無敵?
「よぉ!やっと見つけたぞ」
俺が、数日かけて武器を作り。ミュアと一緒に喜んで一緒に寝た数日後。
厄介ごとを持ってくるのが得意な酒臭いおっさんが訪ねて来た。
「何しに来たんだ?酒ならないぞ」
ぶっきらぼうに返事をしてやるが。
「そんな連れない事言うなや。まあ、その可愛い女の子を見ながら、いい酒は飲めそうだがな」
その言葉に、苛立ちを超えて、殺気を放っていたらしい。
おっさんは、ポリポリと頭を掻き、素直に謝ると、酒臭さが残ったままのダルワンは、真剣な顔になる。
「指名依頼と言うか、ギルドからの指名願いだ。この前、ワイバーンの襲撃で、かなりの兵士が死んでしまってな。やっと最近、国防遊撃軍っての新しくが組織されたんだが、まだ人数が少なすぎて、魔物の出現、調査など、全ての案件に対応できない状態だ。そんな中で、ギルドに厄介な報告が来た。お前さんが拠点にしているこの森、迷いの森のどっかに、例のあいつが、犬っころが生まれた可能性が高いという事だ。前と違うのは、かなりでかい集落になっている可能性がある。とりあえず、調査してくれだとよ」
「報酬は?」
俺がすぐに返す。
値段を聞けば、ギルドの本気度はなんとなく分かる。
「金貨5枚。 討伐種によって加算あり」
「他にこの依頼を受けている奴はいるのか?」
「いないみたいだな」
かなり本気っぽい。
ただの探索依頼一回に50万。
普通はそんなに出さない。経費込みで5万から10万じゃないか?
しかし。それよりも。
俺の森に集落を作ったという事が許せない。
同級生の二人を思い出す。
二度とあんな事をされてたまるか。
だが、この森は以外と大きく、環状線の内側くらいなら、すっぽり入る程度の広さを誇っている。
そんな巨大な森の探索なんて本気で行うようなもの好きな奴もいないから、気が付かないのも仕方ないといえば仕方ない。
ダルワンの話を聞いて、あらためてマップを最大まで拡大して索敵を行う。
索敵をかけていると。
森のかなり深いところ、自分の家から、まっすぐ歩き続けて数日はかかりそうなところで、コボルトの集落が見つかった。
普段はまず行く事がないくらいの森の奥。
2。3つ離れている町なんてカーナビがあっても、毎日探索するわけない。
といか、用事がなければ検索する事もないだろう。
しかし、あんな森の深いところ、誰かが行かないと分からない場所だと思うんだが、誰が探索に行ったのやら。
そんな事を考えていると。
ダルワンは、頭をポリポリ掻きながら、面倒そうに言う。
「一応、Aランク相当の探索依頼だからな。だから、指名願いだ。お前さん以外に森の深い場所に行って大丈夫そうな知り合いが俺にはいなくてよ。依頼を受けたのは、俺なんだがな。今なら3:2でどうだ?」
俺は、ため息を吐くと。
「まあ、行くしかないだろ。こっちに出て来られたら、面倒そうだ。それと7:3な」
俺の返事に、思わず肩をすくめるダルワン。
それを、了承の意味と取ると、俺はにやりと笑う。
一連の話しをじっと聞いていたミュアが俺の顔を見上げる。
「マスター?準備は、何をしたらよろしいでしょうか?」
「ああ、魔力回復ポーションが多めにあれば大丈夫だろ」
ミュアはその言葉を聞いて、すぐに準備に取り掛かる。
俺は、ミュアの声に答えた後で、すぐにでも出発する気だったのだが。
「なあ、ちっとここまで来るのは骨が折れたんだ。せっかく来たんだし、明日出発でもいいか?」
と言うダルワンの一言で気が抜けてしまった。
その目はしっかりと俺の家の中のある物にくぎ付けになっている。
結局、好きにしろと、なげやりにダルワンに返事をし、俺の家の熟成肉を肴に、どこからか出した自分の酒を飲み始めるダルワンをあきれて見るのだった。
――――――――――
「行きますっ!」
ミュアの矢が走り、Dランクのオオカミ型の魔物が一撃で倒れる。その隙を狙って、必ず来る仲間の攻撃は俺の絶対結界に阻まれ、その場で立ち止まる。飛んだオオカミ達は空中で壁にぶつかり、滞空している最中に、空中で3方向から撃ち抜かれ絶命する。
その数秒後には、ミュアの次の矢が、足が止まっていたオオカミを貫いていた。
わずか、2、3分で、オオカミ10体が倒れ、残りは森の奥に逃げ出して行った。
「あ~。なんて言うか、お前ら、一応Aランクの俺より強くないか?」
ダルワンが呆れるのも分かる。
特に俺は何もかまえていない。武器すら持っていない。
一年。魔物ホイホイのおかげで、ミュアの絶対不幸の解呪は出来た。
その後で、俺はファン◯ルの基礎を作る事に専念していたのだ。
結果。
[魔力ビット]
絶対結界、各種魔法を空間、距離に関係なく発動出来る魔法媒体を生み出せる。自在に動かし、全距離、全周囲の攻撃と守備が可能。自身と、周囲にいる仲間(持ち物)が危機になれば、絶対結界のバリアを勝手に作成する
[ビットシステム]
空間把握、気配察知、周辺把握、高速並列思考、高速演算、連続詠唱、無詠唱、並列詠唱、同時発動、同時詠唱、並列存在、自立演算、自立付与 が詰まった物。理論上は無限に近い数の魔力ビットを運用できる。
この二つのスキルが完成した。
このスキルにより、地上なのに、ビットが自在に動き回るのを見た瞬間、「トキは来た」と呟くくらい、浮かれてしまった。
このビットの一番凄いところは、ビットに、絶対結界が張れるという事だ。
つまり、空中に絶対結界が張れる。
これで、無敵の自動盾が出来たといえる。
しかも、ビットの裏側からなら攻撃し放題。
表側からは全ての攻撃を防ぐという、反則性能はそのまま。
さらには、ビットは常時展開可能。
今も数個のビットが俺の周りに展開していたりする。
弱い魔物は、さらに遠くに展開している魔力ビットがどんどん蹴散らしてくれるから、エンカウントもほとんど気にせずに森の中も歩ける。
マップを見ると、面白いように赤い丸が生まれ一瞬で消えていく。
そんな感じなので、EPは何もしなくても貯まって行くようになった。
「マスター、ご飯は、まだ大丈夫でしょうか?」
ミュアが見上げながら聞いて来る。
くぅ。と可愛くミュアのお腹が鳴った。
俺は、ミュアの頭を撫でて、ご飯にするかと笑う。
その様子を見ながら、ダルワンは、くっと酒をあおり、吐き捨てる。
「独り身には辛い」
「稼ぎは良いんだから、結婚するか、買うかすれば良いんじゃないか?」
「ば~か。お前さんは、地獄を見てないから、そう思えるんだよ。知り合いが、大事な人がバラバラになった姿を見て、発狂してる奴を見たら、どうもな、踏み出せん」
肩をすくめるダルワン。
確かに、自分もあの時、発狂寸前だったのかも知れない。
ライナの姿を思いだし、苦い顔をしていると、ミュアが心配そうに、俺のローブをつかみ俺を見つめて来る。
はっきり言う。
ミュアが魔物に襲われて、あんなになったら、発狂する自信はある。
もう一度、俺は見上げてくるミュアの頭を撫でるのだった。




