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白い因幡と黒いイナバ

作者: 剣咲スルメ

友人の勧めでここに投下してます、スルメと言います。

うん、長編なんだ。長ったらしいけど、最後まで見てくれると嬉しいかも?

あと、主人公の名前になってるナナシは脳内変換で適当に変えてくらさいな。

自分の名前にして楽しむと気分は倍増……になるのか?


それでは、はーじまーるよー……

実に困った……さて、この窮地を乗り切るにはどうすれば良いのだろうか!?

現在、頭の中で繰り広げられている脳内会議では半分が降伏を進めており、もう半分が思考を放棄して死んだ魚のような目を漂わせている。

さて、この状態でどうすればこの問題を解決できるのか!?……あれ?もう既に詰んでない?なんて言葉は言わないでくれ!

きっと何か素晴らしい解決手段が残されている筈だ!頼むから集まってくれ僕の知識達!そして何か良い解決を閃かせるのだぁ!


「これでこの列とこの列が裏返るので……あ、私の勝ちですね!ナナシさん」


あぁ、現実は非情だ……

満面の笑みと共に、黒と白の面で出来たコインの様な石を裏返して真っ白にしていく彼女を見ながら僕はそう思うのだった。


「何と言うか、強くなったね……鈴仙」

「そんな、私なんてまだまだで……ナナシさんが弱いだけですよ」


謙遜のつもりなのか、鈴仙は恥ずかしがりながらもしっかりと僕を見下してくれる。

うん、どう考えても罵声でしか無いんだけど、鈴仙の事だからきっと意識してないんだろう。

天然系と言うらしいが、彼女のそれは本心からじゃないから何とも言え無い。

もっとも、真っ白に染まり切ったコマを見ると自分が完敗している事実は変わらない訳で……

うーん、本当に彼女の言う通り僕が弱すぎるだけじゃあ無いだろうか?とも思ってしまうわけでして……


「強くなったねぇ……最初に教えた頃は僕が勝ってたんだけど、今じゃまったく勝てないや」


そう――この白と黒のコインを使って遊ぶゲーム、オセロを教えたのは僕だ。

囲碁とか将棋は普通にあったけど、オセロは無かったので一度教えて見たら瞬く間に流行ってしまったのである。

最初は連勝する事も出来たが、今は勝つ事すら夢のまた夢でしかない。あぁ、現実は非情だ……


「それでも、まだ師匠には勝てませんから……」


彼女の言う師匠とは、ここ永遠亭で医者をしている八意 永琳さんだ。

幻想郷で数少ない医者として、人や妖怪達を看ている。行動パターンや思考がたまに奇抜だが、それでも皆から慕われている……筈だ。


「まぁ、あの人に勝てる人はそういないからね……まぁ、気楽にやると良いよ」

「それはそうなんですけど……やっぱり勝ってみたいですから」


僕の言葉に、鈴仙はどう言って良いか分からずにしばらく悩んだあと、苦笑しながらそう答える。


「まぁ、目標を持つのは大切だからね。そう言うのは良いんじゃないかな?」

「……何と言うか、ナナシさんらしい言葉ですね」

「鈴仙は何でも真剣に考えすぎるからね。別にそれが悪い事って訳じゃ無いけど、遊びくらいは気楽に考えた方がいいんじゃないかな?楽しむために遊ぶ訳だから、勝ち負けよりも一番楽しんだ人が一番なんだと僕は思う訳なのですよ」


だから、勝ち負けなんか気にしてませんよー、なんて我ながらうまいことを言った物だと自画自賛していたら、呆れてものも言えなくなったのか、呆然とした表情で鈴仙はこっちを見つめていた。


「えっと…もしもーし?鈴仙さーん?お願いだから戻って来てくれると嬉しいかな~なんて思ったりするのですが?」

「ふぇ?ぁ、いえ…その、何というか、ナナシさんらしいというか、何て言うか……」


突然我に帰ったかと思うと、鈴仙は顔を真っ赤にして慌て出す。何か先程の言葉に問題でもあっただろうか?


