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砦へ

「お疲れ様です」

ある日、ギルドに行くと、受付のお姉さんは普段の2割増しくらいに、にこやかに話しかけて来た。

最近分かって来た事がある。

厄介な依頼が舞い込んでいる時、このお姉さんは異様に優しいのだ。

「どんな厄介な依頼が来たんだ?」

俺はむすっとした顔をしながら、受付のお姉さんに聞く。


お姉さんは顔色が変わる事もなく、にこやかな顔のままだ。

「厄介な仕事じゃあありませんよ。西のセイの村の先にある軍事拠点に連れて行って欲しい方がいるんですよ。軍関係の方なんですけど、護衛に出てくれそうな冒険者も、軍関係者も少なくって。今ね、南のナンの村で何か騒動があったらしくて、そっちに人手を回してくれって言われててこんな大変な時期なのに、さらにその依頼主が、条件まで付けて来てて」

お姉さんは、そこで初めて大きなため息を一つつく。


「3人以上のパーティーは除外。途中で戦闘もあり得るから、それなりに身が守れる人。大量の荷物があるから、荷車が引けるくらい体力のある人」

そこまで言った所で、わなわなと震え出すお姉さん。

「無理難題ですよねっ!その荷物っていうのが、馬車1台分になるかも?とかっ!なのに馬車禁止ですよ!?冒険者は、オーガじゃあ無いんですよっ!そんな荷物持って戦える人なんかいるわけないじゃないですかっ!」

ちらっとこちらを見るお姉さん。


俺は頭に手を当てる。

あ~、いるよ。確かに。その条件を完全にクリアできる奴が。

戦闘はまあ出来る方だと思う。荷物に関しては、空間収納があるから、家一軒分だろうとあまり気にはならない。というか、普通に考えたら厄介に厄介をくっつけたみたいな無茶苦茶な条件だろう。

セイの村の先の砦なら、往復で数ヶ月の旅になる覚悟がいるくらい遠い。

面倒だな。断るか?空間収納ならもう一人使える奴がいるし。


「シュン君なら、収納魔法も使えるし、オオカミとか、コボルトとか倒せるし、お願いしたいな~と」

上目遣いで見て来るギルドのお姉さん。

うん。可愛い。なんでこのお姉さんが結婚出来ないのか、不思議だ。

ああ、考えが変な方向にずれた。


隣で、ミュアが俺のローブを引っ張る。

頬っぺたを膨らましているミュアの頭を撫でて、俺は返答する。


「ことわ、、」

「この依頼終了で、Cランクに上がれますよ?」


「分かったっ。やるよ」

冒険者ランクを上げる事も必要な事だ。

やる気マイナスのままで、俺は返事をするのだった。

まったく、どれだけ俺にやらせたいんだよ。


―――――――――――――――――――――

「よろしかったのですか?」

ミュアが声をかけて来る。

多分、長い旅になる事を言っているのだろうが、ぽんぽんとミュアの頭を叩いてやる。


「良い機会だし。ミュアも普通の長旅してみたいだろ?」

その声にミュアは少し首をかしげて、答える。

「私は、マスターがいれば、それだけで充分です」


にっこりと笑うミュアを目一杯抱き締めたくなるが、自制心を総動員して、我慢した。


「さて、準備をするかな」

俺は、屋台に向かって歩き始める。


保存食? ナニ?ソレ?

