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魔物の殲滅

「は?」

俺は、思わぬ結果に止まってしまった。


硬いゴーレムの攻撃が防げれば最良くらいのつもりだった。

まさか、一撃で頭が吹き飛ぶとは。


あっけに取られていた俺は、すぐに誰かの体当たりを受け、現実に戻る。

「シュン君っ! 何度も動きを止めたら死ぬよっ! 魔物の中にいるのを忘れないでよっ!」


リンが、我に返った俺の胸を軽く叩き、目の前の魔物を蹴り上げる。


「後で、私がいくらでも慰めてあげるからっ!」

可愛い事を言いながら、蹴り上げた魔物を殴り飛ばすリン。


俺は、笑いながら、槍斧を一薙ぎして、魔物を数体切り倒し、リンと背中合わせになる。


その時、初めて気がついた。

粗い息を吐きながら、リンは震えていた。

苦手な虫達の中に飛び込んで来たのもある。

無数の魔物がまだ、ゲートからわき続けている。

恐怖に押しつぶされそうになっているのかも知れない。


俺は、ふとリンが可愛く感じた。

年上の人ではある。

まあ、俺は、今までの人生合わせたら、80年は生きているんだけど。


しかし、お姉さんとして、頑張ろうとしているのが分かる。

俺は、小さいリンの頭を撫でる。

思わぬ行為に、あっけに取られた顔で見上げてくるリン。


「勝つぞ」

俺の短い一言に。


「当たり前っ!」

元気に叫び返すリン。

リンの震えは小さくなっていた。


俺は、武器を構え直す。

魔力はあまり残っていないが、空間収納から、魔力ポーションを引っ張り出し、がぶ飲みする。


襲いかかってくる吐き気を、むりやり抑える。

リンは、銀色になったムカデに短剣を投げていた。


俺は。

魔力ビットの大半をリンの周りに置き。

巨大なグロテスクな虫に向き合う。


貪り食っていたムカデが、投げ捨てられる。

次は。

一秒の間すらなく、リンを捕まえようとして、絶対結界に阻まれる。

悲鳴すら上げれず、動けなくなったリンを魔力ビットで守りながら、俺は、ゲジゲジに向かい飛ぶ。

「速さは俺の特権だよっ!」


ステータスにおいて、1800まで伸ばした速さは、伊達じゃない。

さっきは見えなかった、ゲジゲジの足の動きまで良く見える。


グロテスクな足を槍斧で切断し、絶対結界で防ぎ、懐に飛び込むと。

「行けっ!」


俺は、魔力ビットを飛ばし。


ゲジゲジの周りで一斉展開。

ゲジゲジの身体を削りながら展開する絶対結界を見ながら、凍りの矢を、無数に打ち込む。


凍りの矢は、絶対結界を通り抜け、削っている身体をさらに凍らせ。

目で追いきれない速さの足を、身体にまとった風の刃で切り裂き。


俺は一撃をゲジゲジに入れる。


大きな巨体は、一度動きを止め。

真っ二つに折れて、倒れた。


落下して行く中、魔力ビットを張りその上に着地する。絶対結界の下で、動いている魔物達に、凍りの矢を地面に放ち、むりやりスペースを作る事にする。倒した魔物の死体を収納し、場所を空けて、その場に降り立った。


地面に着地と同時に、槍斧を薙ぎ払い、さらにスペースを開ける。


その空いた場所に、リンが再び飛び込んで来た。

「シュン君の隣が一番安全そうだものっ」

笑いながら、魔物を爆散させるリン。


かなり危ない光景だが、そうも言ってはいられない。

再び、魔力ビットを飛ばし、次のゲートの破壊に取り掛かる。

まだまだ、周りは魔物しかいないのだから。


4個目のゲートを破壊した時、サラと、ガンが俺のそばにやっとたどりついていた。


「サラ、おそ〜いっ」

「お前ほど身軽に動けるわけではない。仕方無いだろう」


軽口を叩きながら、二人とも魔物を倒して行く。


リンは、両手の手甲で攻撃を防ぎながら、短剣を投げる。

サラも、5連撃で、数体を同時に倒していた。


「連発できるのは、本当に嬉しい限りだっ!」

サラは、叫びながら、瞬撃3連発15連撃などありえない動きをしている。


これだから、天才は。


この戦いで、さらに腕が上がっているサラを見て、俺はため息を吐く。

今の俺の動きは、練習の成果なのに。


この半コル(1時間)の戦いで、さらに成長しているサラを見て、羨ましく感じる。


5枚目のゲートを崩すと、魔力が渦を巻くように溢れかえり3、4体のロックゴーレムが上位種である、スチールゴーレムに変わる。


やばっと言った顔をするリンを尻目に、俺は、魔力ビットをスチールゴーレムの首近くに飛ばし、絶対結界を展開。


一気に全てのスチールゴーレムの首を跳ね飛ばす。

「シュン君が、化け物になっていくよぉ」

と呟きが聞こえたような気もしたけど、まあ気にしない。


「ラストだっ」


俺は、最後のゲートを絶対結界で、削り崩した。


「シュン殿、助かったっ!リン、ガン最後のひと踏ん張りだっ!」

叫びながら、瞬撃を放つサラ。


無茶ばかりしている。そろそろ、サラの腕が外れてしまいそうだ。

俺は、再びパーティーメンバーに回復をかけながら、最後の大仕事に取り掛かる。


目の前に広がる、無数にも見える魔物の殲滅。

無茶苦茶不味い魔力ポーションを飲み干し、俺は、槍斧を握り直す。


―――――――――――――――――――


結局、魔物の殲滅まで、さらに1コル(2時間)かかってしまった。 


俺たちは、全員お互いに支え合いながら、座り込んでいた。

「本当にいろいろありがとうね。シュン君」

完全に動けなくなったリンが、全ての体重をかけて寄り添ってくる。


軽い体重とそのぬくもりを感じながら、俺は、やりきった達成感を感じていた。


サラも、俺に寄りかかっているが、リンに押し出されているようにも見える。



心地良い疲れに身を任せていると、さわさわと、危ないところを触ってくるリン。

「でね、シュン君、私本気なんだけど。私をもらってくれないかな?おばさんは嫌?」


疲れきって動けなくなっても、誘惑してくる。リンさんは、やっぱり、リンさんだった。


そんな平和な時間を過ごしていると、ふらりと一人の少女が魔物だらけだった広間に入って来た。


猫耳をつけた、可愛い獣人の少女が口を開く。


「やっと見つけたにゃ。大変だったにゃ〜。うちのヒウマから、シュンに、伝言にゃ。ホントは来たく無かったけど、ヒウマが頭まで下げるから、仕方なく来たにゃあ。じゃあ、伝言を言うにや。

『とんでもなく面倒な事になった。すぐに、王都に帰って手を貸してほしい』だそうだにゃ」


突然現れて、意味不明のその伝言に俺たちは、顔を合わせて、首をひねるしかなかったのだった。


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