騎士たち
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見て頂いている方、興味を持って頂いた方、本当にありがとうございます。
少しずつでも面白いといっていただける物にしたいと思っていますので、もし、なにか思う事などあれば、感想で書き込みしていただけたらと思います。
あと、誤字、脱字報告もお願いいたします。
「か 壊滅だと?」
俺達が、正確には、俺とガンが蒼碧騎士団の宿舎に、騎士の言葉通り、報告に行くと、呆然と呟く騎士団隊長のアラス。
なぜか、いろいろ理由をつけて、サラとリンは宿舎に近づく事を拒否したから、仕方なく二人で来たのだが。
隊長が呆然としている中で、ガヤガヤと外が騒がしくなる。
「隊長っ!炭鉱から、黒ネズミと、巨大ムカデが出て来ていますっ!指示をお願しますっ!」
騒がしい中、宿舎のアラスの部屋に突然飛び込んで来た、騎士の報告に、アラスは、乾いた笑いを上げながら、自分の椅子に沈み込む。
「中に入った騎士達は?」
「分かりませんっ!ただ、制圧部隊は、誰一人として出て来ておりませんっ!現在、溢れた魔物は、入口警護の部隊で応戦中ですっ!!」
報告に来た騎士は泣きそうな顔をする。
「終わりか」
アラスは、狂ったかのように笑うと、自身の剣を掴む。
「私に、部隊を率いる技量が無かったのなら、死んで行った部下のためにも、私が出来る限り蹴散らそうではないかっ!」
アラスは、血走った目で叫ぶ。
その時、再び扉が開いた。
「本当は来たく無かったんだけどね。騎士達が慌てて走って来る所が見えたから、何事かと思って見に来たんだが。
・・・・相変わらずだね。その独りよがりの態度は」
「サラか?貴様か?貴様がやったのかっ!私に追い出された腹いせにっ!」
剣を抜こうとするアラスが、一瞬で吹き飛んだ。
サラの瞬撃だった。
鞘が、吹き飛んだアラスをしっかりと捉えている。
「アラス シュリフっ!全てを投げ出すのはまだ早いだろうがっ!貴様は、何を為すために騎士になったのかっ!」
サラの怒声が響く。
「何もできぬではないか。もう、騎士団は壊滅したのだ」
「無くなったのなら、作り直せばいい。そして、屍になろうとも国を守る。それが、死んで行った騎士達の手向けになろう。アラス殿はまだ生きているのだから」
寂しげにアラスを見つめるサラ。
アラスは、うつむいたままだった。
「王都に帰るがいい。私も力になる。私が倒れるまでに、増援が来る事ををお願いするぞ」
サラは、笑うと、部屋を出る。
俺とガンも宿舎を後にした。
誰も居なくなった部屋の中で、剣を握り直すアラス。
唇を噛み締めて、震える。
「悔しくて、悔しくて、どうしようも無いって顔だな」
アラスが顔を上げると、黒い服の男が立っていた。
「帰っても、部隊の再編なんか出来はしない。君は終わったよ」
その言葉に、剣を薙ぐアラス。
しかし、その一撃は、光に変わった。
粉々になった剣先とともに、光が舞い散る。
「ただね。君が父上の立場になれば、解決すると思わないかい?」
アラスが顔を上げると、笑いながら、男は呟く。
「今なら、全て上手く行くよ」
それだけ言うと、男はその場から消える。
アラスは、柄だけになった剣を握りながら、肩を震わせ笑うのだった。
――――――――――――――
俺たちが、鉱山の入口に急いで再び来ると、すでにそこは戦場だった。
ネズミや、ムカデに襲われている兵士達。
まだ外に出て来ているのは、百匹程度だが、次々に入口から出て来る魔物達。
サラは剣を抜く。
俺も槍斧を握りしめる。
「行くよっ!」
俺も頷き、魔力ビットを展開する。
魔力回復ポーションを一気飲みした後、地面を蹴る。
ムカデの酸に溶かされ死んでいる兵士を踏み抜き、俺はムカデを斬り上げ、空中でバラバラに解体する。
サラは、ネズミの目を一瞬で貫き、瞬撃で吹き飛ばす。
地面の上を飛んで来たネズミを、叩き潰すガン。
「踏ん張れっ!ここが壊滅したら、先はないぞっ!今こそ騎士の聖約の時と心得よっ!」
