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162話 新たなる帝国

ついに決着です



 ……決着はついた。エネルギーの供給源であると共にその制御のコアであったサロマを失った魔導要塞は鈍い音を立てながら段々とその挙動がおかしくなりつつあった。


『もはや制御不可能か……』


 こんな状況だというのにその声からはまったく焦りを感じない。計画が破綻し、誰の目から見てもダンタリオンの敗北は明らかだというのに。


ボォン!


「い、今のは何の音なのだ!?」


「結構近く……あれだ!」


 その爆発音は私達の目線の先、魔導要塞の巨大砲の根本からだった。

 巨大な鉄の塊が大きな音を立てながら崩れてく……見れば他の個所からも次々と同じように爆発による崩壊が始まっている。

 これは私達も早く離脱しなければ巻き添えを食らってしまうだろう。


「ディーオ、サロマ、私に掴まれ。この場所ももう持たない」


「う、うむ、そのようだな」


 裸のサロマに自分の外套を羽織らせながらそそくさと準備を始めるディーオ達。だったが、サロマはどこか浮かない顔をしており……。


「どうしたのだサロマ、早く脱出するのだ!」


「ディーオ様……本当によろしいのですか。このままでは……あの方は」


「サロマ……! それは……」


 サロマの問いにハッとした表情を浮かべたディーオだったが、すぐに苦虫を嚙み潰したような顔に変わる。

 おそらくダンタリオンのことだろう。確かにこのまま魔導要塞が崩壊すれば奴はひとたまりもないはずだ。

 そして、決別したとはいえダンタリオンはディーオの父親であることに変わりはない。サロマが言いたいのはそういうことだろう。


 ディーオはそのまま考えるように数秒だけ目を閉じ……。


「そう……だの。いくら人道的に許されぬことをしたといっても、このまま見殺しにすることなどできぬ」


 それはディーオの優しさなのだろう。たとえどれだけ許せない相手であっても見捨てることのない、誰よりも優しい心。

 ダンタリオンを救出して脱出する、その意見に私達も反対はしない。

 だが……。


「うむ、これより魔導要塞よりダンタリオンを探し出し、帝都に戻ったのちに正式な裁きを……」


『うぬぼれるな、小さき存在どもが』


「な!?」


 私達が魔導要塞の内部に踏み出そうとしたその瞬間だった。残ったエネルギーによるものかはわからないが、足元の近くから魔力の腕が出現し、薙ぎ払うように私達に対して攻撃を仕掛けてきた!


