125.5話 無知と無垢の代償
ミネルヴァの過去のお話
わたしは……何も知らなかった……。今考えれば、自分がどれだけ無垢で無知な愚かな人間だったか理解できる。
けれどそれを理解するのは、とても……遅すぎた。
「まぁ! 見てくださいませお母さま、庭園のバラがこんなにも美しく咲き乱れておりますの!」
あの頃の、何も知らない……何も知ろうとしない愚かな自分が無邪気に笑っている。
小さな箱庭だけが世界のすべてだと思っている、今思い出すとあまりにも滑稽なお姫様……。
「ネル、淑女がそのようにはしたなく走ってはいけませんよ」
そして、わたしをこの世界に閉じ込め縛る諸悪の根源。
……いや、悪だと感じているのはわたしが思うところがあるからであり、親はわたしに対して悪意を持ったことなど一度もなく、悪気など微塵も持ち合わせていなかった。
優しさしかなかった……そしてわたしはその優しさに何も疑問を持つことなく受け入れていた。それは家族なのだから、当然のことなのかもしれないが……。
「お母さま、お腹の具合はいかかですか?」
「ええ、順調よ。ネルは弟か妹ができるのがそんなに嬉しい?」
「はい! だって家族が増えるんですもの」
我ながら笑える。綺麗で艶のある黒髪を腰まで伸ばし、煌びやかな衣装を身に纏うお姫様の姿が昔のわたしだと言ったら誰が信じるだろう?
何も疑うことのない自分……疑う必要のない平和な箱庭のお姫様なのだから当然だ。
「ほらネル、こっちにいらっしゃい。お茶にしましょう」
「はい、お母さま」
豪華なお城に豪華な装飾、わたし達の言うことならなんでも聞く従順な使用人や兵士。贅沢な食事に毎日開かれるお茶会に夜会。
何一つ不自由のない、普通ならば誰もが羨む夢のような毎日。
「あら、それは何をしているのネル?」
「これですか? お腹の子のためにわたしも何かしてあげたくて……。ハンカチに刺繍を縫っておりましたの、まだまだ未完成ですが」
「そう、ありがとう。ネルは刺繍がとても上手だから、きっとこの子も喜んでくれるわ」
裁縫なんて出来てなんになる……なんて今では思っていながらも体はそれを覚えているものだなんてね……。そこだけは、この頃のわたしに感謝しておきましょう。
「お母さま、わたし今とても幸せですわ」
「そうね、私もこの国に生まれてとても幸せだわ。だからこの子もきっと幸せになれるわ」
その国は……この大陸に存在した唯一の国家。
この大陸はどこも厳しい環境で国を建ちあげようとも酷い災害や凶悪な魔物によって滅んでしまう。
この頃は知りもしなかったが、この国はわたしが生まれるずっと前に滅びの危機に瀕したが、一人の龍がそれを食い止め国は守られた。
その龍はその後も国と友好的であったが、世代が進むにつれ信頼は薄れ、人族達はその龍を国から追い出したという逸話がある。
けれど、その話はねじれにねじ曲がって、この国の王族は『内側から侵略を企んでいた悪竜を打倒した誇りある一族である』と称されるようになった。
……悪竜、なんという皮肉だろうか。今わたしの隣にいる"あいつ"もそう呼ばれ恐れられていた怪物。そんな悪竜と共にいる誇りある一族の一員であるわたし……滑稽以外の何物でもない。
「ええ、わたしはこの国の王族に生まれたことをとても誇りに思いますわ」
この国の本当の姿も知らずに本気でそう思っていた。
だが、その幻想はそう遠くない内に壊されることになる。
いつも通りの朝、いつも通りの贅沢三昧の日々、いつも通りの優しい家族に囲まれまた今日が過ぎていく……そう、信じて疑わなかった。
お城のテラスから見える、あの赤黒い炎に包まれた無残な街を眺めるまでは……。
「なに……これ……?」
それを知ったのは、わたしが昼過ぎに外の空気を吸おうとテラスへ出てきた時だった。
刺繍にのめりこんでいたためずっと自室に閉じこもっていたので外の様子に気づくことはなかった。
だがおかしかった。こんな緊急事態ならば城の兵士や使用人が知らせに来ないわけがない。
父と母は無事だろうか? 部屋から出て急ぎ父のいるであろう玉座の間へと向かう。
