表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

デザートバイキング 『アップルパイ』

作者: 桜沢 純

 その女の子は、自分のことを『オレ』と呼ぶ。

「でさぁ、『アズサも女の子なんだから、もうちょっとかわいい服着てよ』とか言いやがるんだよかーちゃん。勘弁してくれって感じ」

 アズサはベリーショートの髪の毛をわしゃわしゃと手でかきむしって、ハンバーガーにかじり付いた。

「だって、ピンクのフリルのお花柄だよ。オレが? あんなの、それこそハナが着ないと。服が可哀想だっていうもんだよ」

 アズサがあたしを見ながら言った。あたしはポテトをひとつ、口に入れる。

「……そうかな?」

「そうだよ。今着てるワンピだってかわいいじゃん。めっちゃ女の子ーって感じ?」

 味気ないジーパンとTシャツで笑うアズサ。

 白いフワフワワンピで苦笑いのあたし。



「カサ、やっぱりでっかい方が、濡れないし楽なのかなぁ?」

「でも、重くて使いづらいんじゃないかな?」

「んー……色は、黒とか茶色?」

「……赤、とかは?」

「赤!? オレが!?」

 あたしが言ったら、アズサはお腹を抱えて笑って、それからあたしに抱きついてきた。

「赤とかピンクは、女の子なハナが似合うのー……やわらけーっ」

「わ、ちょ、アズサっ」



「うーん。これくらいが無難なのかな?」

 カサ売り場。そう言って、アズサが手に取ったのは白いカサ。飾り気のない白。

「これだったら、大丈夫だよね?」

「……うん。あ。あたし、ちょとトイレ」

「はーい。この辺にいるから」

 あたしはトイレに向かう。

 ちょっとだけ、ため息が出た。

 この、もどかしい気持ちは何なんだろう。

 上手く言葉にならない気持ちが、ぽつぽつ、ぽつぽつ、炭酸ジュースの泡みたいに浮かんで消える。



「あれ……」

 売り場に戻ったら、アズサがいなかった。

 他のところ、見てるのかな。

 キョロキョロと辺りを見回しながら歩く。

 文具。雑貨。本。生活用品……

「あ……」

 アクセサリー。

 ちょっと、頬を赤らめて、鏡を見ながら、白いバラのコサージュを、頭にのせてるアズサ。



「あ、いたいたー。ハナ。遅いから心配したじゃん」

「あはは……ちょっと足が疲れちゃった」

 エスカレーター脇のベンチに座ってると、アズサがやってきた。

「カサ、やっぱり白にしたよ……やっぱ、オレには似合ってない?」

「ううん……そんなことない」

 はにかむアズサを見て、思った。

 すごく、女の子だ。

「そっか、よかった……さ、マンガでも見にいこうかな」

「うん」

 差し出されたアズサの手をとって、立ち上がる。

 可愛くって、柔らかくって、ぎゅってしたくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