炎の後に。
「朝?」
俺は、ベッドの上で目を覚ました。
頭が痛い。自分の枕元には、自分のメイスがおいてあった。
見慣れた風景。
自分が寝泊まりしている部屋。
ゆっくりと体を起こして、窓を開けようとした時。
思い出してしまった。
強烈な赤。
ライナの悲鳴。レイアの叫び。
ライナがされた事まで思い出し。
「ぐぇぇっ!ぐはっ、がはっ!」
窓に顔を出して、吐いた。
しかし、何も入って無い胃は、痙攣しながら文句を言うばかり。
酸っぱい唾がこみ上げて来て、また吐こうとするも何も出ない。
俺はそのまま、窓に手をかけたまま、座りこむ。
ガン。
何で助けれなかった。
ガン、ガン、ガン。
この世界が優しいわけないじゃないか。
ガン、ガン、ガン!ガン!
俺から、大切な人を全て奪いさって行くんだ。
ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!
カイル、レイア、キシュア、修道院のお母さん達。妹、弟、女将さん。
そして、ライナとレイア。
全部、全部。
魔物が憎い。
そして、何より。
何も出来ない自分が許せない。
「入るぞっ。っ! 何してるんだっ!シュンっ!」
突然入って来たヒウマに俺は羽交い締めにされ、
窓から引き離される。
血が床に飛び散り、頭を自分で割る作業を中断されてしまった。
「にゃん、頼む」
「本当は嫌にゃんだけど、シュンはヒウマの命の恩人だから、仕方ないにゃ」
にゃんに、頭とひたいをなめられる。
ざらざらした舌と、暖かい体温が傷と心まで癒してくれるようだった。
出血が止まると、にゃんはすぐに離れる。
ペッペッと唾を吐いてるにゃんを見ると、自然と微笑みになった。
「まったく。自分を責めるなよ。森の一件は、あの状態で命があった事が奇跡なんだとよ」
ヒウマは、ゆっくりと笑う。
「お互いに、生き残れたし、ライナさんとレイアさんの二人も生きてるよ。ギルドマスターやら、校長からもよくやったと、栄誉紋章をもらったぜ」
俺は、二人が生きているという言葉にゆっくりと顔を上げる。
「だから、あ~なんて言ったらいいんだろうなぁ。とりあえず、お疲れさんてこった」
ヒウマは、にかっと笑う。
「あ、でも二人は実家に戻るらしくて、昨日旅立ったよ。ロアが心配だから、ついて行くだとよ。 あと、本当にありがとうな。あの時、シュンが来てくれなかったら、にゃんと二人であの中で死んでたわ」
そう言い残して、部屋を出て行くヒウマ。
そのすぐ後。
金髪の青い鎧に身を包んだ若者が入って来た。
ガン! と荒々しく扉を開け、ずかずかと入ると、一閃。
俺の首に、ぴったりと剣が押し当てられる。
「お前がシュンリンデンバークだな。私は、アラス シュリフ。
ライナ シュリフの兄だ。ライナ達は、心身に深い傷を負った。
よって、実家にて、静養する事にした。お前の面会及び、謝罪は不要だ。我らの家に来るなら、その首は無くなると思え。いいな。これは、ライナの命を助けてもらった事に対しての精一杯の譲歩だ。本当なら、今ここで、お前の首をはねたいところなのだからな」
一方的に話したい事を話すと、じっと俺を見つめるライナの兄。
確かにライナの兄だと分かるくらいよく似ていた。 髪も、今、彼がしている、表現も。
気持ちの整理がつかず、泣きそうな、でも困っている表情。
キン と突然、剣を納めると、彼は俺を一度見てから部屋を出て行った。
「本当にありがとう。我々の帰還が遅れたため、君たちに負担をかけてしまった。二人の妹の命を助けてくれた事に、今一度、感謝する」
その言葉に。
今一度、俺は泣くのだった。
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次の日、校長に呼び出され、冒険者のギルドマスターと共に、学校内栄誉紋章をもらい、服に付けられた。
それと同時に、学校の卒業を言い渡される。
そんな気分でもないのに、次々と進む状況に流されてしまう。
その中で、地下の小部屋にいたあのコボルト。
みんなの話をまとめると、コボルトアルケミスト (Cランクモンスター) と、コボルトシャーマン(Aランクモンスター)
だと認定されたらしい。
そして、二匹を倒したのは、俺という事になっていた。(必死に違うと言ったが、調査書を提出した後で、変更は出来ないと言われた)
で、その上で、そんな高ランクモンスターを倒せるのなら、今さら学校にいる必要はなく、教える事もないため、パーティーを見つけて、冒険者として、依頼に集中して欲しいと言われ。
さらに、Aランク指定の魔物討伐達成について、市民栄誉賞も考えていると言われてしまった。
あわてて辞退したけど。
そしたら、お金だけでも。
と大金貨3枚を渡された。
(300万)という、せちがらい報酬に、少し笑顔がひきつったのは秘密である。
こうして、俺の学校生活は、たった2年程度の間で終わってしまったのだった。
ストックが切れてしまいましたので、再び、毎週投稿にさせていただきたいと思います。
これからも読んでいただけばとっても嬉しいです。