「くっ! 間に合え……!」


 あまりにも予想外の一撃だったために反撃する隙もない。私はなんとかディーオとサロマを抱えながらかばうようにその腕の攻撃を背中に受けてしまう。


「ぐううっ!(いてぇっすー!)」


「む、ムゲン! そんな……これでは」


 その衝撃によって弾かれた私達はそのまま魔導要塞から離れ、地面へと落下してゆく。

 完全に不意打ちだったために体勢を立て直すのもままならない……かろうじて着地はできるだろうが、戻ることはもう不可能だ。


「なぜだ! まさか余らを助けるために……」


『うぬぼれるなと言ったはずだ。貴様らはこの戦いの勝者だ、それは認めよう。だが、我が運命さえもが貴様らの手に委ねらることだけはあってはならん』


 それは皇帝としてのプライドなのか、それともダンタリオンだけにしかわからない絶対的な考えがそこにあるのだろうか……。


 そんなことを考えている内にも魔導要塞の崩壊は進んでいく。爆炎に包まれながら崩れ落ちていくその様は、どこか一国の崩壊のようにも思えてくるようで……。

 そんな光景を、私達全員はただ遠くから見つめることしかできなかった。


「……父上」




 崩壊が完全に終了したのを確認し終えると、私が魔術で消火活動を行い、まだ余力を残している者全員でその瓦礫の下の捜索に移ることとなった。

 そう……内部にいたダンタリオンの捜索である。もっともあの爆発に巻き込まれたのなら見つかるかどうかも定かではないが。


「ワウー……(うーん、やっぱりこれじゃあぼくの鼻でも探しづらいっすねー……)」


 ちなみに私と犬はすでに合体を解除している。意外と疲れるからなあれ。


「っこらしょいっとぉ! しっかしホントに見つかるかぁ? 流石にデカすぎだぜこりゃ」


「文句言ってないで手を動かそ。これも大事なことだから」


 カロフやリィナもこうして瓦礫の撤去作業のため動いている。

 ……ダンタリオンが生きているかどうかは正直わからない。だが、もし生きているのなら聞かなければならないことは山ほどある。

 なので、私としても見つかってほしいところだが。


「うむむ、こういう時非力なのが恨めしいのう。ステュルヴァノフで全部吹き飛ばすというのはどうかの?」


「アホンダラ、そんなことしたらダンタリオンまで一緒に吹き飛ぶわ」


 それにただでさえ力加減ができんだろうがお前は。ダンタリオンのことも気がかりだが、ディーオの力の制御も問題だな。

 ことが終わったらディーオにはキチンとステュルヴァノフ制御のための特訓をしてもらわんとな。


「……! 皆さん、ここです!」


 そんなことを考えていると、遠くから私達を呼ぶ声が聞こえてくる。

 それは少し離れた位置にいたパスカルさんの声だった。どうやら……見つかったようだな。


 私達は協力して瓦礫をどかしていき、ついにその跡から今回の戦いの元凶である……皇帝ダンタリオンを発見したのだった。


「……ち、ダンタリオン……」


 その身を引きずり出して安全な場所に寝かせたが、未だその目を覚ます気配はない。

 運ぶ前に微かだが脈があることは確認できた。怪我も多かったが奇跡的に致命傷には至っていない、可能な限りの応急処置も済ませた。

 あとは……。


「……ぐっ」


「ぬ!? お、起きたのか!」


 低いうめき声と共にわずかだが顔がピクリと動いた。そして、そのまま瞼がゆっくりと開いてゆき……。


「どうやら、逝き損ねたようだな」


 私達を見回しながら皮肉交じりに喋るその姿に、私達は少々の緊張と安堵を感じていた。

 この様子からしてダンタリオンに抵抗の意思はなさそうだ。


「ディーオ様、陛下の無事も確認できましたので……」


「う、うむ、そうだの。では、これより余らはダンタリオン及びその部下を拘束しつつ帝都へ戻るぞ。皆準備を始めるのだ」


 敵兵……とはいってもダンタリオンの兵はその大半が魔導要塞の攻撃でその命を落としてしまったがな。

 そうまでして勝利を掴もうとした狂人……早く話を聞きたいところだが、この状況ではそれは戻ってからゆっくり聞くしかないか。


「……そこの魔導師。何か……我に聞きたそうな顔をしているな」


(こいつ……)


 まるで私の心中を察したかのような的確な発言に一瞬戸惑ってしまう。まさか悟られるとは思わなかった。


「今なら……答えてやってもいい。勝者への褒美だ」


「おいおい怪しいぜ。話なんざ後でいくらでもできんだろ。上手く口車に乗せられんなよムゲン」


「でも……このまま戻っても素直に何もかも話してくれるかわからないよね……」


 そうだ、この男はすでに死を覚悟の上でこの戦いを終結させようとした。そんな男がこの先生きている内に何か私達の知らない情報を吐くだろうか?

 ……もしかしたら、これはチャンスなのかもしれない。


(だが、何を聞くべきだ?)


 護送中ではそこまで話すこともできないだろうし、今この場で聞くとなれば時間が限られる。ならば、何を尋ねるべきか?

 ダンタリオンの目的……これは漠然としすぎている。ベルゼブルと帝国の関係……いや、これも何か根本とは違う気がする。神器の出所……も聞く必要はない。


 どれもこれも重要そうではある……だが、どれも今聞くべきものとは違う気がする。


(もっと……そう、何か絶対の確信を持てない情ほ……)


