幕間 ミュア②
「私のマスター」
私は、寝ているマスターの顔に自分の顔をくっつける。
私は私達の家にいた時から時々、こっそり寝ているマスターにこれをやっていた。
私を買ってくれた後、マスターは汚い私をしっかりと抱きしめてくれた。
最初の戦いで、マスターは戦いながら泣いていた。
苦しんでいた。
何でかは分からないけど、込み上げる思いに引っ張られて、私はマスターを抱きしめていた。
何を言ったのかは良く覚えていないけど、マスターは笑ってくれた。
一年間、一緒に住み。一緒に家を建て。お風呂に入り。一緒にご飯を食べ、レベルもかなり上がった。
マスターは、私の不幸の原因はスキルだから。といって、解除までしてくれた。
私は、奴隷だからとか関係なく、どうしようもないくらいマスターの事が好きになっていた。
震えて動けなくなっていたマスターに思わずキスをしてしまい、その後、マスターからやっとマスターの昔の事を聞く事ができた。
マスターもいっぱい悲しみを背負っていた。
けど、この遠出で一番の私にとっての報酬。
私は、今一度マスターの顔に自分の顔をくっつける。
「私は、あなたから離れません。だから、私の全てをマスターに」
私は呟きながらマスターに抱きつく。
安心する。マスターの匂いが、体温が。
私の居場所はここ。
リンダのいびきも聞こえるけど、こうしていると自分の居場所がある事が、しっかり確認できる。
弓も、服も。マスターからいただいた物は宝物だ。
でも一番の宝物はマスター。
私はマスターが死ぬと私も死ぬらしいけど、もうどうだっていい。
もう、マスターがいないなら生きていても仕方ないから。
私はもう一度、マスターを抱きしめながら、砦についた昨日を思い出す。
クアルが大きくなった事もびっくりだったけど、昨日マスターと[譲渡]をした後のほうが衝撃だった。
私がマスターの中にいた。
マスターが何を思い、何を考えているのか分かった。
マスターのやりたい事が分かった。
マスターに全身包まれている安心感を感じながら、私は矢を放っていた。
「マスター。ミュアは本当に」
もう一度。マスターの寝顔にキスをして、私はマスターの胸の中に潜り込む。
「お休みなさい。マスター」
ミュアは、14才ですが、かなりメンヘラです。笑




