6章 ー01
6章始まりは王子からです。
グラダナ婦人に新たな観賞魚を見てもらった反応や如何に。
「兄上、グラナダ婦人はどうでしたか?」
もうグラナダ婦人が帰った頃に城に戻り、兄に確認する。
「喜んでいたさ。これをお前にと」
そう言って手紙を渡してくれた。
「気に入られようとバラを浮かばせたのか?」
リリアから預かった睡蓮鉢では淋しい気がしたので、婦人の好きな白バラを鉢に浮かばせた。
「気に入られようと…と言うよりは、気づいてもえるよう入れました」
「『美しいわ!さすがアルフレッドね』って手放しで褒めていた。義母様は手紙になんと?」
そう言われて手紙を開く。
……首尾よく進んだな。
「婦人があのメグを気に入ってくださいました。今度、遣いの者が取りにくるそうです」
婦人が気に入って、庭に置いてもらえれば他の貴族の目に止まる。
俺は彼女への手紙に、他にも欲しい人がいればその人にも分ける事、エサをやる必要はないがやると懐く事を書いた。
エサは干した魚をリリアが擂り潰した物なのでお金が掛かることも伝えてある。
さて、この後もうまくいけば良いが。
「悪そうな顔をしているな」
兄はニヤリと笑う。
「そうですか?ただ物事がうまく進むのは存外、嬉しいものですね」
「そんな事を言うとは珍しいな。王の座に興味もなく、父王に言われた通り剣の道に進んでいるが、案外策略が好みのようだ」
父王にそっくりな長兄。
頭脳明晰な次兄。
国の事を任せて安心なので、俺は大人しく今はもう無用だと思われる軍事を治める。無用かも知れないが、防衛できる強さは最低限必要だ。
「戦でも策略は大事ですよ」
「そうだな。ところであのメグだが、どこから持ってきた?」
兄は自分の知らない出所に興味が沸いたようだ。
「エスコリーネ男爵宅から借りてきました」
正確にはリリアからだが。
「エスコリーネ男爵……最近、その名を聞いたような……。あぁ、麦の」
答えが出て、兄は手を叩く。
「成る程。麦の実績があるが、観賞魚としてもか……立場を盤石にしたいのはお前の意志か、それとも?」
「俺です」
変に繕うとエスコリーネ男爵の立場が悪くなる。
「ははは。そう力むな。父からアルフレッドが婚約したそこの令嬢に執着していると聞いている。私は傍観するに務める。精進せい」
「はっ」
片足を就いて頭を下げる。
兄は満足そうな笑みを浮かべて去って行った。




