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竜討伐

4月は毎週投稿になります。

楽しみにしておられる方にはすみません。

言い訳を許してくださるなら、ちょっと忙しいので。

あれから何日か経ち、俺はトウの港町に帰る事にした。

この数日、慌ただしかった。


家が無いため、高台に大きな集会所のような建物を作った。

無事だった村人は、そこから村の後片付けに行ってもらい。

ミュアが、大量の炊き出しを作り。

俺は、魔力ビットを飛ばして周辺の警戒と、魔物狩り、水を空間収納経由で運んだりしていた。


アヤさんが手伝おうとするので、あわてて止める。

気持ちは分かるけど、妊娠もしているのだし今はじっとしていて欲しかった。


そんな日々が続いていたが。

「引き留めちまったな。ありがとうよ」

ダイクが夜に飲みながら呟くように言った。

波が来たすぐの頃に比べたら、大分元気になったように見える。


酒の入ったコップを見つめる。

「後はなんとかならぁな。娘に笑われんように、立派な村にして見せるさ」


ダイクはコップを俺につき出す。

「この出会いと、友に。そして娘に」


ダイクは、力一杯笑いながら酒をあおる。

強い人だ。

俺も、コップの中の酒を喉に流し込むと、ダイクにつき出す。

「友に、そして、未来に」


俺たちは遅くまで飲み明かしたのだった。


―――――――――――――――――

トウの港町に戻ると、多くの人が荷物を抱え、街から出て行く所だった。すさまじく、街が騒がしい。


「何かあったのでしょうか?」


ミュアが聞いて来るが俺は首を振るだけしかできない。

荷物を載せた台車を引いている商人を捕まえる。


「何があったんだ?」


「あんたら、知らないのかっ?近くの村を沈めたサーペントがここに出たんだよっ!あいつは気まぐれで、大津波を起こしやがるっ!あんたも命が惜しかったら逃げるのが一番だぜっ!」


商人は、それだけ言うとすぐに走り出す。


俺は、拳を握りしめる。


「マスター、行きましょう」

ミュアが、俺のその手を握る。


心の中では、分かっている。倒した所で、死んだ人は帰らない。

けど。

「行くぞっ!」


俺はミュアに告げ走り出す。

逃げ出している人達をかき分け走る。俺が港に着くと。


冒険者達が、港に詰めていた。

「魔法、行けぇっ!」

「「ファイアボール!!」」


海から首を出したサーペントが、周りに水を吐き出していた。


サーペントの周りには、舟の残骸が散らばっていた。


陸から打ち出された魔法は、サーペントに命中するが、サーペント自体は魔法使い達に頭を向け顎を開く。


「助けるっ!」

俺は魔力ビットを発動。魔法使い達の前に絶対結界を張る。


全てを押し流す、水流を防ぐ。


「助かった!Bランクのファイスと言う。魔法隊のリーダーをやらしてもらっているが、全然ダメだっ!堅すぎて、魔法が効かないっ!」


一人の魔法使いが叫ぶ。

緑の髪をした青年が、すぐに魔法使い達を分散させて行く。


近くには行けない。普通なら。


俺は、薄く笑うとステータスの()()を行う。


力が1500を越えた辺りから、力と速さは普段縛りを入れている。でないと、全ての物を握りつぶしかねない。


しかし。今は。


力一杯踏み込み、波止場を破壊しながら俺は飛ぶ。


「お前は許さんっ!」


どうせ届かないと思っているのか、全く俺を気にしていないサーペント。


「甘いんだよっ!」

空中で、結界を足場にして、俺はもう一度飛ぶ。


遥か昔、アニメでみた動きを自分がするとは思ってなかったが。

今のステータスならできる。


自分が産み出した結界を蹴り、さらに飛び、サーペントの真上にたどり着く。


「死ねやぁっ!」


竜骨槍斧(ドラゴンハルバード)を握りしめ、俺は再度、空中を蹴り、落下する。


激しい衝撃音と共に、サーペントの頭に槍が刺さり、サーペントが暴れ出す。

周りの海がうねりを上げ、壁のように盛り上がり出す。

「やらせねぇよっ!」


俺は、怒りを全て込めて風魔法をサーペントの頭の中に叩き込む。


硬い鱗のために弾けることが出来ず、暴れる風がサーペントの中身を切り刻む。


辺り構わず暴れるサーペント。


「しぶといっ!」

俺は、さらに魔法を叩き込む。


追加の風魔法はサーペントの心臓を確実に捉えた。

口から、血を吐き出しその動きを止めるサーペント。

周りの壁のように盛り上がった水が崩れ。


サーペントが倒れ出す時、空中に誰か浮いているように見えたが、確実する暇もなく、俺はサーペントと一緒に海に落ちた。


風魔法で、空気を確保し。

刺さって抜けなくなった槍をサーペントごと回収する。


「ダイク。あの子の仇はとってやったよ」


俺は、空気の幕に包まれたまま、小さく呟くのだった。

――――――――――――


凄まじい飛沫を上げながら、沈んで行くサーペントを見ながら、空中に浮いていた『皇の』は、うっすらと笑う。


「サーペントの『ダイダルウェーブ』確かにもらったよ。

あの子のスキルが全く役に立たないモノだったのは、誤算だったけどね。まあ、今回はこれくらいかな」


そう言い残すと、『皇の』は空中に溶けるように消える。


後には、街人の歓喜の声に包まれ喜び抱き合う冒険者達だけが見えるのだった。


「ありがとう。とにかくお礼を言わせてくれないか」


俺が陸に戻ると、魔法使い達を指揮していた冒険者が、俺に手をさしのべて来る。

「いや、大した事はしてない」

俺は、素っ気なく答える。

実際大したことはしていない。

サーペント退治は、自分の私怨がかなり入っているし。

「いやいや、サーペント単独退治はAクラス冒険者でも難しいよ」


あきれたように答える冒険者。

それよりも俺は、ひたすら周りを見回す。


いるはずの人がいない。

俺は、もう一度周りを見る。

絶対に手の届く範囲にいたはずの彼女の姿が見えない。


「誰か探しているのかい?さっきの戦いでいろいろな人が海に沈んだけど」


余計な一言だ。ファイスと言ったか?

俺は、さっきから話し掛けて来ているBランク冒険者をにらみつけ、マップをもう一度確認する。


ミュアで検索をかけるも、街の中でヒットしない。


「ミュアっ!どこだぁっ!」


俺は、心が半分になったような寂しさに襲われ、叫んでいた。

しかし、返事は全く聞こえて来る事は無かった。



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