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殲滅戦

バル隊長が放った矢が暗闇を切り裂くように飛んで行き、爆発する。

爆発の明かりでうごめく敵が少しだけ見える。


「メインは、コボルトだっ!飛び道具が少ない敵のはずだっ!安心して対処しろっ!」

一目見て、敵を判断したバル隊長の激励が飛ぶ中、一斉に他の兵士達が矢を放ち始めた。


コボルトも魔法という遠距離攻撃はある。それを教えないバル隊長に少し疑問を覚える。

しかも、あいつらなぜか火魔法しか使えないし。


俺が少し苦手にしている敵だ。

ライナ達をやったのもあいつらだしな。


矢によって、倒されていく敵に、一気に戦意が高まっていくのを感じる。

さすがだなとバル隊長を見ると、本人は厳しい顔をしていた。


なぜか、その横にリンダもいるし、二人がこっそり手を握っているのも見ない振りをする。


リンダは明らかにバル隊長が好きみたいだし、まあ、お祝いしてあげてもいいかも知れない。


俺は、ミュアを見て一つうなずく。

ミュアもうなずき返し。


弓を構える。

「バル隊長、俺たちで一撃入れて、魔法で削れるだけ削る。その後で、指揮を頼む」


俺の言葉にこっちを見るバル隊長とリンダ。


ミュアの弓に魔法矢が発生し、さらに魔力が集まっていく。


ミュアも慣れたもので、自分のギリギリまで魔力を矢に込める。


ぱん という鈍い音と共に、光の矢が走って行き、森の木々をなぎ倒して一直線にどこまでも飛んで行った。


巻き込みありで、やれたのはざっと200弱か?

