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21話 戦いに備えて 後編


 数秒後、光が収まっていくとともにカロフを覆っていた煙も徐々に晴れていった。それと同時にリィナは一目散にカロフの元へ走って行く。

 いやぁ私もあんな風に心配してくれる彼女が欲しいもんですよ……。


「大丈夫! カロ……フ?」


 カロフの下へ駆け寄ったリィナだったが、どうもその表情は驚いたというよりはあ然としているようだ。……本当に大丈夫か?

 一応強制的に獣深化させたようなものだからな、昔も何度か同じ方法を使った事はあるが、魔術の心得がない者にするのは初めてだったし今の私はあの頃とは違うからな。


「え、嘘……まさか……カロフ!?」


「ど、どうしたんだ!? まさかマズイことになってしまったか!」


 やはり今の私では上手くできなかったのか!? と、とりあえずカロフの下へ行かなくては!


「カロフ! 大丈……ブフーーー!」


 カロフの下へ駆け寄ると、そこには先ほどまでの逞しい姿は無く……代わりにいたのは。


「ふぅ、やっと終わったか? ……って、ハァ!? な、なんじゃこりゃあああああ!!」


 衝撃……というよりは笑劇的な光景だった。

 そこにいたのは一匹の狼、というかちょっと大きめのわんこだこりゃ。

 ともかく、そんな愛くるしい姿のカロフが二足歩行で立っていたのだがら。


「ワンワン」


 お、犬がお仲間見つけたと思って嬉しそうに走っていったぞ。

 いやしかし、獣深化すると亜人の人っぽい部分が少なくなりその種特有の身体強化が成された姿に変わるんだが……。


「ぷっ……あっはっは、なんじゃそら!」


「おいムゲンテメェ笑ってんじゃねぇ! どうなってんだよ、縮んじまってんじゃねえか!」


「落ち着いてカロフ、私はその姿もかわいいと思うよ」


 ヒョイっとカロフを持ち上げるリィナ。この光景……完全に飼い主とペットだな。


 しかしこんなことは初めてだな……失敗なんだろうがこうして獣深化の新しいケースが出てくると私もまだまだ知らないことだらけだと感じる。うーむ研究意欲が湧いてくるぞ。


「わー、カロフの毛並み気持ちいい」


「あ、おいリィナ何し……あっ……そこ……やめ……わふぅん」


 てかなにをやっとるんだあいつらは……新しいプレイか何かかよ。

 カロフもモフモフされて満更でもない顔をしてやがる……てかこのままだとそのまま昇天しそうな勢いだ。このエロ狼め。


「こうしてやる!」


 頭をわしゃわしゃしてやる!

 べ、別に私もモフモフしたかったわけじゃないからな! あ、でもこれ気持ちいい……。


「わぷ! やめろてめぇ!」


 カロフがキックしてくる。さしずめ犬キック……これまた随分とまぁかわいい蹴りだな。だがしかし今の姿で怒られてもなんも怖くなんか……。


ドゴォ!!


「ごぶぁあああああ!?」


 カロフのドライビングシュート! ムゲンくんふっとばされたー! ……って、なんじゃこのパワー!?


「え? あ? お?」


 蹴ったカロフが一番驚いているな。うん、多分これは獣深化の影響だろう。よく見ればカロフの中の魔力がもの凄い勢いで体内を駆け巡っているのが見て取れる。

 てか超痛い……。


「か、カロフ……い、意識を集中して体の中の魔力を感じてみるんだ……げふ」


「意識を集中? り、リィナ、ちょっと降ろしてくれ」


「え……うん……モフモフ」


 リィナはどうやらモフモフカロフがとても気に入ったようだな、名残惜しそうにカロフを地面に降ろしている。


「集中集中……うお! なんだ、この体の中を何かが駆けずり回ってる感じは」


「どうやら感じれたようだな。カロフ、それが魔力だ」


「こ、これが魔力……すげぇ。でもなんか気持ちわりぃ……おいムゲン、この変な感じはなんとかできねぇのかよ」


「大丈夫、それは軽い魔力酔いだ。魔力の扱いに慣れてない者はこの魔力酔いがよく起こる」


 むしろこの魔力酔いを経験していくことこそ相手の精神的魔術に対抗する術を理解するのに有効なのだ。

 よし、ではそろそろ本題に入るとするか。


「カロフ、次はその暴れている魔力を抑えこむんだ」


「いや、んなこと言われてもやり方なんて知らねぇぞ俺……」


「いいか、魔術というのはイメージが全てだ、魔力の制御も例外ではない。そうだな、その魔力を暴れだしたピグヌスだと思え、そしてお前はそのピグヌスを止めてなだめる。もう一度言うがイメージをしっかりと作れ」


 自分が得た知識や体験したことならばイメージをしっかり作ることができるはずだ。だから、カロフはリュート村でピグヌス飼いをしていたと聞いていたのでそれをイメージしてもらうことにしたのだ。


「イメージ、イメージねぇ……。ん? んあー……おう、なんだかできてる気がするぜ」


 適当だなぁ。だがまぁ……そうか、やはりカロフはそこそこセンスがいいようだな。

 これが出来るかどうかで今後の成長に大きく関わっていくんだ。


 ……っと、そろそろカロフの魔力が安定してきたっぽいな。


ボウン!