 そう考えた時……一つ、絶対に私の理解を超えているある単語が思い浮かぶ。

 今この時を逃せばもう二度と知る機会はない……そう感じた私はその疑問をダンタリオンへと問いかけた。


「……“呪縛”とはなんだ?」


 それは、ディーオに自身の……代々の皇帝の意思と思想を受け継がせる力であり、ディーオの母親の記憶と意思をクローンであるサロマの肉体に投影するための力。

 この世界の"魔"を極めた私にさえ……理解の及ばない力だ。


「ふっ……ははははは! そうか、そこに辿り着くか……。なるほど、これが予測不可能な事象というものか」


 突然のダンタリオンの大笑い……その姿に誰もが驚愕の表情を見せていた。ヒンドルトンやパスカルさんでさえ驚きで声もでない様子だ。


 そして……その笑いの意味はいったいなんなのか。ダンタリオンの言葉の意味は。

 この質問で……わかるのだろうか。


「いいだろう、答えてやる。貴様らの理解できる範囲のレベルでな」


「ぐっ、なんか馬鹿にされた気がするぜ」

「余も……」


 ダンタリオンの言葉に若干ダメージを受けている者もいるがそれは放っておこう。

 ……それに「私達に理解できるレベル」、そこにも何か意味があるのだろうか。


 今は、聞くべきことを聞こう。


「“呪縛”……お前はそれを意思や記憶を投影する力のように語った……だがそれはおかしい」


「ワウ?(おかしいんすか?)」


 そうだ、それがずっと引っかかっていた。普通の者ならば「自分には理解できない凄い力」で済まされるかもしれないが、私はこのアステリムにおける『世界原理』を理解してるが故に疑問を持った。


「この世界に存在するすべての魂は世界神の下に還る。そして、その先の次元・・・・・・には人間である限り絶対に干渉不可能のはずだ」


 人間の死後、その意思……つまり魂はどこに向かうのか? この世のすべての命は元を辿ればすべて世界神のマナによって構成されている。そしてすべてのエネルギーは循環する……マナも、命も。

 その流れを人の目で見ることはできない、知覚感覚がまったく異なる世界だからだ。なので当然干渉することもできない。


 私の生み出した忌むべき呪い『永遠に終えぬ終焉トゥルーバッドエンド』も元はといえばこの世界に繋がりの線を辿らせることでそのエネルギーを確保していた。

 "死"を超えたエネルギーを利用していたのだ。

 ……だが、かといってその力を利用するために直接その次元に足を踏み入れたわけではない。生きている人間の想いを利用してその上澄みだけを利用するものなだけだからな。


(だからこそ、疑問がある)


 ダンタリオンからディーオへの意思の投影はまだ生きている人間同士のものだからいいとしても、ディーオの母親……つまり死んだ人間の意識を投影するには死後の次元に深く干渉しなければならないはず。

 それを可能にする“呪縛”とは何なのか。


「な、なぁリィナ……お前理解できるか」


「わ、わかんない……」


「私もそれなりに知識は蓄えているのですが……やはりゴールドランクの魔導師ともなると次元が違うというところですかね」


 三者三葉にいろいろと言ってくれるが、おそらくこの話を理解できるのは私以外ではドラゴスやファラのような前世の仲間だけだと思う。

 だが、目の前のこの男は……。


「教えてもらおう」


「……いいだろう。“呪縛”とは、一つのマーキング……印だ。その印は初代皇帝の"思想"を女の体に埋め込むことにより、その印を与えた者の子を宿した時にその"思想"を子に植え付ける」


