デザートバイキング 『アップルパイ』
その女の子は、自分のことを『オレ』と呼ぶ。
「でさぁ、『アズサも女の子なんだから、もうちょっとかわいい服着てよ』とか言いやがるんだよかーちゃん。勘弁してくれって感じ」
アズサはベリーショートの髪の毛をわしゃわしゃと手でかきむしって、ハンバーガーにかじり付いた。
「だって、ピンクのフリルのお花柄だよ。オレが? あんなの、それこそハナが着ないと。服が可哀想だっていうもんだよ」
アズサがあたしを見ながら言った。あたしはポテトをひとつ、口に入れる。
「……そうかな?」
「そうだよ。今着てるワンピだってかわいいじゃん。めっちゃ女の子ーって感じ?」
味気ないジーパンとTシャツで笑うアズサ。
白いフワフワワンピで苦笑いのあたし。
「カサ、やっぱりでっかい方が、濡れないし楽なのかなぁ?」
「でも、重くて使いづらいんじゃないかな?」
「んー……色は、黒とか茶色?」
「……赤、とかは?」
「赤!? オレが!?」
あたしが言ったら、アズサはお腹を抱えて笑って、それからあたしに抱きついてきた。
「赤とかピンクは、女の子なハナが似合うのー……やわらけーっ」
「わ、ちょ、アズサっ」
「うーん。これくらいが無難なのかな?」
カサ売り場。そう言って、アズサが手に取ったのは白いカサ。飾り気のない白。
「これだったら、大丈夫だよね?」
「……うん。あ。あたし、ちょとトイレ」
「はーい。この辺にいるから」
あたしはトイレに向かう。
ちょっとだけ、ため息が出た。
この、もどかしい気持ちは何なんだろう。
上手く言葉にならない気持ちが、ぽつぽつ、ぽつぽつ、炭酸ジュースの泡みたいに浮かんで消える。
「あれ……」
売り場に戻ったら、アズサがいなかった。
他のところ、見てるのかな。
キョロキョロと辺りを見回しながら歩く。
文具。雑貨。本。生活用品……
「あ……」
アクセサリー。
ちょっと、頬を赤らめて、鏡を見ながら、白いバラのコサージュを、頭にのせてるアズサ。
「あ、いたいたー。ハナ。遅いから心配したじゃん」
「あはは……ちょっと足が疲れちゃった」
エスカレーター脇のベンチに座ってると、アズサがやってきた。
「カサ、やっぱり白にしたよ……やっぱ、オレには似合ってない?」
「ううん……そんなことない」
はにかむアズサを見て、思った。
すごく、女の子だ。
「そっか、よかった……さ、マンガでも見にいこうかな」
「うん」
差し出されたアズサの手をとって、立ち上がる。
可愛くって、柔らかくって、ぎゅってしたくなった。




