第5話 牛若の旅
1165年―
牛若は清盛の家人の平盛国邸で清盛の子の知盛、重衡らと共に相撲をとったりと、兄弟のように楽しい時間を過ごしていた。そこへ盛国と共に現れ、牛若達の様子を見た清盛の長男の小松殿こと平重盛は源氏の血を引く牛若に何らかの処分を与えるよう清盛に進言する。
「父上、左頭馬義朝の子・牛若もそろそろ兄の今若、乙若と同じ年頃になってまいりました」
「うむ、そうか・・・それで?」
「牛若も兄達と同じように出家させるか、はたまたご処分をいただきたい」
「いずれ、どうするかは決める」
「いずれでは、いかがなものかと」
「いかが、とはどういうことだ?」
重盛は危惧していた、あたりに散っている源氏の武者達が京に源氏の子、牛若がいると知ればどういった行動に出るかわからなかったからである。
牛若は盛国邸から母の常盤と住む七条の館に帰る為に都を歩いていた。そこにはいろいろな物があり、牛若の興味をそそるものがいっぱいあった。
するとそこへ荷駄を積んだ暴れ馬が牛若の方へ駆けてくる。人々が逃げる中、1人の少女が馬に気付かず道の真ん中に立っている。里親が少女にたどり着く前に転んでしまい、それに気付いた牛若は咄嗟にうつぼを突き飛ばし、馬の前に両手を広げて立ちはだかった。
しかし馬は衝突寸前に止まり、馬に積まれた荷物がが落ち、豆などが道に散らばる。それに駆け寄る浮浪者たちを追い払っているのは持ち主の五足と烏丸。後に牛若の大事な友人となる二人である。
「お前も盗人の手先か!?」
と言って五足は牛若に殴りかかろうとするが少女の里親と烏丸が止めに入り、五足は馬を連れて立ち去る。
二人が去った後、牛若は後を追い、再び前に現れた。
「私は、決して盗人の手先ではない!!」
「オレも気ー立ってたんや、そう尖がるなや・・。しかし、お前なかなか骨があるやないか、名は?」
「牛若」
「牛か、オレは五足、こいつは烏丸や」
こうしてこの二人と牛若は友人となるのであった。
清盛は宋から来た客人を招く席に、重盛と3男の宗盛に同席するかを尋ね、即座に同意する重盛に対して、陰陽師に占ってもらった上でと答える宗盛に怒る清盛。
「宗盛!!貴様それでも平家の棟梁の子か!?」
「うっ・・・」
「父上!!」
重盛はその場を収めさせ、清盛が去った後、自分は清盛に嫌われていると訴える宗盛を優しく諭していた。
その後常盤邸にて、宋から招いた客人を前に清盛は屏風絵を披露していた。しかしそれを開いた瞬間、屏風絵には墨で書かれた落書きがあった。その場に常盤と牛若が呼びつけられる。
「これは、お前が書いたのか牛若?」
「はい」
「申し訳ございません、何卒お許しを」
常盤が必至に謝る中、牛若は何も臆することなく認め、逆に清盛に屏風絵に書かれた絵について尋ねる。
「これは寺のようだったっり、屋敷に見えますが、この絵が何なのかわからないのです」
「これは、海だ」
牛若の態度に好感を持った清盛は、怒ることなく屏風の落書きに自ら線を加えて船の絵を描き、牛若に海や船や港、貿易について語る。他の国々との交わりが増え、「新しき国」ができる。清盛は牛若に熱い目で語った。これには牛若も感動し清盛をさらに尊敬するのだった。
しかし、牛若に対する清盛の態度に不快な思いを持つ宗盛。この時から宗盛と牛若にはさらなる亀裂が入るのだった。