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小麦令嬢は婚約を破棄したい  作者: 間波 結衣実


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2章 ー01

「オスカー・エスコリーネ?」


 初めて聞く名前だった。


「そう、そう。ここ最近の酷暑に強い麦の改良をしていてね」


 国王でもある父が、資料をくれた。


 どうやらエスコリーネ家は40年程前から麦の収穫が減り、それに伴い領民が減少。今の当主がこのままではいけないと麦の品種改良を始めたのか。


「その麦のお陰で、今年も必要分収穫できたようだよ」


 父は玉座に座っている時とは違い腹の底から声を出していない。

 威厳あるように見せる為、仰け反って腹の底から声を出すらしい。


「オスカーには娘がいて、その子も色々と手伝ったいたらしい」

「ご令嬢が?」

「アルフレッドは興味があるのかい?いつも色々な令嬢に声を掛けられても無反応なのに」


 すり寄ってくる女は好きではない。

 人に媚び売るのも大切な事なのかも知れないが、嫌悪してしまう。


「エスコリーネ家への褒美はお前にするか?」


「どうなんですか、それ」


「エスコリーネ家のお陰で、我が国は1つの危機を乗り越えた。褒美は必要であろう?」

「それは分かります。でも、俺ですか?」


 それは褒美になるのか?


「お前は人気あるじゃないか」


「そんな問題ですか?」 


 呆れて溜め息が出る。


「飢饉を救った英雄の娘なら、他の令嬢にも、かの国の姫にも堂々と婚姻を宣言できる。良い考えだと思うがなぁ」


「それはそうですが…」


「我が国は戦後80年を迎え、今の外交関係を変えたくはない。どの息子でもそうだが、何処かの国の姫を迎い入れるとしたら、力関係が変わってしまうなぁ。まぁ、お前が嫌だと言うなら仕方あるまい」


「分かりました」


 そんな国の事情を出されたら、断れないじゃないか。

 その娘も何と思うか分からないが、貴族の娘なら政略結婚にも抵抗あるまい。


 だが、品種改良に勤しむ娘か。


 なかなか面白そうだな。


 ◇


 そう思って気に入った令嬢なのだが、これはどうした事だろうか。

 リリア嬢は親しげに男の袖口を引っ張っていくではないか。


 しかも、あの男、俺の事を睨んでなかったか?


 これはちょっと様子を見ねばならんな。

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