しかしそこで気づくのは、街の騒ぎとは対照的に城の中が異様なほど静かだということだ。
「どうして……なんで……」
誰もいない、出てくる気配もない。わけのわからない恐怖に涙を流しながら走った。
そしてただただ願った。父が、母が、そして未来の自分の弟か妹がどうか無事でありますように……と。
そしてついに辿り着く、自分の"家族"がいるであろう場所に。
……しかし、その場にさえ誰もいなかった。あるのは……部屋の中心で轟々と燃え盛る街を覆いつくしたのと同じ赤黒い炎だけ。
「どうして……だれもいないの……」
「それはね、あなたが最後の一人だから」
もはやすべての気力を使い果たし立ち尽くしていたわたしの背後から冷たい……とても冷たい声が広い部屋に響いた。
もう恐怖や悲しみの感情がごちゃ混ぜになり混乱していたわたしは、ゆっくりと後ろを振り向くしかなかった。
そしてそれが、後に数百年続く悪夢のはじまりだとも知らずに……。
「だれ……?」
城の中では見たこともない人物。当たり前だ、この城は……いやこの都市には人族しかいない。
なのにその人物の容姿は、自分とは違う青い肌に頭に角、背中に羽の生えた、異種族。
話だけは聞いたことがある、しかし父にも母にも他種族とは関わらないよう言われてきたので見るのは初めてだった。
(青い肌に角と羽……。世界を騒がす新魔族とは違う、"旧"魔族?)
なぜそんな人物がここに、わたしの後ろにニヤリとした笑みを浮かべながら立っているのか理解できなかった。いや、この状況こそがすでに理解の範疇を越えているのだが、すでにわたしの頭の中は深く考えることが出来なくなっていた。
「可哀想なお姫様……。すべてを無くして、すべてを奪われ……それでも世界の残酷さを理解できない……」
「なに……いってるの……?」
もはや壊れたおもちゃのように、会話ができるようになった幼子のような受け答えしかできなくなっていた。
そう、わたしは何も理解できていない。世界の残酷さも、突然訪れるどうしようもない理不尽さも……。
「お父さま……は? お母さま……は?」
「言ったでしょう、あなたが最後の一人だって」
「どこ……どこ! どこなの!」
狂ったように家族を……昨日まで確かに感じられていた温もりを求めて言葉を吐き出す。
しかし目の前の女魔族はそんなわたしの姿を見てとても、とても嬉しそうな表情をしていた。
「お父さまとお母さまはどこ! 答えてよ!」
なぜだかそれに腹が立ち、再び感情を言葉に乗せてぶつけた。
たとえこの女が知っていようが知っていまいが、感情のはけ口はそこにしかなかったから。
だがわたしが感情をぶつける度、その女は嬉しそうに体を震わせていた。
「うふ……うふふふ……」
「何が可笑しいの! あなた、お父さまとお母さまがどこにいるのか知っているの! 答えなさいよ!」
「ええ可笑しいわ……。だってあなたが必死に探しているお父さまとお母さまなら……そこにいるじゃない?」
「え……?」
その言葉に、一瞬冷静になる……なってはいけなかったのに。
女の視線の先、そこにあるのは先ほどから止まることをのない異色の炎だけ。
「よく、目を凝らして御覧なさい……」
虚ろな意識のままで再び炎の中を覗く。
認めてはいけない、これ以上見てはいけない……。そう感じながらも炎をじっと見つめていると、炎の中で何かが燃えているのがわかる。
複雑な形のものが重なるように積まれて燃えている……大きな塊から長いくの字の棒が二本、それより短く細い棒が二本、丸い塊が一つ……。それと同じものがいくつも重なっている。
「あれは……なに?」
「まだわからない? それとも認めたくない? あれはね……」
やめて……それ以上言わないで。
「このお城にいた人達ぜぇーいん。最初に放り込んだ人達はもう大体燃え尽きちゃったけどね」
「……」
言葉が出てこない……何を口に出せばいいのかわからない。
朝朝食を用意してくれたコックも、鍛錬場で訓練していた兵士も、いつも笑顔を返してくれる使用人達も……全員、あそこに?
