6章 ー05
「確かに彼女はこちらを慕っている。だが、エスコリーネ男爵が飢饉を救った英雄であるからには俺らの婚約は正当な理由になると思っている。俺一人が欲しいが故に戦争になることはないだろう」
自分で凄い事、言ってる!
『俺一人が欲しいが故に』だって!
冷静なの?!自意識過剰なの?!
「…リリアのその顔はどう言う感情なんだ?」
アルフレッド様もなんとも言えない表情をしてますよ。
「とりあえず、外交問題は起きないと?」
「あぁ」
アルフレッド様が紅茶を啜る。
ふと顔を上げて「もっと言うなら、美々姫との婚約を避ける為にもリリアと婚約した。だから安心すると良い」とニヤリと笑った。
「別に不安になってません」
なんでアルフレッド様はなんでも分かってしまうんだろ?
「なら良い」
笑みを崩さず、紅茶をもう一口飲む。
こんな光景ですら絵になるのだから、さすが王子様だわ。
「あの、メグですが、私は先ほども申し上げた通り差し上げたつもりです。ですが、要らないようなら受け取りますわ」
「いいや、逆に欲しい方がいるので、そのまま城のを渡すことにする。俺も元々そのつもりたったのだが…」
アルフレッド様は窓から外を見る。
「俺の護衛がリリアを紹介してくれと煩くてな。メグはついでだよ」
今まで全然気にした事なかったけど、当然、護衛の方がいらっしゃるわよね!
「着替えて参ります」
「いやいや、そのままで良い」
絶っっっ対、護衛の方は今までアルフレッド様の近くにいらした綺麗な令嬢を見てきた方ですわね?!
私、地味過ぎじゃない?!
でも学園の制服以外、新しい服なんてないわね…。
私は諦めてアルフレッド様と外に出た。
門外には30歳近い隊服を着た男性がこちらに背を向けて立っている。
短く切った茶色く癖のある髪を揺らし、その人は振り向いた。
私に胸に手を添え、頭を下げる。
「同じ騎士団の一員でもあり近衛隊、隊員であるレオ・ワグナー。リリアが通っている学園の騎士学科の卒業生だ」
アルフレッド様が紹介してくれた。
「初めましてリリア様。私のことはレオとお呼び下さい」
レオさんは愛想良さそう。
にっこりと微笑む顔がよく似合っている。
「初めましてエスコリーネ男爵が長女、リリア・エスコリーネですわ」
私もスカートの裾を摘まんでお辞儀する。