「いえ、別に変な訳じゃ無いんですよ!?ただ、ちょっと思い出したというか何と言うか……」


そう考えていると、こっちの考えていることが分かったのか、混乱しながらも慌てて鈴仙はそう答える。


「その、最初にあった時の事をです、はい……」


鈴仙の言葉に、嫌でも当時のことを思い出す。

そういえば、こうして気軽に話せる様になるなんて、最初にあった時は思いもしなかったな……と、僕は今更ながらに思い出す。


「そういえば、その時だっけ?弾幕の洗礼を受けたのは」

「あれは、突然迫ってきたナナシさんにも問題が有りますよ!」


この見知らぬ世界――今でこそ幻想郷だと知っているが、当時はそれすら知らずに竹やぶをさ迷い歩いていた僕が最初に出会ったここの住人。

久しぶりに話の通じる相手と出会った感動を胸に秘めつつ話し掛けると、帰ってきたのは言葉ではなかった。

むろん、都会のもやしな僕に避けれる訳も無く、全弾クリーンヒットしてそのまま意識を刈り取られてしまう。


「それに、あの時のナナシさんはなんだか凄く異様な雰囲気でしたし……」

「そ、そんなに酷かったかな?」


当時は日数を数えるのも忘れるくらいさ迷ってたからな……

兎がたまにそばを通ったけど、調理する方法も道具も無かったから食べる訳にもいかなかったし……

じゃあ何を食べて生き延びたかって?……地道に地面を掘り返して筍をかじってましたよ……

人間、死ぬ気になれば何でも出来るんだと実感しましたよ、はい。


「そういえば、もう治ったんだっけ?その、男性恐怖症とか言うのは」


すっかり忘れていたけど、そもそも鈴仙があんな態度をとったのには他にも原因があるらしい。

これは師匠から聞いた話なんだけど、なんでも過去に色々とあって最初は異性に触れる事も難しかったとか。

何とか対面しても脅える事はなくなったし、話をする事までは出来るようになったけど、そこから先がどうしても進まなかったとか。

そこに来て、今回の僕の一件でどういう訳か一歩どころか数歩進むことが出来るようになったとかで、現在原因を解明すると同時に僕が元の世界へと帰れる様に調べて貰っている。

そこで、ふと鈴仙の方を見ると何故か驚いて目を丸くしていらっしゃる。

はて、僕は今何かおかしな事を言ったでしょうか?


「えっと……その事を聞いたのは師匠からでしょうか?」

「そうそう、色々大変だったんでしょ?最初の頃は持ってた薬を投げ付けたんだっけ?」

「で、その、何か思わなかったんですか?」

「鈴仙も頑張ってるなぁって、思っただけだけど……って、どうかしたの?」


何故か、呆れたような顔で鈴仙は深いため息を付くのだった。

あれ?僕は何かおかしな事を言ったかな……?と、自問自答して見ても特におかしな点は無い筈なんだけど……


「それって、師匠に内緒にしておくように言われませんでした?」

「ん?そういえば……そーだったかな?いやぁ、よく知ってるねぇ」


と、そこまで言って僕は全身が硬直する。

って、ちょっと待ってくださいよ。そういえばそうだった気がしてならないですよ!?

くれぐれも本人には内緒にって言われませんでしたっけ……?

さて、そこでさっきの僕の行動を思い出して見よう。僕は今何をしたでしょうか?

はい、本人には内緒にしていることを普通に話して逆に注意されました。

大正解だぜジョニー!正解した暁には、もれなく師匠からの24時間ぶっ通しでの拷問がまってるぜ!?ていうか、殺されるぅ!


「あはは……その、出来れば忘れてくれるとたすかるなーなんて、思ったりする訳で……というか忘れてください、この通りです」


必死に土下座しつつ頼み込む。プライド?なにそれおいしいの?

今は鈴仙を懐柔して死亡フラグを回避する事の方が大切なのさ!


