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大切な仲間

「行ってきます~」

 僕は、いつもの朝に、いつも通りに元気に孤児院を飛び出る。

そして、いつも通り配達を済ませた後、修道院には戻らずに、冒険者ギルドに向かう。

冒険者ギルドの中で、【炎の楔】のメンバーの人と一緒に落ちあうためだった。

あの盗賊遭遇事件から、変わった事と言えば、【炎の楔】と一緒に冒険するようになった事と、配達のお金がかなり増えた事、肉屋のおじさんに納品しなくなった事だった。


「僕達と一緒に行動するのだから、冒険者支援者として一応、ギルド登録するから。荷物持ちとしての登録だけどね。これからは、胸を張って外に出ていいよ。ただ、僕たちと一緒の時だけね。一人では絶対に外に出ない事。いいね? あと、報酬の件だけど、ウサギとかは僕たちが相場の値段できちんと売り付ける代わりに、均等配布。これは、肩代わりしたお金の支払いと思って」

と、優しそうな顔の兄さんは、皆で町に出る最初の日に言ってくれた。

顔も優しそうだけど、正確も本当に優しい人だった。

ただ、お金に関しては少しシビアみたいだったけど。

優しいお兄さんはキシュアさんと言って、このパーティの中での回復役をやっているらしい。

後は、お金の管理もしているみたいで、時々剣士であるカイルに「酒代」と言ってにこやかに笑っているのを何回も見てる。


そんなわけで、【炎の楔】というパーティの3人と一緒に狩りに行く事になったんだけど、正直言えてしまえば、狩りをする数も、自分の懐に入るお金も一人でやっていた時に比べたら、少なくなってしまっていた。

借金の返済をしているせいもあるんだけど、今まで、ほぼ毎回ウサギを持って帰ってこれていたのは、僕のスキル、データベースのマップ表示のおかげだし。


ウサギのいる場所とか、魔物のいる場所を瞬時に教えてくれる、このスキルが絶対おかしいのは僕でも分かる。

ほいほいと他人に教えてはいけない気がして、僕は3人にもこのスキルの事は黙っていたのだった。


「このスキルを使って、冒険者の案内をしてあげるだけで、死ぬまで食べて行けます。」

なんて音声さんも言ってたし。


だから、僕は魔法が使えるだけの子供として、みんなについて回る事にしていた。

けど、結局のところ、僕の案内も。魔法もこの人達には、必要ない事が初日から分かってしまった。


「あっちに兎かな?魔力反応があるわよ」

「よっしゃ。あっちか」

お姉さんのレイアさんが言うと、剣士のカイルさんがちょっと移動する。

そして、キシュアさんが何か魔法をかけた瞬間、ウサギたちが動けなくなり。

カイルさんがすぐに飛び出して行って。帰って来た時には、その手に首が切られた兎が捕まれていた。

剣士であるカイルさんの速さはとんでもなく、僕よりも圧倒的に早い。

速さも、100超えになってるはずなのに、カイルさんと競争しても負けてしまうくらいだ。

キシュアさんは、冷静に状況を見ているし、レイアさんの補助魔法は的確すぎて見ていて感心してしまうくらいだ。

はっきり言ってこの3人は無茶苦茶強い。冒険者てこんなに強いんだと憧れるくらい強い。


しばらく回って、兎を何匹か倒し。途中で、見つけてしまった僕の身長くらいのイノシシまで仕留めてから、休憩に入る。

絶対僕一人だったら、倒そうなんて思わない奴だ。


イノシシの大きさにびっくりしながら、休憩をしていると。

「さて、始めようかね」

キシュアさんが僕を見る。

その目を見て、僕はキシュアさんから目をそらす。

実は、僕はこの休憩時間がちょっと面倒だった。

 

だって冒険者としてのお勉強タイムだったから。


キシュアさんは、僕に向き合うと、僕が外に出てウサギ狩りをしていた事。

つまり、密漁をしていた事で、もう一度僕は怒られる羽目になってしまった。


「君がやっていた事は、❲密漁❳と言って、王都の法律で、処罰対象になる事なんだよ。本当に悪い事だから。警備隊に捕まるし、時には、死刑になるくらいの重罪になる事もある。とりあえずは、今回の事は、門番さんもうまくごまかしてくれてるし、僕たちも何も言うつもりは無いけど、もし、万が一王都の兵士に見つかったら、本当に大事になるから、絶対にしない事。いいね?」

何回も、何回もそんな事を言われて、僕が何度も頷くまでその説教は続く。

そして、僕が何回も、分かりましたと返事をした後で、キシュアさんは、優しい目をしたまま、続けて行く。

「魔物はね、群れで生活している。だから、一人で狩りをしていたら、大量の魔物にいつの間にか囲まれて、死んでしまうなんて、本当に良くある事なんだよ。

何人も、それで死んでいるんだからね。僕たちの知り合いも。。死ななかっただけ、運が良かっただけと思っていた方がいいよ。それとね、もう一つ」

キシュアさんの顔がひどく寂しそうに見えたような気がする。

「魔物はね、狩りをしている最中に、大軍で群れる事があるんだ。大進攻とか、大進撃って呼ばれる物だね。それも、ソロ狩りをしてる最中に起こる事が多いんだ」


それを聞いて、カイルがぴくりと顔を動かす。

「大進撃は、もう食い止める事は出来ない。逃げるか、死ぬか。100体以上の魔物と戦おうなんて、絶対に思ってはいけないよ。大進攻は、冒険者の数さえそろえればなんとかなるけれどね」

