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闇の中

最悪だった。


「確かに、確認した。全く、父上の依頼では無いだろうから、誰の独断か調べる必要があるな?」


ギルドでもらった、指名依頼の依頼書を宿舎の前にいた兵士に渡したら、隊長の前に連れて来られたのだが。


その隊長が。〈アラス シュリフ〉だった。


そう。ライナの金髪の兄。俺の首に剣を突き付けた、あの剣士だったのだ。


「しかし、今の軍は、君のために人手を割ける状況にない。君一人で洞窟は潜ってくれ。洞窟の出入りは許可しよう」


金髪の兄は、そう言うと、再び書類に視線を落とす。


俺はただ軍の宿舎を後にするのだった。


「挨拶も無しとはな、ライナを任せなくて本当に良かった」


部屋を出て行く時に、そんなつぶやきが聞こえた。


―――――――――――――――――――――――――


鉱山の前に来ると、兵士が見張りとして立っていた。

「話しは聞いている。冒険者。今は我々の部隊が魔物の討伐中だ。邪魔するなよ」


そう言われながら、俺は、鉱山に潜る。


狭い。 二人が並んで歩けるくらいの道幅か?

高さは少しあるが、所々は170少しの背丈の俺ですら屈まないと通れない場所もある。


そんな中を歩いていたら、前方からガチャガチャと鎧の音が聞こえて来た。


「何してんだよ」


音の方に行って見て、思わず出たのはその言葉。


鉱山だから、休憩が出来る小さな広場は、所々に確かにある。

しかし、この狭い場所でふざけた人数が動けるわけがない。


なのに。

目の前には、30人近い兵士がガチャガチャと鎧を鳴らしていた。


兵士達の腰に差さっている武器もロングソード。

満足に振るえない武器を持って、明らかに下がれないこの行軍は、デスマーチだ。


明らかに間違えでしかない行軍。

しかし怖いのは。

「怯むなっ!我らは、蒼碧騎士団ぞっ!」


その一言で、さらに行軍を開始しようとする兵士達かもしれない。


最初の兵士が倒れても、狭い中びっしりと兵士がいるため、交代すらできず、先頭の兵士は死ぬしかない。


俺は、頭を思わず抑える。


はっきり言ってこの兵士は邪魔だ。


先頭は戦っているのか騒がしいが、最後尾からでは何も見えない。


「馬鹿か?」


「あんたも、そう思うかい?」


俺の漏らした独り言に返事が帰って来て、思わず声のした方を見ると、軽量の鎧を着た、女性の剣士と、革の胸当てをした軽装の女性、裸に胸当てだけの体格のいい男がいた。


「稼げるかと思って来て見たら、この光景だよ。本当に、騎士団は何をしているのやら」


女剣士は、肩をすくめる。


「奥に行きたいなら、私達と一緒に来ない?魔法が使える仲間が本気でほしいんだっ」


軽装の女性も話しかけて来る。


「このガンが道案内をしてくれるから、道には迷わないわよっ」


ガンと呼ばれた男性は、苦笑いをしていた。


「元鉱山夫だからな。どの道がどう繋がっているかは分かるぞ」


その言葉に俺は少し考え込む。

明らかに邪魔な兵士達のせいで、魔物の湧き具合が解らない。


マップは、すでに道と言う道が真っ赤であるのだが、今のんびり話しが出来ているように、マップの表示ほど見える限りは魔物だらけでは無い様子だし。

まあ、とは言っても常に出ている魔力ビットが、確実に周りの雑魚を蹴散らしてくれてはいるのだが。


だからと言って、兵士が道を塞いている以上、抜け道、回り道は知りたい。兵士の数から、ここ以外も詰まっているだろうし。


早道をしたくて、ナビ任せに脇道に入り、行き止まりに立ち往生するなんて、よくある事だ。

こんな依頼なんて、さっさと終わらせて、エルフの里に行きたい。


俺は、いろいろ考えて、パーティーに参加する事にした。


「ただ、一つだけ条件がある。俺は気が乗らなくなったら、パーティーをぬける」


ただ、それだけを伝える。


西の砦であった時みたいに、自分より先に、危ない魔物にこの人達が突っ込んで行くのは本当に勘弁してほしい。


「何よ、その条件っ!」

「信用はしないと言う事か」


苛立ちを見せる3人。


「俺が気まぐれなだけだ」


その一言に、引いた顔を見せる3人に、俺は素っ気無く答えるのだった。


「だから、いつでも置いて行ってくれ」


――――――――――――――――――


「だぁっ!」


女性剣士の一撃で、ネズミ型の魔物が、倒れる。


ドン引きされた、パーティー結成時の挨拶はさて置き、俺たちは4人で、鉱山の探索を始めた。


始めに声をかけて来た、女性剣士は、名前をサラと言った。


多分、騎士団の関係者だと思う。

太刀筋が、綺麗であった。

武器は、ショートソード。盾は持っていないから、本当はロングソードを使っているのかも知れない。

160cmくらいの身長で、剣を振るうと揺れる物を持っていた。


ガンと言われた男性は、斧を振るう。

こちらは、盾持ち。


ただ、力任せに振るう斧の威力はすごく、時々、地面がえぐれるほどである。


鉱山夫らしく、筋肉の塊であった。

身長も俺より高い。180cmはありそうだが、頭上が低いところは、屈んで歩くため、大変そうだった。


「あの辺、崩れ易そうだから、気をつけてねぇ」


もう一人の女性、リンが近くの壁を指差す。


鉱山やら、洞窟を探検する専門の冒険者らしく、本人は、ハンターと言っているが、まあ、ゲームで言うところの、盗賊、シーフである。


見ただけで、道やら、壁のもろくなっているところが分かるらしい。


本人は、勘と言っているけど。


身長は150くらい、見た目は、幼く見えるが、ダガーを両手で扱い、体術メインの戦い方をする、なかなかの強さである。


で、俺は、そんなパーティーの後ろから、槍と魔法で、突くだけの楽な位置にいた。


とりあえず、時々魔力回復薬を飲みながら、魔力ビットはずっとウロウロさせて、魔物を狩り続けている。


なかなかに魔物の数が減らない。


兵士に遭遇すると、兵士達に邪魔扱いされ、気分も悪いし、イライラするので、極力メインの道を避けながら、奥へと進む。

4人での探索は順調に進んでいたのだった。



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