「ほら、もっとよく見て。一番上の方……最後に入れたからまだそこそこ形を保ってると思うから」
塊の一番上に力なく首を上げて見上げる。
そこには下の真っ黒に焼かれた人々と同じ……いや、揺らめく炎の中に微かに見えたあれは……。
「あ……あああ……――!」
もはや声にならない絶叫を上げ、思考が絶望に染まる。
黒ずんだ指先にはめられていたのは母がよく自分を撫でてくれていた時にいつも目に入っていた指輪であり、皮膚が焼け焦げ骨が燃え尽くされようとしている頭骨には国王である王が常に身に着けていた王冠が見えていた。
そしてこの時すべてを理解してしまった……。ああ……もうこの城、いやこの国にはわたししか残されていないのだと。
今日この日、わたしはすべてを失った。
「ああ嬉しい、これであなたは私と同じ絶望を知ったのね。何の罪もなく、何の理解もないあなた……。ああ、これからが楽しみ! この先あなたの幸せが私の苦しみになって、あなたの苦しみが私の喜びになるの! 次にあなたが幸せになる日を……私はずっと待っているわ」
その女は意味深な台詞を最後に消えた、この街の赤黒い炎と共に。
そして、絶望したわたしだけが残された……。
これが、悪夢のはじまり。
そう、ただのはじまりでしかなかった……。
あれから、数年の時が経った。
あの日、死臭のする街を放心状態で歩き街を抜けた。もはや何もかもがどうでもよく、もしかしたら死に場所を求めて彷徨っていたのかもしれない。
やがて力尽きたわたしは野盗に連れ去れた。
……彼らに酷いことをされた挙句ゴミのように捨てられるのだろう。それでも別に良かった。
けど、目を覚ますと知らない天井があり、柔らかなベッドの上で眠っていた。
どうやらわたしは助けられたようで、数日昏睡していたらしい。
ベッドから抜け出すと朝食が用意されており、最初はどうしていいかわからなかったが、家主から食事を促されるとわたしはボロボロと涙を流しながら食べ始めた……らしい。
これが、わたしとお師様との出会い。
「わたしに魔術を教えてください」
お師様と暮らしていく内にわたしの心は徐々に整理されていき、自分の置かれてた状況を理解できるようになっていた。
そして、わたしがはじめに考えたのが……復讐だった。
なぜ国民が、親しい者が、父が、母が殺されなければならなかったのか。それを思うとあの女への怒りが収まらない。
心の中で何度も「殺してやる」と考えた。だが自分にはそれを実行する知恵も力も持ち合わせてはいない。
そこでわたしは魔術を習得することを考えた。
お師様は亜人のはぐれ魔導師のようで、しかもそこらの魔導師なんかより格段に秀でた力の持ち主だというのは暮らしていてわかっていた。
「二度と昔の自分には戻れないよ……」
「覚悟の上です」
それから、わたしの復讐のための特訓は始まった。
お師様は厳しかった……泣き言や妥協は許されなかった。胃液を吐き気を失おうともその手は緩まることを知らない。
けれどわたしは耐えた、あの女に復讐を果たすまでは……すべての無念を晴らすまでは。
そらからさらに月日が経ち、わたしが成人を迎える頃。
わたしはお師様にも認められるほどの使い手となっていた。
そんなある日、わたしが成人を迎える日にお師様対して今まで育ててくれた恩を返したいと悩んでいた。深い事情も聞かずにわたしを受け入れてくれたお師様に……。
そんな中、こっそりと森の奥へ入っていくお師様を見かけた。
そこはお師様から近づいてはいけないときつく言われていた場所であり、今になってわたしは興味を抑えられずに跡をつけて行ってしまった。
そこには、大量のお手製の墓があった。
「これは……」
「見られてしまったか……」
