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第2話 運命の子

1159年12月―


「やはり平家と源氏はぶつかり合う、もはやこの戦いは止まらねえ」


「そんな・・・」


小屋の中で源平の合戦の事を話すのは背の高い年若き青年と子を2人連れた女性。青年の名は「鬼若おにわか」、後の武蔵坊弁慶むさしぼうべんけい、そして義朝の子、今若、乙若、そして牛若の母・常盤。


「常盤殿、万が一義朝殿が敗れた場合、子供達は危険だ」


「鬼若殿、そうなる時は、私は・・・うっ」


「!!!」


突然お腹に痛みが走った。常盤は苦しそうにおさえる。


「まさか、義朝殿の3人目の子が・・・」


痛みに耐えながら常盤は一生懸命に出産した。鬼若も常盤の出産に立ち会い、しっかりと見守っていた。そしてついに「運命の子」は生まれたのだった。


「常盤殿・・」


鬼若は取り上げ、産湯につかわせた赤ん坊を常盤の横に置いた。


牛若うしわか・・・」



1160年、平治の乱にてついに武士の二大勢力・平家と源氏はぶつかった。そして源氏が敗れたことを知った常盤は3人の子を連れ、義朝に会うため都へと急いだ。牛若を見せ、子供達を頼まれ、再び鬼若の住む小屋へと舞い戻った。


「まさか、源氏が敗れるとは・・・」


「仕方のないことです、力がある方が勝つ、それがこの世の常なのですから・・」


「こうなったらオレが、義朝殿の・・・源氏の仇を・・・」

「いけません!!」


常盤は声を張り上げて鬼若の言葉を止めた。


「だが・・・」

「こうなってはもはや一刻の猶予もありません。今若、乙若、そしてこの牛若を連れて清盛様のもとへ向かいます」


「なっ・・何を言う常盤殿、そんなことをしては子供達が殺されるだけだ!!」

「しかし、ここにいていつまでも隠し通せるわけもなく、これ以上鬼若殿に迷惑をかけるわけには・・・」

「常盤殿!!!」


まず常盤は幼い子らを抱え実家へと向かうが実家は残党狩りに合い無残な姿となっていた。雪の中を彷徨い歩き疲れて小舟で寝ていた常盤らはとある寺の住職に助けられる。

住職から義朝の死を聞かされた常盤は子と共に後を追おうとするが、牛若の無邪気な顔や義朝の言葉により思い留まる。

また、常盤の母親も平家方に捕らわれたことも知っていたため、鬼若の精一杯の静止も振り切り、京の都へと向かった。



平清盛邸―


常盤は3人の子を連れ、清盛の屋敷へ訪れた。居座るは、清盛の長男・平重盛たいらのしげもり、清盛妻・時子の弟・平時忠たいらのときただ、側近・平盛国たいらのもりくに、それら三方が清盛が現れると同時にお辞儀をし、同時に常盤もお辞儀をした。


「顔をあげろ」


盛国の言葉に常盤は顔をあげ、清盛と目が合った。その瞬間、常盤の背筋が凍った。


(なんて威圧感、見ているだけで体の震えが止まらない・・・)


しかし、母の命がかかっている以上、黙ったままなわけにもいかなかった。


「この度は母の命をお助けいただきたく、清盛様のお慈悲をすがるべく、参上いたしました」


「母親の助命など簡単なことだ、我ら平家が望むものは左馬頭さまのかみ義朝の遺児3名のみ」


盛国の容赦ない一言は、常盤の胸にと刺さった。子供達は若すぎるゆえに、今の状況を把握できていなかった。


「!!、私の命に代えても、どうか母と子供達の命をお助けください、何卒・・・・」


「だが、敵の大将の遺児ならば・・」

「まあ待て盛国、敵の大将の子とは言えまだ子供じゃ、生かしておいても今の形勢が変わるとは思えんがのう」


「殿!!」


清盛の言葉に驚く平家方、それに対し、喜びをあらわにする常盤。しかし、このまま容易く終わる話ではなかった。



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