少し、寂しそうな顔でそんな事を教えてくれるのだった。


そんなお勉強会だけど、いつも3人がかわりばんこに先生になってくれて、3人とも担当が違っていた。

カイルさんが先生の時は、剣術。武術。武器の扱い方を教えてくれる。

「剣じゃあないなあ、短剣ならまだマシだが何か違うんだよなぁ」

こん棒とか、いろいろな武器を木で作ってひたすら振らされ続ける。

そう。僕の腕が上がらなくなるくらいまで。


レイアお姉さんが先生の時は、魔法を教えてくれる。

「火の魔法が一番強いんだけど、シンは使えないのよね?仕方ないから、風魔法を中心に魔法の戦い方を作りましょうか」

と風魔法を中心に、魔力切れになるまでいっぱい練習させられる。


キシュアお兄さんが先生の時は、座学と言えばいいのか、本当のお勉強。

「魔法はね、発動後に空白時間があるんだよ。シンは無詠唱みたいだけど、どうしてもその空白時間はあるからね。体で覚えておかないと、誰かが死ぬからね。修道院での回復の奇跡じゃあ、体感できないから。」

と、魔法を使う上での注意する事とか、魔物の事。町の事なんかを教えてくれる。


いつも、魔力と体力が尽きた状態で孤児院に戻って、へとへとのまま、ちょっと寝て魔力を回復させては、また、回復の奇跡をこなして1日が過ぎて行く。

最近は、晩御飯も食べずに寝てしまう事も多くなってた。


はっきり言う。

しんどいよっ!子供いじめだよっ!


けど、3人とも優しくて。

真剣に教えてくれるから、僕も真剣に習っていたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーー


「本当にあの子がんばり屋さんよね」

「ん?シンの事か?」

「そう。あの年で無詠唱、回復、結界、風魔法使いなんて、天才よね」

レイアとカイルは宿屋のベッドの上で話しをしていた。

「今は、まだまだだが、多分武器での近接戦もいけるぞ。あいつは。将来は、Aランクに成れる器かもな」

カイルは、レイアを引き寄せながら、呟く。

「あの子見てたら、子供が欲しくなっちゃった」

レイアはカイルに優しく口づけをする。

「あいつの世話が一段落したら、王都にまた移動して、引退気味にゆっくりするのもありだな。キシュアにも話して見る」


二人は、くすっと笑うと、再び口づけを交わすのだった。


ーーーーーーーーーーーーーー

「ほら、行くぞっ!」


カイルに連れられて、イノシシ狩りをする事になってしまった。

ものすごい、怖い。だって、僕より大きいんだよ?


「強化魔法がかかったら、すぐに一撃。安物の槍だから、絶対ひねるなよ!折れるぞっ!」

カイルの怒鳴り声が、僕が切り込み役な事を伝えてくる。


「行くわよっ!」

レイアお姉さんの魔法がイノシシの足元に着弾。

同時にキシュアお兄さんが僕に強化魔法をかける。

「おらっ!行けぇ!」

カイルの声に押されて、イノシシに向けて走る。自分が早いっ!

数歩で目の前に来た感覚。何も考えないで、僕は槍をつきだした。

鈍い手応えと同時にイノシシの目を貫く。

「力一杯引けっ!」

カイルの声に槍を引き抜く。

その僕の前で、イノシシの頭が地面に落ちた。

カイルがロングソードを軽く振り、血を飛ばしていた。


「うん。お前はやっぱり槍だな。戦い易いのは、折れにくいハルバードだから、今度一緒に買うか。」

イノシシの傷を見ながら、カイルは呟いていた。


僕は、初の大物との近接戦で緊張していた体から力が抜けて行くのを感じて、座りこむ。


「良く頑張りましたっ。」

レイアお姉さんが、僕の頭を抱いて、ぎゅっと抱きしめてくれる。


「練習も次の段階になりますかね」

と、キシュアお兄さんがちょっと怖い事を言っていた。


その日から、今度は、僕も戦闘に参加する事になった。

槍戦斧で相手を突き、払い、魔法を使い相手の目を潰したり、回復魔法を使ったり、戦闘中はカイルもレイアさんも、キシュアさんも怒鳴りながら僕に指示を出してくる。


できたら、頭を撫でたり、ぎゅっとしてくれたり。

出来なかったら、怒鳴られた後、徹底的に反復練習をさせられた。


でも、それが命のやり取りである事を体で、感覚で覚えて行った。

キシュアさんの言葉は忘れないと思う。


「人はね、どんなに強くなっても一秒で死ぬんだよ。だから、僕達、回復と支援担当は魔法の時間を把握するんだ。支援魔法は消える前にかけ直す。回復魔法は、間に合わない時間が出ないように、分散してかける。一秒空白があれば、人は死ぬよ」


凄く悲しい目で、僕に教えてくれた時、なんだかすごくそわそわしてしまった。


レイアお姉さんからは、

「派手に魔法をばらまくと、相手が見えなくなるの。そしたら、終わり。誰かが死ぬわ。魔法はあくまでも、支援。もしくは、止め。どんなに強力な魔法を覚えても、その事は忘れないでね」


と言われた。


カイルからは、

「前に立つ時は、覚悟を決めろ。仲間を絶対に信用しろ。自分が仲間を疑った時、信用しきれなかった時、自分の命は終わる。前に立つ者の命が終わる時は、後ろにいる者の命が終わる時だ。忘れるな」


と、僕の体と頭に、3人とも、戦い方、避け方、どこにいたらいいのか、全て教えてくれた。

僕は、3人について行くために、必死になって覚えて行く。


そんな日々が何日も過ぎ、仲良くなった僕はついに自分のスキルの事も3人に話したけど、3人とも、

「絶対に他の誰にも話すな」

と釘を刺された。


大変だけど、すっごい楽しい日々は一気に過ぎて行った。


感想をいただき、少し追記行いました。

ご指摘ありがとうございました。5/14

少し修正、追記しました。 8/14

さらに修正、追記しました 8 21

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