「そ、そんなに頭を下げないでくださいナナシさん。別に下げられても困るというかキモいというかその、別に気にしてないので……」

「いやぁ、それは助かるよ!それじゃあ、気を取り直してもう一戦する?」

「へ?ぁ、そうしたいですけど、そろそろ師匠の手伝いに行った方がいいかと……ってナナシさんは切り替わりが早過ぎなんです!どうしていいか悩んだ私が馬鹿みたいじゃ無いですか!?」


顔を真っ赤にさせて怒る鈴仙に、僕は謝りつつも心の中でさっきの件をうやむやに出来たことに安堵するのだった。

あのままじゃあ、確実に死亡フラグが成立しちゃってたからねぇ……



「ナナシさん……その、オセロって奥が深いですよね」


しばらくして、片付けをしていると鈴仙は突然手を止めてそう呟く。


「まぁ、自分の色が多くて安心してると、気が付けば相手の色で染まってたなんて事もよくあるからね」


だから、オセロは気が抜けない。

とは言っても、オセロは四つの角を相手に取られると自動的に負けが決まるんだけどね……正に、四面楚歌とはこの事だろう。


「その、昔はよく貴方の色に染められてましたから……というか、今もなんですけど」

「はて……最近勝った記憶が無いんだけど……?」


しかし、鈴仙は僕の言葉を聞かずに顔を真っ赤にさせたまま何かを言おうとしている。何か、体調でも悪いのだろうか?


「えっと……体調が悪いのなら無理はしない方がいいよ?」

「!?……えぇ、体調は問題無いです。というか、ナナシさんは鈍いと言うか何と言うか……別に、それが良いところでもある訳なんだし……」


なにやら、不思議な事を呟きつづける鈴仙。

途中で朴念仁とか、狙ってやってるのかとか聞こえるけど、気にしない方がいいのかもしれない。


「ナナシさん!」

「な、何でしょ……!?」


と、思ったら突然大声で名前を呼ばれる。どうやら、何かが彼女の中でまとまったらしい。


「いつか、必ずナナシさんを私の色で染めて見せますから!その時は…その、覚悟しておいてくださいね……?」


何やら訳が分からなかったが、鈴仙の必死な表情に押されて首を縦に振る。

というか、顔を赤く染めて迫ってくる鈴仙にドキッとさせられたのも事実であって……

しばらく僕は、呆然としたまま鈴仙が去って行くのを見送るのだった。



「えっと……だれか、説明して下さい……」

「簡単に言えば、私の可愛い弟子を泣かしたら許さないって事よ」


突然のことに驚きつつも、声のした方を見れば何故か師匠が立っていた。

部屋に掛けられている掛け軸が半分ほどめくられていて、その場所の壁が空洞になっている。

どうやら、師匠はずっとそこにいたらしい。


「いつからそこにいたんですか!?というか、何故に掛け軸の裏に!?」

「あらあら、掛け軸の裏に抜け穴の一つくらい作るのが月の常識じゃなくて?」


いや、そんな常識は貴方だけに適用されますから……

と、言ったところでこの人は聞いてくれないんだろうな、と僕は今までの経験上理解している。

この人は鈴仙の師匠で、八意 永琳と言って中々の名医だったりする。

もっとも、こうしてたまに奇抜な行動を取ることもあって中々そう見え無いのが玉に傷なんだけど……


「それはそうと、まずは貴方に罰を与えなきゃね~」

「へ?何をですか?っていうか見るからに怪しげな色をした液体が入った注射機は何に使うんです!?」

「もう、分かってて聞くなんていけずねぇ」

「分からないですし、分かりたくないですから!」


師匠は何が楽しいのか、顔を赤らめてこっちに迫ってくる。

性格はともかく、スタイルだけは人一倍あるので、そんな彼女がそういう仕草をすると一般的にはそそるものがあるのだろうけど、今の僕には身の危険しか感じない。


「内緒にしてねって言ったのに、しっかり破ってくれたじゃ無い。悪い子にはお仕置きよぉ~」


やっぱり聞いてましたか!?マズイ……これは逃げねば……

そう思った僕は、戦略的撤退を試みて――結果、逃げ切れませんでした。

まぁ、分かってたけどさ!少しは抵抗したかったのですよ!

そうしている間にも、注射機の針は僕に迫って来ている訳で……


「安心しなさい、看病は鈴仙にお願いするわ。それなら貴方も満足でしょ?」


鈴仙に看病か……それはそれで良いかもしれないな……

でも、それはそれで、これはこれですから!ちょ、師匠!?お願いですから止めて――


その後、僕は一週間寝込む事になったとさ……はぁ……



BadEnd?

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