いつの間にか背後にお師様が立っていた。
その顔は今まで見たこともない表情で、怒っているようにも悲しんでいるようにも見えた。
「これはね、同族の墓だよ。お前の国の他種族狩りで犠牲になった……ね」
「え?」
他種族狩り……確かにお師様はそう言った。
なんてことはない、お師様は最初から知っていたのだ。わたしが数年前に一夜で崩壊した亡国の姫だったことを。
そしてここでようやく知ることになる……わたしが知らなかった祖国の"裏の顔"を。
「お前の国はそれはそれは熱心な人族主義国家だったよ。異分子を見つけては狩り……あまつさえそれを楽しむような。自分の一族もそうだった……自分を残して全滅さ」
それは、自分の信じていたものが音を立てて壊れていく瞬間だった。
あの時の優雅な暮らしも、豪勢な食事も、笑い合う街の人々も、使用人や兵士も、父も、母も……すべてがその犠牲の上に成り立っており、それを知らないかったのは小さな小さな自分のような子供だけだったなんて……。
ならばなぜお師様はわたしを助け育ててくれたのか……その答えはすぐに聞けた。
「はじめは殺そうと考えたさ……だけどそれだけじゃ生ぬるいと思った。あの国の生き残りであるお前を、信じ切らせ無残に裏切って殺すつもりだった」
そう、わたしが復讐を願ったように、お師様もまた同じように復讐のためだけにわたしを育てていたのだ。
わたしは、お師様と戦う覚悟をした……まだ、ここで死ぬわけにはいかなかったから。
けれど、その時は訪れなかった。
お師様はその場でびざをついて崩れ落ち、涙を流し始めたから……。
「お師……様?」
「復讐の……はずだった。なのに、お前に情が移ってしまった。復讐に生きるお前を見て自分は……」
お師様は優しい人だった。
すべてを無くしたわたしを他人とは思えず、いつまで経っても殺す決心がつかなかったと。
その姿を見て、私の中にある復讐の心も微かに揺らいでいた。このまますべてを忘れお師様と静かに暮らしても良いのではないか? と。
それからわたしとお師様は和解し元の関係に……いや、それ以上の関係と言えるようになった。
そして、わたしの成人日。ベタかもしれないがお師様に花束を贈ることにした。
魔力を感知して色が変化する不思議な花だ。わたしが触れると最初少々黒ずむが、お師様のことを考えると真っ白に変わった。
お師様の喜ぶ顔が見たくて速足で家に戻る。過去を忘れ、これからの未来を夢見てその扉を開けると……。
「あら、遅かったじゃない。もうちょっと早かったら、まだ若干動いていたのに。残念ね」
血まみれの部屋で、あの女があの時と同じ笑顔で笑っていた。
わたしの手からは積んできた花が黒く染まりながら散らばっていく。
「お師様……」
もう動かない肉の塊……腹は切り裂かれ内臓が飛び出している。
部屋の中は戦闘の跡と飛び散った血液でどこもかしこも赤黒く染まっていた。……まるで、あの日見た光景の再現のように。
「私嬉しいわ。あれから苦しみを乗り越えてまた幸せになってくれたのね」
つかみかけ始めた幸せはもうそこにはない。いや、本当は最初からなかったのかもしれない。
この女に、目をつけられた瞬間からわたしに訪れる幸せはすべて絶望に変わるのだから。
「ああああああああああ!!」
だけどわたしもあの時とは違った。お師様の下で修業し、常人をはるかに上回る魔力をその身に宿している。
父の、母の、そしてお師様の無念を晴らすために私の体は弾かれたように飛び出していた。
が……その渾身の一撃は受け止められ、わたしの体は吹き飛ばされていた。
「ああ、最高よ! そんなにも私を憎んで想ってくれるのね!」
「殺す! 殺してやる!」
あの女を殺す。もう頭の中にはそれしかなかった。