 うおっ! 魔力が安定した途端またカロフの体に変化が。


「ゴホッゴホッ……おお! なんとか元の丈に戻れたぜ!」


「モフモフ……」


 カロフは元に戻って嬉しそうだがリィナはちょっぴり残念そうな顔をしている。

 モフモフしたカロフが余程気に入ってたんだろう。


「魔力も安定してるみたいだぜ。これでどんな奴が来ても負けねぇ!」


ボコリ


「いて!」


「なーに勘違いしてんだこの阿呆」


「いやいや! だってこの通り獣深化し……てねぇ!?」


 やっと気づいたようだな。自分の体がすでに完全に元の姿に戻っていることに。


「察しの通りお前の獣深化はもう終わっている。ま、元々始めから獣深化を制御出来るわけないしな」


「じゃあ今までのは何のためにやったんだよ!」


「今回の獣深化、もとい魔力制御の特訓は色々と意味がある。魔力の循環で少しだが肉体は強化されるうえに、敵の発動した魔力に直接触られる術系統に対してさっきのように魔力を抑えこめば耐性を得られもする」


 むしろ今回の特訓はそれがメインだった。

 新魔族であるアルヴァンは闇属性の魔術を使用しあの貴族のおっさんの魔力をバグらせてたしな。そういうのをこちらに使われた時の対処ともいえる。


 ……そう、この先まだ見ぬ新魔族がアレス王国で待ち構えているかも知れない。その時魔力に直接干渉する魔術を使われたら私以外即全滅ということもありえない話じゃないだろうしな。


「だったらよムゲン、早速本当の獣深化の方法とやらを教えてくれよ」


「馬鹿野郎、そんな簡単に出来るなら苦労しない。もっと自在に魔力を扱えるようにならないといけないし、属性についての理解、術式構成の仕組みなども覚えないといけないんだ。全部理解し制御するのには普通に考えても何年もかかるものなんだぞ」


「マジかよ、だったら何のためにやってたんだよ!」


「精神系魔術の対策と少々の肉体強化の方法といったところか。どちらにせよいきなりそんな劇的に強くはなれない。とりあえずこれから毎日魔力の動きを強めたり弱めたりする運動を朝、昼、晩と三セットやっておけ」


 一度ワンコになった感覚を覚えていればいずれは獣深化も出来るようになるだろう。


「はぁ……ま、ちょっとは強くなれるみてぇだからいいとすっか。後は……欠かさずに毎日素振りでもするっきゃないな」


「だ、大丈夫、カロフならすぐ強くなれるわよ」


 その点に関しては同意見、カロフは調子に乗らなければ戦いのセンスも結構ある方だしな。

 ただ気になるのは……。


「なぁ、カロフはどうして剣を使ってるんだ? お前なら得物を使わないで格闘したほうが強いと思うんだが」


 カロフは剣を使ってはいるが剣術に関してはお世辞にも上手いとは言えない、我流みたいだしな。それに比べ格闘術の方はしっかりと型があってなかなかのものだ。

 昔、亜人達は武器を持たずその特質な肉体と魔法を巧みに使った格闘術で戦っていた。今では魔術を扱う亜人などほとんどいないらしいのでそう言った戦い方をする者はいないだろう。

 勝手な願望だが、私としてはカロフにそうなってもらいたいところだ。


「格闘術は、家にあったオヤジの持ってた手記に色々書いてあったんだよ。なんで剣を使ってるかって言うとだな……。まぁ、騎士ってのはよ……剣を使うものだし」


 なるほど、カロフは騎士を目指していた。一度冷めていた夢がリィナと再会したことでまた熱を取り戻したといったところか。


「ま、まぁ騎士になるためにはそれなりに剣を扱えないとダメだろ。魔導師がダメなら騎士としてどんどん成り上がって行くしかねぇからな」


「カロフ、私も特訓手伝うね。私だってずっとカロフと一緒に騎士をやりたいって思ってたんだから!」


 おやおや、またまたいい雰囲気になってきましたのう。ま、教えることは教えたし二度も邪魔はしないさ……。


「行くか、犬。私もこれからに向けてやらなければならないことは沢山あるしな」


 ふっ、魔導師ムゲンはクールに去るぜ……。


 とにかく、勝負は明日からだ、戦いに備えて私も回路の調整をしておかないとな。ケルケイオンで調整した今でも前世の私の魔力に比べれば雲泥の差だ。


(というわけで魔力の調節に付き合ってくれドラゴス)


(やれやれ……仕方ないな、やれるだけのことはやってやろう)


「ワン!」


 明日は待ちに待った大きな街だ。元の世界に帰る方法のヒントでも見つかれば……いいんだがなぁ。



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