幕間 ミュア
私はミュア。
森の根のタイアと、高い白花ミンの子供。
それ以上でもないし、それ以下でもない。
今日も、私は水を頭からかけられ、雑に体を洗われる。
また、買われるらしい。
私は、ハーフエルフ。
木の根のタイアは、エルフだったけど、高い白花のミンは、ある時、人間に襲われて、私を身ごもったらしい。
父親は、誰か全く分からない。
エルフは、弓と精霊魔法しかないから、いきなり襲われたら、何も出来ない。
高い白花のミンは、少し壊れていて、笑っているばかりだった。私はなぜか、エルフの集落から離れた場所に住んでいた。
9才まで、二人の間で育てられていたけど、森の根のタイアにも、高い白花のミンにも、抱き締められた思い出はなかった。
9才になった時、人間の男に首輪をされて、私は連れ出された。
精霊語で、契約と言う言葉が聞こえた。
連れて行かれた場所から、他の人に渡された。
そこで、私は、縛られ襲われた。
身体中痛かった。
何日も、叩かれたり、痛い事をされた。
しばらくして、私に痛い事をしていた人が倒れた。
水が、淀んでいた。毒が混ざった!と精霊が騒いでいたのは覚えてる。
しばらくして、私はまた最初の人のところに返された。
しばらく過ごしていて、また太った男の人に引き渡された。
また痛い事をされていたら、突然、男の人が私の上で倒れた。
次の人は、凄く大事にしてくれた。
でも、咳をし始めて、血を吐いて倒れてしまった。
王都に行く。奴隷商人の男の人はそう言って、私を含めて、数人連れて、旅に出た。
けど、夜営中にオオカミに襲われ、私以外皆食べられてしまった。
叫び声、涙、血飛沫。
私は理解する。
私に関わると、皆不幸になるんだ。
だから、木の根のタイアと高い白花のミンも、村の人も私に、関わらなかったんだ。
そして、私もやっと終われるんだ。
目をぎゅっと瞑り、その時を待ったけど、その時は訪れなかった。
飛び散った荷物をおいて、オオカミの群れはいなくなっていた。
しばらくして、私は優しそうな人に拾われた。
移動の途中、またオオカミの群れに襲われた。
また、人が死ぬ。
護衛の冒険者が逃げ出し、馬車が壊れる。
私は、やっぱり皆に迷惑でしかないんだ。
私があきらめていた時。
突然現れた一人の男の子が、全部オオカミを倒してしまった。
格好いい。
買われるなら、こんな人がいいな。
私は乗っていた馬車がなくなっている事にも気がつかないで、男の子を見ていた。
王都に来て私はまた売られた。
私は奴隷。やっと理解してしまった。
次は、お金持ちの館に連れて行かれた。
ご飯もそこそこに、また、痛い事をされる。
もう、あまり痛くはなくなっていたけど。
私の何かが削れて行くようで凄く痛い。
しばらく過ごしていたら、いきなり、館が燃え始めた。
爆発が繰り返し起きる。
火炎石。精霊たちが騒いでいる。火の魔法を込めた石が暴れているらしい。
私は、再び連れて行かれ。
男の人が、何か慌てた様子で、手紙を書いていた。
しばらくして。
私は鎖に縛られ歩かされる事になった。
乱暴に引っ張られていた時に、男の子が男の人に声をかけてくる。
私は、ミュア。私の周りには、死しかない。
私は、ミュア。・・・・・・・・
鎖が男の子に渡され、何かを食べさせられ、身体中激痛が走る。
痛みに叫びながら、私は思う。
優しくない世界で。
幸せって何?




