中にいたのは……今この大陸ででかい顔をしてる『龍の使い』ってやつらのたまり場らしい。んで、俺らは今その集団の中でもなにやら力のある立場にいるっつー女から……。


「でさー聞いてよも~。アタシもこうして皆から頼られるえら~い立場になったわけよ。……んでも! そんなアタシに言い寄ってくる男ときたらどいつもこいつもアタシの好みじゃないし、立場だって釣り合ってないのが多すぎんのよ。ゴク……ゴク……プハァ~! わかるぅ? この複雑な気持ちぃ?」


 なぜか卓を囲んで愚痴を聞かされていた。というかどうにもこの女俺らが来る前から酒盛りをしてたらしくすでに酔ってべろべろだ。顔を向けられる度にキツイアルコールの匂いが鼻にかかって……うぷ。


「わかるかんなもん……。とりあえず、話すんならそのジョッキをまず置け!」


「大丈夫カロフ? カロフみたいな亜人は鼻が良いから……」


 リィナの言う通り俺みたいな亜人は鼻が利く。だからっつって別に俺が酒の匂いが嫌いってわけじゃねぇんだが……。


「ふーんだ! あんたみたいなハーレム野郎にはどうせ行き遅れ間近で焦る気持ちなんてわかんないでしょうね! あんた言っとくけど、女の子侍らせてひけらかすような男はロクな死に方しないんだからね」


「べ、別に侍らせてるつもりなんかねぇっつーの! おい、本当にこの酔っ払いがここの責任者なのか!」


 この調子じゃ例の人物の手がかりを聞き出すどころか無駄に足止めを食らっちまうぞ。


「いや、ユリカさんは本来の責任者じゃなくて代理だよ」

「本来の責任者である龍妃様はお忙しい身だからな」

「ユリカさんはいい男が寄ってくるように自分を誇張表現するんだ」


「誇張じゃなーい! アタシは今とってもえら~いの! だからもっとイイ男寄ってきなさーい!」


 ……どうやら嘘じゃねぇみてぇだな。この酔っ払いが信用できなさ過ぎて今まで怪しく思えた他の『龍の使い』のやつらがまともに見えてくるぜ。どうやらここの連中は外で見た過激な奴と違ってそこそこ友好的みてぇだ。

 しかし、今の話の中には気になる部分がいくつかあったな。


「あの……その"龍妃様"というのはどなたのことでしょうか?」


「龍妃様を知らねえってことは……あんたらやっぱこの街に来たばっからしいな」

「龍妃様は我らが龍皇帝国の皇后様。つまり、今この大陸でもっとも崇拝されている“龍帝”様のお妃様ってことだ」


「それって……」


「ああ、間違いねぇな」


 リィナが感づいたように俺の中でもパズルのピースがはまるかのようにすべてが繋がっていく。

 俺らの探し人……つまり“龍帝”には苦楽を共にする花嫁がいるとムゲンから聞かされてる。直接龍帝とやらに接触できずとも、そっちに接触して協力を得られればもう片方からも了承を得られたも同然って話だからな。こいつは有益な情報をゲットしたぜ。