「私があなたを想い、あなたも私を想ってくれる……。それが条件」
それがいけなかった。しかしもはやこの感情を止めることはできなかった。
それによって、この悪夢が永遠に続く絶望に変わることになるなんて。
気づいた瞬間には、わたしは氷の剣を構えて再び跳びかかっていた。
「この力の名前は私にもわからないわ。けどね、これで私達は永遠の苦しみを共有し合うの!」
「死ねええええええええ!」
わたしの剣が相手の胸を突き刺した……が、それと同時にわたしの胸を貫く冷たい感触……。
女の手にはいつの間にか剣が握られており、その刀身は確実にわたしの胸を……心臓を貫いていた。
「あ……! が!?」
痛くて、苦しくて、辛かった。でも満足だった、あの女を殺せたから……。
そう、その時まではそう思っていた。
「そんな満ち足りた顔をしないで。……お楽しみは、まだ始まったばっかりなんだから」
その言葉を最後に、意識は暗転していった。
そして、心臓を貫かれたわたしはそのまま絶命……しなかった。
わたしは意識を取り戻した。そして、その直後に信じられない光景を目の当たりにする。
……胸に、剣が刺さったままだった。
「ああっ! ぐっ!? なん……で……」
痛みはある、なのに死なずに意識がある。
混乱する頭で今までのことを整理した。あの時、わたしはあの女とさし違いになって……。
「あの女の死体が……ない」
あるのはお師様の死体だけ。その姿に悲しみの感情が湧いたが、それは瞬時に吹き飛んでしまった。
お師様の死体がもたれかかっている壁に、意識が落ちる前にはなかった、大きく書かれた血文字があったから。
そこには……。
あなたの幸せを願っているわ
最悪の、考えが浮かんだ。もしあの女も自分と同じように胸を貫かれても死なない体になっているのだとすれば。
生きている……それだけで、再び憎しみの感情が芽生える。
血文字には、続きもあった。
また会いましょう、私のかわいいミネルヴァちゃん
覚えておいてね、私の名前は……
わたし剣を抜きながらその名前を深く胸に刻み込ませた。
必ず、貴様を消す……そう誓った。
けれど、運命は残酷に過ぎていった。
あの誓いから何年、何十年、何百年経っただろう……。消すといっても解決策もなく、わたしの心も揺れ動く。
その度にあの女は現れ幸せを壊していく。
信じられる人、利用しようとする人、利用してやろうと思った人。時を重ねる度にわたしは様々な人と関わった。
「なんて悲しい人だ。どうか君の救いになりたい。君が嫌だと言ってもこの気持ちは変わらないよ」
死んだ
「あんたみたいなバケモノを雇ってやるんだ、感謝しな。なに、役に立てばその分報酬はやるよ」
死んだ
「たとえあなたに騙されていたとしても、私はあなたの友達です」
死んだ
わたしに関わった人間は皆死んだ、殺された。例外はない……あの女は必ずわたしを見ている。
姿を自在に変え、わたしが自分が幸せだと感じてしまった時……どこからともなく現れすべてを消し去る。
だから、もう誰にも心は開かない、近づく人間はすべて利用する。そう思っていたのに……。
「ミネルヴァ、この件は私も無関係ではない。出来る限り協力させてもらうぞ」
「未来の妻のために一肌脱ぐというのも良き夫としての勤めとも言えよう!」
なんで、わたしの心を惑わすんだろう。また巻き込んでしまうかもしれないのに。心の底から拒絶できない……こんな弱い女にどうして構うの。
……自分でもわかってる。本当は誰かと繋がっていたい、支えてほしい。
けれど……そんな弱いわたしだからこそ。
「やったー! それじゃあ……やくそくのあかしにこれあげる!」
また、あんな悲劇が……始まってしまったんだ……。




