最終章 ー03
"親愛なる リリアへ"
出だしの1文だけで、ニヤニヤしちゃう。
親愛なるに深い意味なんてないのかも知れないけど、あのアルフレッド様が使うとちょっと……。
でも手紙に書いてあった内容は嬉しいものではなかった。
貿易について話し合うから帰りが遅くなるという内容。
手紙を書いた日付が1週間前になってる。
じゃあいったいいつ帰ってくるの?
その間、ずっと美々姫は近くにいるの?
嫌だな。
「産まれてきたメグのお世話にでも行こう」
泣きたいくらい暗い気持ちを打ち消す為、先週生まれたメグを見に温室に向かった。
針子と呼ばれる針先のようなメグが水面でじっとしている。
ふぅと息をかけると慌てて泳ぎだした。
「可愛い」
でもそれも一瞬の癒しに過ぎなかった。
いつからこんな気分転換が下手になったのかしら?
そうだわ。
美々姫とアルフレッド様との婚約話を聞いてからだわ。
あの時からモヤモヤを晴らすのが下手になったのよ。
それって、つまり……私の中でアルフレッド様の存在が大きいって事だよね?
右手を見る。
彼の瞳のような石がキラキラと輝いて見える。
「綺麗……」
スズもグラダナ婦人もこの指輪はまるでアルフレッド様のようだと言っていた。
確かにそうね。
右手の薬指の指輪の意味は『愛と信頼』。
うん、大丈夫。彼の愛も信頼もここにあるもの。
私はぎゅと薬指を左手で包み込む。
「会いたいな」