「んで、その龍妃様ってのにはどこに行きゃ会えるんだ?」


「悪いが俺達はそこまで詳しいことは知らないよ。この中で知ってるとすれば……」


 そう言って『龍の使い』達が申し訳なさそうに視線を向けた先には……。


「あら、エールがなくなっちゃったわ。追加よ追加ー! うーん、冷えた室内で冷えたエールを飲むのは最高ね!」


「あれかよ……」


 まぁ"代理"っつーくらいだからそれなりの情報は持ってるんだろうけどよ。この状態でまともな話が聞けるかどうかも怪しいってのに。

 この女が酔いから醒めるまで待てってことか? おいおい、この調子じゃぜってー明日までシラフにゃ戻んねぇぞこりゃ。


「仕方ありませんわね……カトレア!」


「はっ! お任せください!」


「んー……なになに突然? 一発芸でも始めようって……ムグッ!?」


 な、なんだ!? お嬢さんの合図でいきなりカトレアのやつが懐から何か小さな粒を取り出してあの女の口の中に投げ入れたぞ。


「ちょ、ちょっとあんた何し……んんん!? ガボゴボ……!?」


 そのまま高速で移動したと思えばいつの間にか手にしていた水の入ったコップを強制的に口の中に流しいれて……。


「失礼」


ストン


「あふん……」


 恐ろしく速い手刀で首筋を叩くと酔っ払いは目を白くしてそのまま気を失っちまった。いや下手したら死ぬやつだろこれ。


「か、カトレアさん!? 大丈夫なんですかそれ!」


「問題ありません。手早く、かつ安全に仕事をこなすのが自分のモットーですから」


 見た感じは全然安全そうに見えねぇんだがな。


「てかいったいなにしたんだ? 何かを口の中に入れてたみてぇだけどよ?」


「あれは入眠時に酔いを醒ます成分を発生させる実ですわ。社交界ではたまに酔いのせいで我を忘れて女性に襲い掛かる不届き者がいますから、ああして酔いを醒まさせて処罰を受けさせるの」


「大体一、二時間ほどで目を覚ますよう調整してあります」


 だからお前のその謎の技術はどこで覚えたんだよ。こういう時だけ無駄に有能になりやがって。

 まぁ今回はお嬢さん達に感謝しねぇとな。俺やリィナじゃこういう手合いはどうしようもねぇ……。


「と、とにかく、ユリカさんが起きるまでに質問したいことをまとめておこう」


「ああ……つっても俺はそういうの考えるのあんま得意じゃねぇから任せる」


「まったく、しょうがありませんわね」




 こうして、酔っ払い女が起きるまで聞くべきことをまとめて大体一時間ほど経ち……。


「はっ!? ここはどこ!? アタシは絶世の美女!」


「それはねぇよ」


 やっと起きたかこの酔っ払い女。とりあえず、逃げられねぇようにこいつの席は壁を背にさせて、あとの席は俺らで埋めて囲ませてもらった。もちろん酒は没収して手の届く場所にも一切置いてない。


「あ、アノー……。コレハイッタイドノヨウナ状況ナノデショウカ……」


「テメェにはこれから有無を言わさず俺らの質問に答えてもらう……」


「ひ、ひぃいいいいい!? なんなのこれー! 新手の拷問なの!? そうなの!? なんで誰も助けてくれないのー!?」


「もうカロフったら、そんなに威圧しないの」


 ちなみに他のやつらは普通に過ごしてもらっている。なんでも、「ユリカさんが調子に乗って痛い目を見るのはいつものことなんで」と笑って差し出してくれた。なんだか皇子さんのノリに似てるから妙に納得できたぜ。


「ユリカさんには聞きたいことがいくつかあるので質問させてもらいます。知ってる範囲でいいので答えてもらっていいでしょうか? あ、話中にお酒はなしですからね」


「は……はいいいいい」


 まったくいちいちリアクションの面倒くせぇ女だな。とにかく、この女から聞き出せることはさっさと聞いて次へ向かいたいところだぜ。


「えっと……それで、アタシに聞きたいことというのはいったい?」


「はい、私達は中央大陸のヴォリンレクスからある人物を探しにやってきたんです」


「ヴォリンレクス……あれ? 数日前からこの大陸の統制やら協定やらを取り組みに魔導師ギルドと一緒に来た人達とは違うの?」


「それとは別件なんです。詳しく話すと少々長くなりますけど……」


「んな話は後回しだ。とにかく、俺らはあんたらの言う龍帝や龍妃とかいう奴らに会うためにここまで来たんだよ」


「ちょっとカロフ、いきなり話を飛ばしすぎではありませんこと」


 いいんだよこんくらい簡潔で。こっちの立場がどうだとか国の事情がなんだのと回りくどいことしてたらそれこそ日が暮れちまう。

 重要なのは、この女がそいつらの情報を知ってるかどうか、そんだけだ。


「ええっと、そういうことなんです。あなたなら知ってると聞いたので。よろしければ教えていただけませんか?」


「別にいいわよ。どうもあなた達は悪い人じゃなさそうだし」


「随分あっさりしてんなぁ……」


 出来立てほやほやの小さな王国っつても、仮にも王族の情報をそんなあっさり教えていいもんなのか。俺達にとっちゃありがたいことだけどよ。


「まあ、たとえあなた達がよからぬことを考えていようとウチの龍帝様にどうこうできるとも思えないから。龍妃様に危害を加えようとすれば龍帝様がすっ飛んでくるし、あの二人に関してはアタシはなーんにも心配してないわ」


