2章 ー03
「お父様達がどっちも結婚しなかったらって言ってたじゃない」
だから勘違いするの貴方だけよ。
「でもさ、お前の趣味の事を思えば、うちに来た方が時間にゆとりあるだろ」
パン屋さんってゆとりないと思うんだけど。
「趣味ですか?」
「いやぁ、その、趣味と言いますか…」
「趣味だろ。メグの繁殖」
ガイヤの馬鹿!そんなハッキリと…。
お父様が最初に品種改良の為に使っていた温室で私は今、メグ―この国で一番小さな淡水魚―を育てている。
「メグの…」
ほらぁ、アルフレッド王子が反応に困ってるじゃない!
「可愛さについて話し出すと止まらないんだよな」
隣でスズが何度も頷く。
「そうなんですか。それなら是非、聞かせて貰いますね。それと、メグならうちでも…」
「少し宜しいでしょうか?」
席を立ち、皆から離れた場所に移動する。
「すみませんが、国王様が言われた事は内密にお願いします。友達が困惑しますので」
私は頭を下げる。
「承知しました。顔をあげてください」
アルフレッド王子はキラキラとした笑みを浮かべてそう言った。
「でもお友達なら、尚更早めにお伝えした方が良いのでは?」
「…王子は私に妻が務まるとお思いでしょうか?先程、ガイヤが言った通り、普通の令嬢と趣味が合わないのです。なので、私はこの話はなかった事にと……」
「つまり、婚約を解消したいと?」
「はい……」
私は癒しであるメグを愛でながら生活したい。
王子の妻になったらそんな訳にはいかないでしょ?
だから、この趣味を理由に私は婚約を破棄したい!
そうよ、そう思って貰えるようアピールすれば良いのだわ。
「私デビュタントの時だけ社交の場に出ているのですが、"この時だけ"の理由が分かりますか?」
「家が大変だったからですか?」
「いいえ。麦の事以外に話せる事などなかったからですわ。趣味や興味のある事しか話せませんの」
そう。それで他の令嬢から白い目で見られたのよ。
「父は"小麦令嬢"と呼ばれているだなんて言っておりましたが、今、私が社交の場に出たら"メグ令嬢"と呼ばれてしまうと思いますわ」
ここまで言えば娶る気にならないでしょう。




