4章 ー01
4章に入ります。
出だしは、初めて貧乏男爵である婚約者の屋敷を訪れた王子目線からです。
王子は何を思ったでしょう?
エスコリーネ家は思っていた以上に色んな意味で凄かった。
屋敷向かって左側に畑があることにも驚いたが、屋敷に装飾品が殆どないのにも驚いた。
リリアがドレスではなく、ズボンだったのは想定内だが、成る程。彼女がこの婚約を躊躇うのも分かる。
俺の住む世界と、彼女が住む世界は違い過ぎる。
だが、リリアが頬を染めてこちらを上目遣いに見るのは良いな。
ぐっときた。
元より王命なのだから、彼女には諦めてもらおう。
「兄上、グラダナ婦人が来られるのは再来週で合っておりますか?」
夕食前に丁度、長兄に出くわした。
一番、国王陛下に似ており、行く行くはこの国を治める人物。
「珍しいなアルフレッドが義母様の事を聞くなんて。どうせ稽古だのなんだので、城に居ないのだろ?」
グラダナ婦人は弟王の妻であり、長兄の妃の母親でもある。
弟王は王都の次にこの国の要となる港街を治めている。貿易も盛んで、グラダナ婦人は流行にも聡い。
「私はいませんが、それまでに用意したいものがありまして、もし用意出来ましたら見て頂きたく存じます」
いないと言うより、グラダナ婦人から逃げているんだが。
「承知した。綺麗な顔で何時間でも眺められると気に入っているお前からの物とならば、義母様もとても喜ばれる事だろう」
ニヤニヤ笑いながら、それをわざわざ言うところに兄の性格が出ている。
「それ、あまり言わないで下さい」
「兄弟の中で一番麗しいと令嬢達から散々言われているのに?」
これまたニヤニヤしている。
「私がそれを理由に近づいてくる令嬢が苦手なのをご存知でしょう」
「そう、そう。それで、社交の場に出てない令嬢と婚約したんだってな」
それが理由ではないが。
本当の理由を知っていてこの人、楽しんでるな。
「お前の誕生祭に公表するんだって?」
「それは初耳です」
またあの人は勝手な事を…。
こんな事をするのは母に違いない。
まぁ、人目が多い時に公表するのだろうとは思っていたが。
「楽しみだなぁ」
ニヤニヤ笑いながら兄は先に食堂へ入って行った。
妃が第二子の出産間近だからか、妙に浮かれていたな。
我が家は平和だ。