 すげぇ自信、というよりも信頼っつった方がいいか。他の『龍の使い』に関してもそうだが、こいつらはその龍帝の力に絶大信頼を寄せている。

 つまり、それほどの強者だってことだ。だからこそムゲンもスカウトしたがるってもんか。


「それで、結局のところお二人はどこに?」


「あ、ごめんね、すっかり忘れちゃってたわ。あの人達の居場所……居場所ねぇ……」


 そう言って酔っ払い女は腕を組み少し考えるように唸ると。考えがまとまったのか俺達に向き直り……。


「うーん……ごめんなさーい、やっぱりわからないです!」


「おいこのアマ……あんまなめてっと本当に八つ裂きにすんぞこら……」


「キャー!? 暴力反対暴力はんたーい!? だって本当なのよー! あの二人って今いろんなところを転々としてるはずだから詳しい滞在地なんてアタシだって知らないんだから!」


 あーチクショウ! これじゃ本当にただの時間の無駄じゃねぇか!

 クソっ、こちとらこんな仕事さっさと終わらせたいところだってのによ……。


「カロフ落ち着いてってば。ユリカさん、お二人は滞在地を転々としているというのはどういうことなんですか?」


「あなた達、外で過激的な『龍の使い』を見なかった?」


「そういえば、その印をつけたおじいさんがウチの兵士に少々過剰なまでに反発してましたわね」


「ああいう村の人達って、龍皇帝国の保護下になったのはいいんだけど、ちょっと勘違いしちゃってて。自分達は龍帝に選ばれた特別な村の人間だとか言って、権力を持った気になっちゃってるのよ」


 確かに、あのじいさんやたらと強気だったからな。自分達は選ばれた存在、か……そういうの俺はあんま好きじゃねぇな。


「そこで、龍妃であるミネルヴァさん自ら各村々に出向いてその誤解を解いて回ってる最中なの。それが終れば魔導師ギルドやあなた達の国とも友好的な話し合いになれるはずよ」


「そうなんですか。それは、こちらにとっても良い話ですね」


 となりゃ、その龍妃様ってのが上手くすべての村を説得できりゃこの大陸全土にわたっての協定の件も万事解決ってことか。

 それはいいんだが……。


「なぁ、一つ気になるんだけどよ。その龍妃ってのも……"龍"なのか?」


 ここに到着する前に、ムゲンから今回の探し人は伝説や伝承にしか登場しないあの"龍族"だっていう話は聞いている。実際この目で見るまで信じられねぇが、“龍帝”という呼称からその信憑性が高いだろうことはわかってるつもりだ。

 ただそうなると、これまでの話に出てきた龍妃ってのはムゲンからもチョロっと情報を聞いた程度で俺らは詳しくは知らねぇ。


「ああ、そういうことね。違うわよ、ミネルヴァさんはアタシ達と同じただの人族。ただ龍帝のお嫁さんだからそう呼ばれてるだけ。あ、でも"ただの"人族ってのはちょっと違うかも……」


 なにやら言葉のケツにブツブツと呟いてるがよく聞こえねぇ。それよりも、龍妃ってのが人族ならちと疑問があるな。


「あんたの話じゃその龍妃が出向いて説得して回ってるってことだけどよ。村人はそれで納得すんのか? もしかしたらその龍妃を偽物だって疑って信じないかもしれない可能性があるんじゃねぇか?」


 突然権力を持った奴ってのはその権利を手放すのが惜しいからってどんな嘘や言いがかりをつけてくることもあるからな。俺の国でもそういう輩は何人かしょっぴいたことあるしよ。


「それは大丈夫よ。だって龍帝と龍妃には普通の『龍の使い』が着けてる印とは違って特別な印をつけてるから一目で見分けがつくの。それに、この情報はどの村でも共通認識だから知らない人なんていないわ」


