表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/17

第1話 感動の再会

 今俺は、美女に膝枕をしてもらっている。



 事の発端は数分前。

 高校の入学式が終わり、友達のいない俺は一人で悲しく帰宅していた。


 事件が起こったのは、慣れない帰宅道でのこと。

 同じ学校の制服を着る美女が、不良三人に囲まれていた。

 そのまま彼女は、強引に人の居ない路地裏に連れて行かれた。


 彼女は困っていた。

 だから機転を利かせて助けようとしたんだ。


 高校進学を機に新しく勝ったスマホを持ち、電話する風に耳に寄せる。

 そして路地裏の入口に行き、こう叫んだ。


「今警察に通報した! 事を大きくしたくないなら帰るんだな!」


 勿論通報したと言うのはハッタリだ。

 俺にそんな勇気はない。

 しかし通報したふりならできる。

 演技派な俺には朝飯前だ。


 これで引くと思ったらいきなり胸ぐらを掴まれ、殴られた。

 その拍子で新しいスマホを落とし、バキバキに割れる。

 その後俺は不良三人からタコ殴りにされ、体中痣だらけになった。


 一応ハッタリは通じていたらしく、不良達は帰っていた。

 何とも最悪な出来事だろうか。

 人生最悪ランキングトップスリーには入るぞこれ。


 そして現在、助けた美女に膝枕をしてもらっている。

 何故か。

 俺にも分からない。

 気がついたらこうなっていた。

 そして気がついたら目を閉じていた。


北馬ほくばは変わってないな。弱い癖に勇気があるところ」


「弱いは余計ですー」


 全く失礼だ。

 助けてあげたのに弱い呼ばわりされるなんて。


「でも、助けてくれてありがとな。本当に困ってたから助かったよ。やっぱり北馬はヒーローだ」


「だから俺はヒーローじゃなくて―――」


 そこで俺は目を強く開いた。

 素直に驚いたんだ。

 見知らぬ美女と、会話が自然に始まった事じゃない。


 『ヒーロー』のくだり。


 その内容は一人の親友にしかしていない。


日下部くさかべ!」


 自然と出てきたその苗字。

 その瞬間初めて俺は美女の顔立ちを見た。


 艶のある茶髪に、長い睫毛。

 大きな瞳に、柔らかそうな唇。


「やっと思い出したか、このやろー」


 いろいろと変わってしまった。

 だがその雰囲気は、小学一年生の時と何一つ変わっていない。


「どうだい? 感動の再会に何か言う事はないのか?」


 ニヤニヤとほっぺを突っ付く彼女に、俺は言ってはいけない一言を言ってしまった。

 多分再会した興奮より、驚きが増したのだろう。


「お前……、女だったのか!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