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イケメン隊長

「今回は本当に助かった。心からお礼を言わして欲しい」


全ての魔物を倒しきり、砦に戻って来ると、金髪のすらりとした少年のような男性に握手を求められた。


まだ、周りでは、傷ついた騎士や、片手が無くなった兵士の手当て、砕けた防壁の修理など、忙しく人が行き来している。


「ああ、すまない。私はこの砦を任されている、バルクルス・シュリフと言う。初めましてかな、シュンリンデンバーグ君。僕の事は、バルでいいよ」


爽やかに笑う表情に誰かを思い出す。

と同時に、忘れられない家名にどんな表情をしたら良いのか、わからなくなってしまい、とりあえず苦労して笑顔を作る。


「バル隊長!負傷者の確認が終わりましたっ!」


「了解した。次の移送で欠損した負傷者は王都へ戻せ。補充人員の申請は行う」


騎士式の胸に手を当てる敬礼をして、報告してきた騎士は走って行く。


「ここは、隣国と接してる森の砦でね。多分、負傷者が国一番で出てる砦なんだよ。私は、兄貴達とは違って、騎士団はどうも苦手でね。ここの、傭兵団みたいな軍隊の隊長をやってるわけだ。

ああ。ライナとはね、すぐ上の兄と言う事になるのかな。親父も、何人も囲ってるから、私たちの兄弟の数も把握しきれなくてね。すまないね」


苦笑いを残しながら、バルと言った騎士は続ける。


「ライナの事は聞いているよ。上の兄と父上はライナの怪我に激怒していたけど、私はライナ達が苗床にされなかっただけでも、君に本当に感謝しているんだ。

ライナの件と、今回の件とであわせたら返しきれない恩ができちゃったから、ここで気にせずゆっくりして行ったらいいよ。まあ、無骨な砦だけどね」


肩をすくめながら、笑うバル。

なるほど。やっぱりシュリフ家はイケメンばかりである。

笑顔がまぶしい。


「まあ、もらい恩ついでに回復もしてくれると助かるんだけど。報酬はつけるから、考えてくれると嬉しいかな」


笑いながら、依頼の話をしてくるバル。


さすが、隊長を努める男。なんだか、切れ者の一面を見てしまった。


「あ、そうそう、それと。シュンリンデンバーク君の事よりも。厄介なのがいたね。まさか帰って来るとはね」


一時的に負傷兵の搬送を手伝っていた、リンダが走って来るのを見ながらため息をつくバル隊長。


あ~。俺も忘れていた。

依頼でこの砦に来たのだった。


「バルっ!帰ったぞっ!」


リンダはいつも通りどや顔で報告する。

バル隊長は困った顔をする。 

「歩いて、来たんだろうねぇ」

バル隊長は、俺の顔を見て呟く。

ええ。馬車なら一週間少しの距離を歩きましたよ。一ヶ月以上かけて。

俺も苦笑いで返す。


「シュン君を連れて来てくれた事が一番の功績ですか」

バル隊長は、そう呟くとリンダに向き直る。


「リンダ。努めご苦労様であった!依頼の物資の報告を」

「おうっ!シュンっ!頼んだっ」


さらに胸を張るリンダ。


俺は、ため息をはいてから、馬車2台分の荷物を出す。


「そこもシュンリンデンバーク君頼りですか。まあ、それよりも。荷物はこれだけですか?」


俺はうなずく。

矢じり一個残さず、リンダの荷物は全て出した。


「そうだっ!頑張っただろう?」


リンダは胸を張るが、ある荷物は全て剣、鎧など武装ばかり。


しかも、質もそんなに良くない物ばかり。明らかに騙されている。


「で、傷薬ポーションなどの消耗品は?」


「割れる危険があるから買っていないっ!」

「塩や、水は?」

「近くに村があるから、調達可能と判断して買っていないっ!」

「保存食は?」

「魔物の肉があるはずなので買っていないっ!」


イライラを通りすぎて、バル隊長から表情が消えている事に気がつかないリンダ。


「で、無駄に軍資金を使ったと?」

「無駄で、、は、、」


バル隊長の顔に気がつき、リンダの表情が強張る。


「もしかして、いらない物ばかりか?」

「全くもっていらない物だ。武器、防具は基本的に国からの支給品があり、品質はかなりいい物が来る。いる物は、水、塩、傷薬である回復ポーション、魔力回復ポーション、保存食だ。村からここまで持ち運ぶために補給部隊を削ると、砦内の配給に支障が出る。村もこれだけの人間を賄えるほどの物資はない。しかも、今は勇者様のナン遠征で、物資が滞り気味だ。だから、リンダにお願いしたのだが?」


俺はそれを聞きながら、持ち運びが難しい荷物だから、帰って来る事はなかったはずなのだが。とも聞こえた。


「す、すまない、バル。でもな、頑張ったんだぞ」

バル隊長は大きくため息をつく。

「持って来てしまった物は仕方ない。使える物は使うし、補修用の材料にもなるだろう。で、シュンリンデンバーク君に別のお願いが出来たのだが」


「分かったよ。これの運搬と、少しなら、水、塩はある。ポーションは作れるが、俺の特製は死ぬほどまずいぞ」


「はは。さっき君が飲んでいたポーションなら、私、個人としては飲んでみたいが、みんなにはそこまでの物はいらないよ。普通に飲める物でいい。少し色をつけるから、分けてもらってもいいかな?」


バル隊長の苦笑いと共に、塩や、水をトン単位で出してやる。

ポーションも、今まで砦にあった分よりも多くなったため、後でギルドに入金すると言う話でまとまったのだった。


その後で、初めて、白金貨が登場する値段に俺もしばらく固まってしまった。

あまりの高額報酬に、こちらから頭を下げて全兵士の回復をさせてもらった。


軍隊、金持ちすぎだろう。いや、バル隊長の気前が良すぎなのかも知れない。

ちなみに、バル隊長からの、数ヶ月分の給料カット宣言に涙目のリンダであった。


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