空間収納の中なら料理は冷めるけど、半年は保つ。それが、今焼いたばかりの豚の丸焼き一匹丸々だったとしてもだ。

どか買いしすぎて、いくつかの屋台がその日、店を閉める事になったのだった。


ついでに、野菜や、香草も買い込んでいると、不思議な顔をし始めるミュア。

俺は、あまり料理をしない。

だから、野菜を買い込んでいる事に疑問が湧いたのかもしれないが、

「お願いな」と俺がミュアに囁くようにいうと、すごくうれしそうな顔をして、ミュアは、なぜか腕を振っていた。


――――――――――――――――


「私が、依頼主のリンダだ。ん?えらくひょろひょろだな。子供がさらに子供連れとか。やる気あるのか?ギルドに苦情を入れんといかんな」

待ち合わせ場所にいたのは、全身筋肉だるまの女性だった。腕はミュアの足の二本分はありそうなくらい太い。


「ボディービルダーみたいだな。シュンだ。よろしく頼む」

ぼそっと呟くと、とりあえず、俺は相手に握手を求める。

「ああ、こちらこそ」

相手が握り返して来た時に、悪い笑みが彼女からこぼれるのを見逃さない。


突然ぐっと引っ張られたが、俺はびくともしなかった。

1000超えの[力]を甘く見てもらっては困る。

踏ん張ったために、石畳の一枚が割れたけど、まあ仕方ないよな。


次に力一杯手を握りしめて来るが平然とする。

防御に関係してる[体力]も1000近くある。

レベル30にもなってない戦士に握られたところで、痛くもない。


「な、なかなかやるよぅだな、道中よろしく頼む」

リンダの声は、仕掛けたからかいが巧くいかなかったからか、少しどもり気味になっていた。


全く、相手の強さくらい、見抜いて欲しいモノである。

ちなみに、あまりにも挑発的なのでステータスを調べて見たら



[名前] リンダ

[職業] 騎士見習い

[種族] 人間

[年齢] 20


[ステータス]


[Lv] 28

[Hp] 1120

[Mp] 100

[力] 300

[体] 250

[魔] 150

[速] 300


[スキル]

両断 スラッシュ


[武器]

片手剣 鋼の剣


まあ、微妙なステータスと、武器だった。

両断とか、バスタードソード(両手剣)推奨のスキルだよな。

スラッシュは、高速の一撃だから、片手剣でも大丈夫だけど、両手剣でも打てるスキルだし。


ああ。ちなみにあのモグラ事件を終わらせた後も、時々森に狩りに行ったりもしてEPを蓄えるようにしていた。今のステータスは。



[名前] シュンリンデンバーグ

[職業] Dランク冒険者(特殊任務請負)


[ステータス]


[Lv] (表示不可能) 50

[Hp] (4000) 3500

[Mp] (5800) 1050

[力] (1500) 500

[体] (970) 480

[魔] (1800) 700

[速] (1100) 350


[スキル]


(データベース) (EPシステム) (火炎魔法・炎スキル使用不可)

 水・氷魔法 風・空間魔法 土・災害魔法 光・視覚魔法 (偽装) 回復魔法 絶対結界 武器作成 防具作成 魔法付与 所有物スキル付与 異空間収納魔法

魔力ビット 

ビットシステム

《空間把握、気配察知、周辺把握、高速並列思考、高速演算、連続詠唱、無詠唱、並列詠唱、同時発動、同時詠唱、並列存在、自立演算、自立付与》


となっていた。

けど、魔力ビットが魔力を喰らいまくるから、MPが5800もあっても実質稼働時間は、10分もない。

30個のビットが魔力消費10の魔力の矢を20発程度ずつ打ったら打ち止め。

まだまだ魔力は上げないといけない。


ちなみにミュアは、俺の魔力は無限と思っている感じがする。

考えるのをやめているだけかも知れないけど。


そのミュアのステータスは


[名前] ミュア

[職業]冒険者付き添い

[種族]ハーフエルフ

[年齢]14


[ステータス]


[Lv] 52

[Hp] 1800

[Mp] 2300

[力] 420

[体] 530

[魔] 810

[速] 560


[スキル]


絶対不幸 精霊言語 共通言語(人間) 矢作成

迅速 精霊魔法 (火 土 光)  随時解呪

魔導砲


[称号]

森の使い

シュンの所有物(創造神の加護)


といった感じであった。

子供と言ったリンダの2倍以上は強い事になる。


「で、持って行く荷物はどれだ?」


俺はぶっきらぼうに話しかける。

初っぱなから人を試すような事をしたり、敬意を払わない人間に丁寧に接する気はない。

まあ、普段からあまり丁寧に人に接してはないけれど。


「ああ、これだっ!」


ドヤッ! と表示が出そうなくらい得意顔で見せて来た荷物に俺は頭を抱えた。

「必死にかけずり回って集めた物資だっ!」

力一杯、胸を張って見せられた荷物を見て思った事は、ただひとつ。

うん。これ怒られる奴だ。

「で、これを持って行って欲しいのだっ!」

とリンダが叫ぶ。

布とか、鉄剣とか、矢じり、弓、鎧、戦いに使う物ばかり、馬車2台分はありそうな荷物。


「で、この荷物を持って戦えと?お前はやれるのか?」

「気合いがあれば出来ない事はないっ!」


ああ。そういう人なのか。

ますますやる気のなくなった俺は、無言で、空間収納に全部突っ込んで、「さっさと出発するぞ」

と一言。

いきなり荷物が消えて呆然としているリンダを置いてきぼりにして歩き出す。

歩き始めた時に、ミュアがぼそっと呟くが聞こえないふりをする。


「マスター、怒ってるでしょう?マスターの顔が怖いです」


怒ってるよっ!


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