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第3話 友の子達

「子供達の年は?」


「今若は8歳、乙若は6歳、この牛若は去年生まれたばかりにて・・」


「ふーむ、お前は命に代えてもと言うが、母亡き後の牛若はどうするつもりだ?」


「そ、それは・・・」


「まあよかろう、今若、乙若は仏門に入れ、牛若は幼少ゆえ常盤が引き取り、ワシの館に住め」


「ありがとうございます」


常盤は何度も何度も頭を下げた。多少その意見に不満を持った者もいたが、清盛の決定したとゆえ反論するものはいなかった。その後すぐ常盤は今若、乙若、別れることになった。2人は常盤、そして弟・牛若とは会いまみえることはなかった。



「殿」


「ん?」


「左馬頭義朝の遺児3名すべて、それに源頼朝までもをお助けになるとは・・・」


「何か不満でもあるのか、盛国?」


ビクッ!!


清盛の威圧ある言葉に声を失う盛国。長く仕えている盛国でさえ、ただ目の前にいるだけで恐怖を感じさせる清盛。


「相手はたかだか14、8、6、1歳、それにワシに「力」があることは知っておろう」


「ははっ」


清盛の言う「力」とは、本来この世の人間に備わりし力。武士だけでなく、女子供までもが生まれつき持っている。しかしたいていの者はその力を使用することなく世の戦いに挑む。この力に目覚め、駆使する者はそうそういない。故に使いし者はこの世の頂点に君臨できる可能性を持つ。現在でも知られている属性は風、林、火、山、雷、霧、大空の7つである。その中でも清盛は一番破壊力のある「火」の属性の力を持ち、使いこなせる状態にある。この力で平家の棟梁になり、保元の乱、そして平治の乱にて見事勝利を収めたのだ。

保元の乱では共に戦い、仲間であった源義朝、平治の乱で敵となり、一騎打ちの末勝利した。


「義朝、なぜお前は反旗を翻した・・・共に源平の世を・・・武士の世を作るのではなかったのか・・・」


かつての仲間を滅ぼした清盛の心中はいかがなものであっただろうか。しかし、清盛の目に涙はこぼれなかった。



5年後―


「ねえ、まだですか?」


「もう少し待て牛若」


牛若は無邪気で元気な少年へと成長していた。平家の子供達に人気な竹とんぼを清盛が牛若のために作ってくれているのだ。牛若はまだかまだかと心をワクワクさせながら清盛をじっと見ていた。


「これ牛若、わがまま言うんじゃありません」


「はーい、母上」


笑いの絶えない風景、他人から見れば仲のいい家族も同然だった。


「そら、できたぞ」

「ありがとうございます」


牛若はすぐにそれで遊び始めた。クルクルと回しては飛ばし、夕暮れまでずっと遊んでいた。途中清盛の4男の平知盛や5男の平重衡も合流し、共に行動していた。そして再び清盛と常盤が子らの様子を見に戻ってきた。


「「父上!」」


「おお、知盛、重衡、お前達も来ていたのか」

「はい!!」


「父上!!」


「なっ!!!」

思わず牛若の発した言葉に声を張り上げてしまった常盤。


「これ、控えなされよ」

「かまわん、楽しいか牛若」

「はい」


笑顔の清盛、知盛、重衡、そして牛若。ただ一人常盤だけは表情が曇っていた。常盤はどれだけ伝えたかったか、その人は実の父親ではなく、その父を殺した張本人であり、兄と慕う知盛重衡兄弟は源氏の敵であるということを・・・。


(ふっ、牛若はあの頃から全然変わらんな、あの時もワシのことをいつも父上、父上と、言っておったな・・・)



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