 そうすることで次代の皇帝も初代皇帝の意思をずっと持ち続けるようになるということか。


「な、なんか意気込んで聞いた割にはよ……今まで予測してたことが当たったっつー感じで拍子抜けだな」


 確かに、それはあるかもしれない。もっと恐ろしい何かがあると思ったのだが……。


「皇帝の……第一子……」


「ん?」


 ボソリとサロマが呟く。皇帝の第一子……そうだ、代々の皇帝はすべて先代の皇帝が一人しか作らない第一子の男児のみだったと……。


「呪縛の力は種の状態からもその意思を反映させる。だからこそ、種自身が「男児として生まれるため」に行動する」


「な……」


 少しゾッとした……そんな状態からすでにその力が働いていることに恐怖を覚えてしまう。

 こんな形で帝国の不思議な歴史の答えが聞けると思ってもいなかったが。


「だが、我の代で予想外の出来事が起きた」


 そう言いながらディーオを睨む。やはりな……もし今のダンタリオンの話が本当ならばディーオは初代皇帝の思想と意思を持っていなければおかしい。


「これに関しては我にも理解の及ばない範疇だ。だからこそ、我は次の手を講じた」


「サロマか」


 先ほどの話も十分に驚かせてもらったが、本番はここからだ。たとえ同じ遺伝子……肉体を用意したとしても、それが100%同じ人間になることはない。

 だが、ダンタリオンは呪縛の力でそれができると言った。


「世界神の深層である死後の世界には絶対に入れないはずだ」


「……そうだ魔導師、貴様の言う通りだ」


 こいつ……やはり世界原理、つまり世界神の存在について知っているのか。そんな人間がこの時代にいるのは驚きだ。

 ……が、それでもダンタリオンは私が調べた限りでは普通の人間とそう変わり無い存在であることは確かだ。

 それが死後の世界に干渉することは絶対にできない。


「もし、死後に向かう場所が一つでないとしたら……どうする」


「……あり得ない、たとえどんな存在だろうとこの世界で生まれたからには世界神のマナの影響を受け、最期には下へ還る」


「貴様の言うことは正しい。……だが、“呪縛”にはできる。我が憂鬱の繋がりを通して、魂を引きずり込むことがな」


 ……駄目だ、ダンタリオンの説明が理解できない。本当に死後に世界神の及ばない次元が存在するというのか?


(固定観念に囚われるな、あらゆる仮説を立て考えろ。そもそも死後の世界というもの自体が私の理解以上の存在だ。死した人間は魂も意識も世界神……つまり世界の核に溶け……て)


 そうだ、私は前世でそう結論付けた。人の魂と意識は溶けて次のエネルギーになるのだと。


(だが、本当にそれだけだろうか……)


 そして、私は自分の体を見る。……そうだ、私は。


「……どうやら、貴様にも心当たりがあるようだな」


「っ! どういう意味だ」


 ついカッとなってダンタリオンを掴み上げてしまう。冷静になれ、今ダンタリオンに当たったところで何かが変わるわけではない。

 もっと情報を引き出してから……。


「そろそろ終わりだな……」


「……なに?」


 護送の準備が整うまであと少しというところで、近くにいた私だけがそのか細い声を聞き取ることができた。

 その言葉がどういう意味なのかとダンタリオンの顔に向き直る……が。


「うわあああ!」

「そ、そんな、陛下……」


 ダンタリオンの口からはいつの間にか大量の血液が流れ出ており、次第にその周囲を赤く染め上げていく。


 どういうことだ!? とにかく早く回復の魔術を……。


「無駄なことはやめておけ、魔導師よ。そんなものはこの“呪縛”の力の前には無意味だ」


「呪縛だと!? どういうことだ!」


 先ほど明かされた呪縛の恐るべき効力については聞いたが、この現象はいったいどういうことだ。


「ごふっ……なぜ歴代の皇帝が帝位を渡した後、人知れぬ地に身を隠すかわかるか?」


 それは"死"の前の最後の言葉。もはやどうあがいても助からないと確信したその男の言葉を聞くことしかできないとこの場にいる誰もがそれを理解してしまっている。


「それはすべて……この呪縛の力によって自害するためだ。その役目を終えた時、この力は還らねばならないからな……」


 帝国のもう一つの謎。その秘密が今こうして目の前で起きている、ダンタリオンのその身をもって証明されていく。


 もう数分も持たない……だが、聞きたいことはまだ山ほどあるんだ!


「なら教えろダンタリオン! その“呪縛”の原理はなんだ! この世界に現存するどのような力を使っている……言え!」


 それを聞いたダンタリオンは口元をニヤリと歪ませ……。


「そんなものは存在しない。この……ぐう」


「なんだって!?」


 くそ、声が掠れてて最後の方が聞き取れなかった。存在しないだと……そんな馬鹿な、ならダンタリオンはどうやって。


「我が命……我が憂鬱は志半ばでその御許へ還るだろう。だが、これでいい、その事象の流れに身を任せよう。後は虚飾と写し身に……任せるとしよう……ハハハハハ!」


 口からだけでなく、その他の傷口からも血が溢れ出し始めている。だというのに、ダンタリオンはその体を立ち上がらせ、天を仰ぐ……それはまるで神にその身を捧げるような姿で。


「……父……上」


「ディーオスヘルム・グロリアス・ノーブル……我らが事象の流れから外れし者よ。認めてやろう、貴様が次の皇帝となることを……だがその先に待つのは修羅の道だと言うことを覚えておくがいい! 我は御許にて貴様が作るヴォリンレクス帝国の事象を見ているぞ!」