サラの声に、入口を守っていた兵士達から歓声が上がる。
サラが、次の瞬撃を繰り出すが、三連撃の後、ふらついてしまう。
とっさに、リンに支えられる。
「無茶しすぎ。一日何回使ってるのよ。ソレ、身体に負担かかるんでしょ?」
「今しないで、いつすると言うのか。蒼碧は嫌いだが、優秀な騎士達だった。彼らのためにも、この魔物を王都に行かす訳にはいかないのだ」
呟くサラ。
その二人の会話が聞こえてしまった。
俺は、大きく息を吐くと、地面に槍を突き刺す。
「マップ展開。全敵マーカーチェック。魔法誘導とリンク。魔力ビット全展開」
馬鹿みたいな数の魔力ビットが俺の周りに湧き出る。
「魔力全開放っ!」
無数の魔力ビットから、嵐のように魔法が飛び交う。
8百の火線からなる、魔法の嵐。
一気に数を減らす魔物達。
ビットは、鉱山の中にも入り、魔物を殲滅させて行く。
魔法に貫かれても、まだ生きている魔物にとどめを刺して行く、騎士達。
俺は、じっと目を瞑ったまま魔力ビットを制御する。
何分か。何秒か。
魔力を振り絞った俺は、意識を失うように、眠りに落ちたのだった。
――――――――――――――――
「私がもらうからねっ」
「いや、確か、シュン殿には心に決めた方がいるはずだぞっ」
「あら、二人目でもいいじゃない。サラも一緒に来る?気になってるんでしょ?彼の事。彼、きっと稼ぐわよ〜」
「結局、そこなのだな」
そんな会話が聞こえて来る。
頭の下がすごく柔らかい。
「ひやっ!」
もそもそと頭を動かすと、リンの可愛い声が聞こえる。
俺が目を開けると、笑っているリンの顔があった。
本人はハンターというが、危ない事なんてしなくてもいいと思うくらい、可愛いと思う。
緑の少し釣り上がった目に、緑かかった髪の毛。
小さな唇。
少しドキドキしてしまう。
「キスする?」
リンの声に、俺は現実に一気に引きずり戻され、身体を起こす。
リンの膝枕から。
「え〜。ショック。いい感じだったのに〜」
リンが、膨れているのを無視して、周りを見る。
火を焚べながら、鉱山の入口で、野営をしているところだったらしい。
「助かった。本当にお前は強いな」
ガンが、笑いながら火に薪を入れている。
「シュン殿のおかげで、魔物は全て討伐できた。しかし、まだ、鉱山の中には、凄まじい数がいるからな。警戒をしているのだ」
サラは、笑顔だったが、しばらくして真面目な顔で炎を見る。
「シュン殿には、聞いて欲しい。
私は、実はこの辺り、北の警備を任されていたのだ。部隊も、それなりのものだった」
「サラね、白銀騎士団、警備隊の隊長だったんだよ。超エリートっ」
「そんな事はいいんだが、ある日、遠征の話しがあってな。西に行って欲しいと言われた。だがな、この鉱山が、当時から、魔物の湧き方がおかしい事もあって、断ったんだ。そうしたら、騎士団を解散させられた」
パチッと火の音がなる。
「理由は未だに良く解らない。その後、蒼碧騎士団が来た。私はそのまま、解雇だった。今、ここにいるのは、私のわがままで、ここで、名誉挽回できれば、騎士に戻れるのではないかと言う打算なのだ」
火を見ながら、動かなくなるサラ。
「とりあえず、俺は、この依頼をさっさと終わらして、王都に帰りたいだけなんだ。だから」
俺は、サラに手を差し出す。
「俺を使って、ここが落ち着くなら使ってもらって構わないし、出来る限り手は貸す」
俺の言葉に、サラは笑い。
「すまないな。ただの愚痴だ。忘れてくれ」
俺の手を握り返したのだった。
その後もいろいろと話しをした。
リンのトラップにかかり、全身泥だらけになった話し。
ガンの、鉱山での男同人の掛け腕相撲の話しで笑う。
ちなみに、リンは結婚経験ありと言われて、俺は、固まってしまった。
「まあ、私がまだ10才の時だったからね〜。親に売られたみたいだったけど、今は気にしてないよ〜。もう、純白のお嫁さんにはなれないけどねっ」
カラカラと笑うリンは本当に可愛い。
本当にいろいろと話しをしながら、夜は深けていくのだった。