魔物達が幅広く展開し初めていたからか、あまりやれなかったな。

魔力切れになりかけているミュアの頭を撫で、俺も魔力ビットを展開する。

数は20個 俺は火の魔法が使えないため、広範囲の風魔法を中心に使いながら、さらに分散しようとする魔物達を切り刻み中央にまとめていく。



ビットシステムのおかげで、簡単な意思で、魔力ビットが俺の思いに近い動きをしてくれる。


魔力ビットから来る大量の情報もデータベースさんが処理し、マップに反映されていく。

しかし、魔力切れが近い。

凄まじい速さで魔力が減って行く。

全力発動で、MP6000が一分持たない。


俺もその場にすぐに座り込む事になる。魔力切れ。意識が飛びそうになるのを必死にがまんする。


魔力ビットが全て霧散して消えていった。

多分、300匹は倒せたはず。


「放てぇ!」

明らかに減った魔物の数を見ながら、バル隊長の指揮で止まっていた矢が再び一斉に放たれた。


矢が魔法が雨のように魔物の群れに降り注ぐがあまり数は減っていない。

矢の威力が低すぎる。

コボルトなど、D,Eランクの魔物は死ぬが、Cランク相当の魔物には、ちょっと痛いくらいでしかない。

その中で、確実に高ランクの魔物を撃ち抜くバル隊長はさすがというところか。


「来るぞっ!乱戦になるっ!準備開始っ!」

バル隊長が叫ぶ。


俺は、このタイミングでミュアの唇を奪う。

ミュアも唇を返してくる。

[譲渡]で、魔力が回復し。俺とミュアの魔力、体力、気力が回復する。

ミュアを俺の心の中に宿して、俺は防壁の下に飛び降りる。


「兵士はまだ出るなっ!ギリギリ、防壁にとりつかれるまで、矢を放てっ!シュンを誤射するなよっ!」


俺が敵に突っ込むのを見ながら、バル隊長の指示が聞こえた。

その声を聞きながらふっと笑みが浮かぶ。さすがバル隊長。助かる。乱戦になったら、今の俺の腕だと味方も切り裂きかねない。


竜骨槍斧(ドラゴンハルバード)は、周り全てを切り裂きながら舞い始める。

ミュアの矢は俺から離れた所で、城壁に張り付こうと危ない動きをする魔物を射抜いていく。

俺の近くに飛ぶのは、味方の兵士の矢ばかり。

防壁からのフレンドリーファイアは、絶対結界で防ぎながら、再び俺は舞う。


背中に飛びかかって来た魔物を魔力ビットが撃ち抜き、目の前の敵を凪払う。


数は数えない。

気が遠くなるから。

俺のいる場所だけ、ぽっかりと穴が空く。


「シュン君は、どこにいるか分かりやすいからいいな」


バル隊長は笑いながら、呟く。

半分は削れたか。

城壁の上からバルは冷静に戦況を確認する。


父上からは、シュンがそちらに行く、注意しろと手紙が来ていた。

自分は、何をたった一人にそんなにピリピリしているのかと甘く考えていた。

だが、今一緒に戦線に立ち、思うのは、味方である安心感と恐怖。


いきなり湧いて来た、ジャイアントバッファローの首を一瞬で落とす姿を見ながらバルは一人でうなずいていた。

『国の敵として現れたら、奴は4S以外止めれない』

父上の言いたい事が分かる。

彼ら二人で1000の魔物が倒されているのだが。

人間はそこまで強くない。

彼一人が1000人を超える強さで、自分の前に立ちはだかれば決死の覚悟であたる必要を感じる。

敵にすれば、竜よりも厄介な存在。


まだ舞い続けるシュンを見ながら、ここで彼には死んでもらった方がよいのではないかと悪魔が囁く。


唐突にシュン君がふらつくのが見えた時、ふっと笑みを浮かべて私は叫んでいた。

「開門!前衛部隊突撃っ!シュン君を助けろっ!後衛、衛生部隊待機っ!すぐ出れるようにしろっ!」


自分の頬を叩き、バルは再び前を向く。

あり得ない考えだ。今彼を失えば、国は。いや、世界が滅ぶような気がする。


バルは再び自分を戒めて戦況を見極めるのだった。

―――――――――――


きつい。

最初は良かったのだが、5分過ぎたあたりからつらくなってきていた。

朦朧(もうろう)とし始めた意識の中、一人で無数の敵相手に無双している漫画を思いだし、この嘘つきが。と俺は悪態が出る。


全力で、ここまでの大軍を相手にするのは、初めてだった。

魔物だから皮膚は硬いし、速さも人間よりも圧倒的に速い。

味方が死んだからと怯む事もなく、次々と襲いかかって来る。


「ステータスはカンストオーバーでも、スタミナとやる気は人並みなんだよっ!」


俺は槍斧を横凪に払いながら、いつの間にか泣き言を叫んでいた。

最初に比べ、魔力ビットの展開範囲が小さくなっている。


原因は自分のスタミナ切れで、魔力ビットが常に自分の周りをガードしている状態で、攻撃に回せなくなってきていた。

魔物の攻撃が当たる回数が増えて行く。

魔力ビットが絶対結界を張っているため、自分にダメージは無い。

しかし、反撃しきれる余裕も無い。

360°全て敵の恐ろしさだった。


俺の足がもつれてよろめいた時、自分の周りに何本も矢が飛んで来て、全て敵から外れる。

ミュアが焦っている。今にもこっちに来そうなのだが、俺は来るなと強く止める。


まだ自分だけならなんとか逃げ出せるが、ミュアが囲まれたら、生き残れない。


そんな時、バル隊長の叫びと共に、騎士が一気に砦から出て来た。


一時的に突撃してきた騎士に巻き込まれる形をとりながら、俺はとりあえず砦に帰れた。

「震えましたっ!後はお任せくださいっ!」

帰り際に若い騎士に声をかけられる。

俺はへとへとで、とりあえず手を上げて返事をするしかできなかった。


「マスターっ!」

砦の門をくぐるとミュアがすぐ飛び付いて来る。


疲れが来ていた俺はそのまま、しりもちをつきながら、ミュアを抱きしめる。

小さい体が俺の胸の中で震えていた。


「さすがです、シュン殿。まさに鬼神の如くですね」


衛生部隊の一人が、甘い果物の汁を水で割った甘い水を渡してくれる。


「ありがとう」

俺はミュアを抱きしめたまま、水を飲んで、一息つく。


能力とやる気は別。

誰の言葉だったか。

このままミュアを抱いて動きたくはないが、行かないと大量に騎士が死ぬ。


「まだ、恋人を抱いていろ。ロリコン」


俺が再び動こうとすると今度はリンダが俺の体を押さえた。

「半分減らしてくれたのだ。私達も頑張らなくては、何のための騎士だ」


リンダは笑いながら、門の先を見る。


いや、リンダ。

お前、格好いいが、まだ騎士じゃないし、何より、前線部隊でもなく、衛生部隊の護衛だからな?

そして、お前はお仕置きが欲しいのか?

と思うが、おもいっきり激しくミュアとキスしたことを思いだして、ロリコンの一言については何も言い返せなかった。


10 1 ちょっと前半部分変更しました。

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