自制亡き少年
「マスター、すごく嬉しそうです。私にも、ご褒美をお願いしてもよろしいですか?」
ミュアが、俺の腕にしがみつきながら、上目遣いで話しかけて来る。
この一年で、俺は馬鹿みたいに身長が伸びていって、170台半ばまでなっていた。
けれども、ミュアの身長は伸びず、140前後のままだから、親子ほどの身長差が出来てしまっている。
しかし、普通に並んで歩いているだけなのに、すれ違う男は、ミュアを必ず見るようになっていた。
透き通るような白い肌に、薄い青色の髪は、腰の上まであり、サラサラと流れるのが印象に残る。
目も青色っぽく、目鼻立ちはしっかりしているのに、顔立ち全体が凄まじく幼い。
11才と言われてもうなずいてしまうくらい幼い。なのに、綺麗な顔立ち。
美少女。胸を張ってそう言える子に成長していた。
俺は、ミュアに微笑むと、冒険者ギルドに入る。
入った瞬間。
「シュン君っ!生きてたのっ!良かった~!」
と受付のお姉さんが叫んだ。
「おい。あれ、《暴緑》だぜ」
「生きてたのかよ。行方不明から1年だろ?」
「しかし、渾名通りだな。ただ者じゃない。特に連れが」
「美少女引き連れやがって。ころっ、」
「やめとけ、究極幼女趣味にさわるな」
ざわざわと周りも騒ぎ出す。
何人か、死にたい奴もいるみたいだけど。
というか、渾名がレベルアップしてないか?
「とりあえず、素材の買い取りをして欲しいんだけど。お金の持ち合わせが乏しくて」
俺が笑いながら受付のお姉さんに話しかける。
「あら、シュン君、雰囲気変わった?まさか、その娘、、?」
「私ですか?私は、全てマスターの物ですが何かあったりしますでしょうか?」
ミュアの一言に、ギルド内が、殺気立つ。
コロスのオーラが、あちこちから立ち上る。
受付のお姉さんからも、怒りオーラが出ている気がするけど、気にしない。
「うん。ミュアは、俺の奴隷だから」
俺は、そう言うけど、ミュアはちょっと切ない顔をする。
「全ていただいて欲しいのですが、まだダメななでしょうか?」
ボソッとミュアが呟く。
最近、ミュアは俺が寝ている間に、俺に襲いかかって来る事がある。
全て、かわしているけど。
「で、何を買い取ったらいいの?」
明らかに怒り状態のお姉さん。
「あ~ 結構、量があるから、いろいろ準備がいるかも」
俺が呟くと、お姉さんは、カウンターから出て、隣の部屋に連れて行く。
「はい、預かってたギルドカード」
俺のギルドカードを渡される。
そして、ミュアにも、カードが渡された。
「これは、奴隷証明カード。誰の奴隷か分かるようになってて、身分証明に使えるカードよ」
それを見ながら、一年前にもらっていた仮カードを返す。
「じゃあ出すぞ」
俺は、空間収納を開いた。
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「はあ?シュン君どこにいたの?!ブラッドボアなんて、Bランクモンスターよっ! こっちは、サイレントキラーとかっ!こんなサソリいたら、ギルド全力討伐対象なのにっ!」
ドサドサと出す、魔物の死体。
まだまだ、これでも、10分の1くらい。
Bランクのレッドカウとか、神戸牛並みに美味しいものは出してない。
だんだんと頭を抱え出す、お姉さん。
そして、叫んだ言葉は。
「マスターっ!!」
結局、素材だけで、大金貨8枚(800万)の買い取りだった。
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大分すっきりした。
空間収納の中がワイバーンのせいでそれなりに圧迫されていたから、他の詰め込んだ物を大放出して、やっとすっきりした感じがする。
さて、拠点に帰るかなぁと、伸びをする。今日は、依頼を行う気は最初からなかった。
とりあえず、空間収納の中身をすっきりさせたかったのと、ミュアにつけたスキルがきちんと効くか確認したくて街に来ただけだった。
ミュアのステータスは。
名前] ミュア
[職業]冒険者付き添い
[種族]ハーフエルフ
[年齢]14
[ステータス]
[Lv] 50
[Hp] 1600
[Mp] 2100
[力] 400
[体] 500
[魔] 760
[速] 550
[スキル]
絶対不幸 精霊言語 共通言語(人間) 矢作成
迅速 精霊魔法 (火 土 光) ※随時解呪
魔導砲
[称号]
森の使い
シュンの所有物(創造神の加護)
※随時解呪
シンが無理やり作ったスキル。EP50,000使用。
絶対不幸の効果を解呪するためのスキル。
呪解除など、複数のスキルが混合し、新しいスキルになっている。
無理やり作ったスキルのため、データベースに該当なし。
そう。この、随時解呪の効果を見るための街歩きだった。
そして。
「大丈夫そうだったな」
俺が笑うとミュアもにっこりと笑う。
街でスリに会ったり、馬車に潰されかける事もなかった。
カードがおかしな動作をする事もなかったし。
とりあえず、街で生活出来そうだ。それが分かっただけでも大収穫だった。
後、そんなちょっとしたお使いみたいな訪都だったのに、ワイバーンにまで会えたのも、嬉しい誤算だった。
おかげで、手元に残す素材を全く考えなくて良い。
俺とミュアは、ゆっくりと、敵に襲われずに街から、歩いて1日かかる拠点へ帰るのだった。
俺の身長以上ある塀の門をくぐる。
中には、池と、火の精霊にお願いして沸かす露天風呂、ちょっとした屋敷みたいな家が建っている。
毎日、コツコツやってたら、立派な家になったのだ。
土魔法の便利さはとんでもなかった。
拠点に帰ってからは、ウキウキしながら、ワイバーンの素材を使ってゆっくりと、武器、防具を作る。
ミュアはそんな俺を見ながら、笑っているのだった。




