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カミアイ  作者: miora
2/2

直感だよ

次の日の朝。早速、最低な一言が俺の耳に届いた。

「何?ジロジロ見て・・・。私の事、好きになってくれたの?」

「ぶっ。ゲホッ。ゴホッ」

俺は飲んでいた牛乳を吹き出してしまった。

あーあ。勿体無い。

って、そうじゃねぇっつの。

「何言ってんだ?お前」

「あれ?違うんだ。なんだ、残念」

「残念、じゃねーよ。馬鹿以外の何者でも、無いだろ」

「え?そうなの?これでも、小学校の頃は頭は良かったんだよ?」

「いや、そういう馬鹿じゃねーよ。お前、つくづく嫌な奴」

「あ~あ。なかなか、好きになってもらえないかぁ~」

「ま、当分は無理だな。もしかしたら、一生無理かも。お前のその状態が治らない限りはな」

あいつは言葉を詰まらせた。そんなのには気にもせず、黙々と飯を食った。

長い沈黙。

っやく、空気悪ぃな。ま、俺がそうしたんだけどね。大体、この飯最悪だし、あいつも最悪だし。

最悪だらけで気分が悪くなってたから、いつか爆発させなきゃ、体に悪いだろ?

「ふむ。でも、私、キスぐらいは出来るよ?」

「ぶぶっ!!ゴホッ!」

唐突にそんな事を言うもんだから、また牛乳を吹き出してしまった。

「あーあ。もったいないじゃんさっきから」

誰のせいだっつの!何、訳の分かんねえ事ぬかしてやがる!!

「何なんだよ、急に」

「でも、出来る事は出来るでしょ?」

「ね」って笑いかけながら、あいつは言った。

ズキン、と胸が痛んだ。

こんな最低野郎に笑いかけんなよ。

あんな事言われたのに。

「よく・・・笑っていられるよな。俺の気を引こうってか?」

何気なく、酷い事を口走っていた。

「別に?貴方はそういう人なんでしょう?上手く人を褒める事が出来ないんだよね?」

その言葉に頭に血がのぼったのが分かった。

「お前さ、つくづくムカつくよ。俺の何を知って、言ってるんだよ?それ」

人の事を勝手に分析するな。俺は誰よりも、貴方の事を分かってるっていう奴が本当に嫌いだ。さっきの胸が痛んだってのは訂正。逆に今、こいつのせいで頭の方が痛い。

「うーん。私もよく、分からないな。だってこれから、貴方の事を分かっていくと思うから」

分かっていく、ね。いつまで経っても、分からないよ。お前は。この世界に俺の事を分かる奴なんて、いない。

「分かろうとしても、無駄だよ。あんたに俺の事は一生、分からないし・・・」

そこで、言葉が途切れた。

「分からないし?」

あいつはそう繰り返して、続きを聞いてきた。

「あんたと俺は、分かり合えない」

なんか疲れた、って言って寝ようとした。

「この世界に誰とも、分かり合えないってことは無いよ」

目を見開く。

「なんで?」

思わず、聞いてしまった。別にそんな事ほっとけばいいのに。

聞き流しときゃ、良いのに。

でも、それでも、聞きたかった。

「なんでって・・・。うーん。何でだろうね?」

「はあ?」

情けない声を出してしまった。馬鹿みたい無声だった。

いや、でもさ。断定出来るってことは、分かってるって事だろ?その理由が。

何でだろうね、っておかしいだろ。

あーっ!もう!さっきから何だよ!俺がキレたのが馬鹿みてえ・・・。

「だって、分かんないよ。そんな事。えっとね、こういうの何て言うんだっけ?えーっと

・・・」

しばらく、考え込んでいた。

「あっ。直感だ。そうそう、直感」

「ぶっ。なんだ、それ」

笑ってしまった俺の顔を見て、あいつも笑った。

「へえ。そんな風に笑うんだね」

慌てて、笑うのを止めてあいつを睨んだ。

「べ、別に笑ったんじゃねぇよ。あんたをあざ笑ってやっただけだ」

「結局、笑ったんじゃない」

クスクス、と笑われて俺は顔から、火が出るようだった。

「ちぎゃうよ」

うわ、最悪。噛んだよ、俺。

「あはははっ。今、噛んだよ。可愛い」

うかーっ。やばい。マジ、恥ずかしい。笑われるし。

でも、なんか楽しいな。

なんで、そう思ったのか、不思議だった。

しかも、そんな事を思った自分に戸惑った。

初めてだったから。こんな事を思わせてくれる人は。

なんだろう。こいつはある意味、神様なのかもしれない。

こうして、こんなに人と話した事は無い。もちろん、焦って噛んだりするなんて事も無かった。

ま、人間だよな。神様っていうのは訂正。

けど、この時から、ほんの少し、こいつの事が気になり始めたのは本当の事。


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