 特別な印か、なるほどそいつはいい。そんなもんがあるなら俺達にとっても探し人を見分けるのに役に立つ。誰が作ったか知らねぇが助かるぜ。


「いやー、でもいいでしょこの印。龍皇帝国にもシンボルが必要なんじゃないかってアタシが考案したらそのまま採用されて大陸中に広がっちゃったのよ~。まぁ、調子に乗って保護下の村に配りまくったせいで村の人達が誤解する原因にもなっちゃったんだけど」


 ……前言撤回だ、やっぱこの印を作った奴はとんでもなく迷惑なことをしてくれやがった。おかげで俺達がこうして苦労する羽目になってんじゃねぇか。


「あのー、それで龍妃様の現状は理解したんですけど……龍帝様の方はどうなってるんでしょうか?」


「あ、龍帝様? 多分……どこかの森の中にはいると思うんだけど……」


「森の中? なんでまたそんなところに?」


「それがね、魔導師ギルド……ああ前のね。その残党、しかもここの指揮を執っていた魔導師がまだ逃げ回ってるのよ。ウチの龍帝様は落とし前とかそういうのに厳しい人だから地の果てまで追ってくわね。ま、時間の問題だと思うけど」


「前の魔導師ギルドの残党か……なんか聞いたことある気がすんな」


「今この地でも魔導師ギルドが解決すべき問題の一つとして取り上げられているぞ騎士カロフよ。確か、前の魔導師ギルドで六導師と呼ばれていたハウザー・オーフェンという男が未だ逃走中との話だったな。情報によれば相当酷い圧政を強いてたらしい」


 なるほど、それで落とし前ねぇ。話に聞いてた通り義理や人情に篤い性格だってのも本当っぽいな。


 さて、ここまで情報が出揃ったわけだが……結局居場所に関してはまだ確定的な情報はねぇ。龍妃を探すために村を回るにしても、この大陸には村なんて近いところから遠いところまでいくつもありやがる。森はそこら中から入れはするが、どう捜索すりゃいいか見当もつかねぇ。


「とりあえず、龍帝様と龍妃様には特別な印がついてるから、それを手掛かりに探すのが一番いいかも。ユリカさん、その印についてもう少し詳しく教えてもらってもいいですか」


「全然オッケーよ。ほら、まずこれが龍妃様の印」


 一般の『龍の使い』が着けてる印は龍の体を翼で丸く覆ったようなシンプルなデザインだが、こいつは他と違って中心に何かを別の模様を抱いてるな。


「ハートマークを抱いてますわね」


「なんか……ちょっとかわいいかも」


「ふっふっふっー……これはね、龍帝様が龍妃様を愛して愛してやまないっていう証なの、それはもうこっちが恥ずかしくなるほどに!」


「よく怒られずに通ったなこんなの」


「いやー、最初に龍妃様に見せた時は恥ずかしがられながらすっごく怒られたけどね。そのあと龍帝様が大絶賛したからこれで決定したのよ」


 やっぱそんな説明されたら恥ずかしいよな。ただ龍帝的にはそんなんお構いなしに、むしろ見せつけたいって感じか。なんか、大分龍帝と龍妃とやらのイメージ像が固まってきた気がするな。


「んで、こっちが龍帝様の印よ!」


 そう言って見せびらかすかのように取り出したのは一着の服だった、それもかなりでけぇな。


「あら、背中の部分に印がつけられてるのね」


「しかもすっごく大々的に」


 その言葉の通り服の背中部分一面にこれまたでかでかと龍の印が刻まれてやがる。他のやつとどこが違うのかと言われればこれまたわかりやすい……龍の頭に王冠が乗っけられてる。


「ユリカさん、印が違うのはわかったんですけど……この服はいったい何なんですか?」


「よくぞ聞いてくれました! 実はこの服、龍帝様のためだけに作られた魔力が込められた服なのです! その新衣装にこうしてアタシの考案したシンボルを加えることで人化状態でも誰からも一目で龍帝様だと理解でき……ってああああああああ!?」


