王都動乱
にゃんから鉱山で話しを聞いてから数週間後。
俺たちは、王都に帰って来ていた。
帰ってからもしばらく待機命令を受けてしまっていたのだが。
突然招集がかかり、そして、冒険者のギルドマスターの部屋の中。
「何を考えているんだか。バカ野郎が」
ギルドマスターの部屋の中に集まった冒険者達の中で、ダルワンが頭を抱えていた。
「今、聞いた限りだ。シュリフ将軍が、クーデターを起こした。シュリフ将軍の長男のアラスも一緒になり、王を監禁したらしい」
ギルドマスターのその言葉に呆気に取られる俺たち。
「その情報の信憑性は、高いのかい?」
ロアの言葉に一つ頷くと、ゆっくりと、周りを見回しながら話し始めるカラさん。
「本来であれば、私達暗部が名乗り出る事もありませんし、このような情報を流す事も、絶対にありません。しかし、今私がお話しをしていると言う事で、信じていただくしかありません」
俺的には、カラさんが、暗部と呼ばれる、諜報、暗殺部隊の一人である事にもびっくりしているのだが、そんな事すら気にしていられないくらい、周りはざわざわしていた。
「お父様は何を考えているのですか」
ライナも、うつむいて涙をこらえているし、そのライナの手をそっと握るレイア。
「だからこそ、この人数と、人選と言う事だったと言う訳ですか。いきなりギルドからの招集がかかったから、何事かと思ったのだけどね。まったく父上と、兄には困ったものだ。まあ、僕が出世した事も引き金になった気はするけどね。砦を部下に任せて来て、良かったよ」
バル隊長が呆れた顔で、周りを見回す。
今、ギルドマスターの部屋にいるのは、バル隊長。ロア、ライナ、レイア、ヒウマ、にゃん、ギルドマスター、俺、サラ、リン、ダルワン、カラ。
そして。
金髪の真っ白い鎧に身を包んだ、12歳くらいの男の子。
まさかの、シュリフ将軍と、継承権がない王族の末の娘との子供だと言う。
それを聞いた瞬間、バル隊長が殺意を持って『クソ親父』と呟いたのにはびっくりしたが。
名前は教えてくれず、ギルドマスターや、カラさんからは、アルと呼ばれていた。
なぜダルワンがこのメンバーの中にいるのかと言うと、
ダルワンは、シュリフ将軍とも仲の良い友達だったらしい。
「知っていたら、殴ってでも止めた」
と泣いていたが、本当にこの酔っぱらいは、謎だらけである。
ギルドマスターは、今いる全員の顔を見渡す。
「別の情報もある。王妃や、第一王子、継承権のある子供達は、別の場所に監禁されているらしい。だが、場所の確認が取れていない上に、暗部も探しきれなかった。
かなり大変だが、彼らも探して欲しい。これは、国王からの直々の依頼と言う事になる。すまんが、助けてやってくれ。俺の甥っ子達を」
その言葉に、全員が驚く。
王子達が甥と言う事は。
「ギルマスて、王族だったんですね」
リンの呟きにため息を吐くギルドマスター。
「全てを捨てて冒険者になっただけだ。だが、シュリフ将軍の今回の動きは、許されるものではない」
ギルドマスターの話しもあまり聞いていない様子で、思い詰めたように考え込んでいたバル隊長は、まだ、ショックで泣いているライナを見て口を開く。
「ライナには、この任務は辛いかな。身内の後始末は、僕が責任を持つから、ライナとレイラは、バカ二人とは戦わなくていいよ」
静かに淡々とライナとレイラに話す。
「身内殺しは、重罪だ。何もバルクルスがやる必要はないだろう」
その言葉に口を挟むサラ。
「サラフィがシュン君と一緒にいるとは、驚いたけどね。僕を振ってまで、北に行った君が」
「勘違いされるような発言はやめてもらいたい。バルクルスには、リンダ殿がいるだろう。それにバルクルス殿は私の好みではない。しかし、昔の恩には本当に感謝しているからな。軍から、追放された身なれど、私の出来る事はやろう。出来る事といえば、このくらいだがな」
剣にそっと触れるサラ。
「で、そのアルと言う奴は、戦力になるのか?」
ヒウマが、きっぱりとフラレて落ち込んでいるバル隊長を無視して、ギルドマスターに尋ねる。
「残念だが、アルは、戦えない。アルと言う、王族の旗印が居なくなれば、我々は、王族の救出と、奪還と言う名目が無くなり、叛逆者になるからな」
ギルドマスターはきっぱりと言うが、俺はデータベースでアルを調べていた。
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[名前] アルフェーグ ゼイロス
[職業] Çランク冒険者
[ステータス]
[Lv] 53
[Hp] 1600
[Mp] 800
[力] 520
[体] 550
[魔] 230
[速] 400
[スキル]
交渉 詐欺 先読み 星流断罪剣
《星流断罪剣》
6連撃の連続剣技。
王家の血の人間が使うと、威力が3割増す。
転生者。13歳
前世過去の記憶はあまり無い。
ゼイロス帝国 シュリフ将軍と、現王の一番下の妹(享年 27)の子供。
隠されるように、生活しており、城には住んでいなかった。
母親は、冒険者になっていたが、最近、突然死してしまった。
以後、ギルドマスターが、面倒を見ていた。
内気な性格で、実は、受付のお姉さんが好き。
まだ幼い妹もいる。
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まだまだ、好きな食べ物など、いろいろ出て来ているがあえてスルーする。
昔からだが、相変わらずデータベースさんは、容赦なく調べてくれるものだ。
というか、母親の死んだ年が27歳かよっ。
亡くなったのが最近らしい。
てか、何歳で産んだんだよ。
ライナの父さん、13年前とはいえ、すごすぎる。
そのアルは、下を向いたまま、何も話さないが、とりあえず、すぐ死ぬようなステータスではないのが分かった。
HP低いけどな。
「分かった。とりあえず、そいつは守ればいいんだな」
ヒウマの言葉に、頷くギルドマスター。
「俺達の旗印だ。頼むぞ。それと、王と、城にいる王家の奪還だが」
「私が、指揮を執るよ。一応指揮官だからね」
バル隊長が笑いながら答えていた。