 溢れ出る鮮血がまるで地獄の業火のように湧き上がる。……そして、それが一斉に降り注ぐと共に……ダンタリオンの体はその力を失いゆっくりと倒れていく……。


「ディーオ様……」


「まさか……こんな形で認められるとはのう……」


 父の後を追い続けた……いずれは父の口から次期皇帝に相応しいと言ってほしかった。

 だがディーオはその夢を捨て父と決別した。そして、その先に……自分が一番聞きたい言葉があった。

 皇帝の証であるステュルヴァノフを持ち、現皇帝からその存在を認められた……その死と共に。


「せめて、丁重に葬ってやろう。母上の近くに……」


 それが正しい行動なのかはわからない。しかし、ディーオは帝国の民にとってはそれがいいと判断したのだ。

 今回の件も皇帝と皇子の衝突ではなく、もっと別の……もっともらしい理由で皇帝の死が語られるかもしれない。


 嘘で固められた帝国……ヴォリンレクス。だがいつか、誰もにその真実を打ち明けられる日を目指して。


「……戻ろう! 民が待っておる!」


「おう!」

「はい!」






 そして後日、ディーオの正式な王位継承が行われることとなった。


「皆の者、本日をもって余がこの帝国の正統な皇帝として君臨する! これからは国を守り、民を守り、そして世界を守るためにこの帝国をもっと素晴らしいものにしようではないか!」


「「「オオー――――!!」」」


 歓声が沸き起こり、これで本当にディーオが皇帝になったと認められたのだ。

 ……まぁ、まだまだ頼りないところがあるのは誰かに助けてもらうしかないだろうが、誰かと共に成し遂げる……それもまたディーオの王としての魅力というものだろう。


「そういうわけでカロフ、リィナ……これからもよろしく頼むぞ!」


「いやだから俺らはだなぁ……」


「カロフ、私達の国の王様からは「新しい皇帝を助けてやりなさい」っていうお達しがきてるんだから諦めなさい」


 どうやら、カロフ達もまだまだここで頑張っていくようだ。


「ま、まぁ、なんでしたらわたくし達が色々と助力してあげてもよろしくてよ……?」


「はっ! お嬢様のおっしゃる通りです! ……だから騎士カロフよ、いつでも相手になってやるぞ!」


「鼻血垂らしながら言ってんじゃねぇ!」


 新しい人間関係も構築されていって……ますます騒がしくなりそうなこって……。


「賑やかなのは良いことなのだ! うむ、余らならこれならどんな困難があろうと問題ないのだ! のう、サロマ!」


「はい、わたくし達には……その存在を見てくれる人達がいるのですから」


(この国は……もっと強くなっていくだろう。それが世界に認められている限り)


パシャ!


 私はそんなこれから先の未来を楽しみにしながら賑わうディーオ達をスマホの写真に収めた。

 そこには立派に皇帝を務めながらも多くの民に慕われるちょっとおバカな者達の姿が……写っているようだった。


「そういえば……魔導師殿は第六大陸に行くのが目的だとか?」


 写真を見ていると、後ろからパスカルさんに話しかけられる。

 そうだった……ダンタリオンの残した謎が気になりすぎて忘れていたが、私がここにやってきた本来の目的は新魔族の本拠地である第六大陸へと渡るための交渉だった。


「なんと、そうだったのかーっ! なら皇帝権限で今すぐにでも……」


「ディーオ様、いくら皇帝でもそんな無茶はできません」


「なにーっ!? 駄目なのかーっ!」


 一瞬私もそんな簡単でいいのか……と思ったが、余の中そんな上手くいかないか。


「魔導師殿、安心してもらおう。いつになるかはわからないが、そう遠くない内に行けるよう手配を進めるので」


「お、マジか。たのんますぜ!」


「ワウン!(やったっすねご主人!)」


 よぉーし! これで私の本来の目的にも近づいたわけだ!

 これでやっと日本に戻る手掛かりがつかめるかも……いや、絶対に手に入れて見せる。


「てなわけで、次の目的地は第六大陸『シャトー』だ!」


 ま、いつになるかわからんけどな!





第6章 最前線の帝国 編   -完-






これにて6章本編完結となります!ここまで読んでくださった方々、お付き合いくださり本当にありがとうございました!

この小説を書き始めた当初は正直ここまで進められるとは思ってませんでした…すべては応援して下さる皆さんのおかげです(つД`)


さて、次の章を始める前に端麗の6章の人物紹介とちょっとした後日談を挟みます。

最後に…ブックマーク、感想、評価、質問などなど、皆様の応援一つひとつがこの物語を進める力になります!

これからもこの小説を読んでくださるという方々、これからもよろしくお願いいたします(`・ω・´)

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