「うおっ!? 突然なんだうるせぇな!」


「これがまだここにあるってことは……龍帝様、まだどこにも印付けてない」


 うっかりしすぎだろうが! なんで俺らに見せるまで自分がそいつをまだ渡してねぇって気付かなかったんだよ。……いや、十中八九酔ってたからだろうな。


「うう……すみません。この通り龍帝様は印もつけていないので本当になんの目印もありません……」


「だ、大丈夫ですよ。最低でもどちから一人の居場所さえわかれば十分なんですから」


「そう言っていただけるとありがたいですぅ……。お詫びといってはなんですけどこれを持って行ってください」


 そう言って手渡されたのは……この店内では誰もがつけているあの『龍の使い』の印が描かれていた布を四枚。俺達の人数分ってことか。


「それがあれば村に行っても警戒されないと思いますから」


「ありがとうございますユリカさん。情報をいただいたうえにここまでしていただいて」


「いいのいいの、それよりお仕事頑張ってね。アタシはまたここで飲んでると思うから、困ったらまた訪ねてちょうだい」


「酔ってる時には訪ねたくねぇけどな……」


 こうして、俺達は新たな情報と『龍の印』を得て建物を後にすることとなった。


「情報は得られましたけど、結局これからどう動きますの?」


 そう、とにかく俺達はこれからまだまだ捜索を続けなくちゃならねぇ。ただ、情報に確定的なものはない……これからどこをどう探すかが重要になるはずだ。


「龍帝様はともかく、龍妃様は各村々を回ってるんだよね。それなら、やっぱり私達も村をひとつづつ回って後を追うのが一番だと思う」


 ま、論理的に考えりゃそれが一番確実性が高く利口な方法だろう。あの酔っ払い女から貰った印もあるから困ることもねぇ。

 だけど……。


「なぁ……手分けしねぇか? 俺は近くの森を捜索して龍帝を探す。お前らはリィナの言った通り村を回って龍妃を探す。どうだ、これなら先にどっちかが見つけりゃそれで万々歳だろ」


 村を回るっつっても俺らの拠点は結局ここだ。何日もかけていろんな村を往復することになるだろう。だったら手分けした方がどちらかが見つける確率も上がるはずだ。

 それに、俺は……。


「ねぇカロフ……もしかして、焦ってる?」


「……なんで、こうも簡単に見破られるだっての」


 流石付き合い長いだけあるよな。そうだ、俺は確かにこの任務をさっさと終わらせたくて焦っている。


「ムゲンくんから早く"真実"を聞きたい。そうでしょ」


「そうだよ……こっちは気になって夜も眠れねぇってのに、ムゲンのヤロウがこんな面倒くせぇ任務押し付けやがるから」


 本当はわかってんだよ、俺がどれだけ早く任務を終わらせてもあいつが戻ってこなきゃそれを知ることはできねぇってことくらい。

 でも俺は早くその真実にたどり着きたかった。だから、今もこんなに焦ってる。


 こんなんじゃ、また一人で考え込むなって怒られるんだろうけどよ……。


「いいよ、それじゃあ私達が馬車を使って龍妃様を探すから、カロフは森の捜索をお願いね」


「え? ちょ、いいのかよ!?」


 てっきりまた反対されてお前らと一緒に行くものだとばかり思ってたのに。


「私だって、カロフが焦る気持ちはわかるから。だから、今はカロフのやりたいようにやってみて。でも、辛いときは一緒に支えてあげるから」


「リィナ……」


 本当に……お前が一緒にいてくれてよかったよ。これまでも……いや、これからだって俺のことを理解して一緒にいてくれる。そのおかげで、俺はまた一歩進むことができるんだからな。


「ちょっと~……なに二人でいい雰囲気になってるんですの。わたくしだってカロフの意思を尊重してあげるんですから、感謝しなさい!」


「わかってるっての、だから叩くなよお嬢さん」


 そして今は、こうして共に歩む大切な存在が増えてなお、皆が俺を支えてくれる。


「まぁ心配ありませんわカロフ、わたくし達が手早く龍妃を見つけて差し上げますわ」


「それじゃ、お互いに頑張ろうねカロフ」


「ああ! そんじゃ……早速龍帝と龍妃とやらの捜索に出発だ!」


 こうして俺達はそれぞれの捜索域を絞り、この第五大陸を進んでいくのだった。



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