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焦燥 焦走

「どうしよう」

 私達は、二人で茂みに隠れていた。

だって、目の前には、犬の頭を持った子供くらいの大きさの人が動いていたのだから。


コボルト。授業では聞いた事のある敵。ただ、多分、私達で勝てる敵じゃあない。


オオカミとか、イノシシとかなら、何とかなるけど、ゴブリン、コボルト、オークの3種類には手を出すなと言われている。


なぜなら、彼らは群れで生活し、上級クラスが近くにいるかも知れないから。


あと、言いにくそうに、その3種類の魔物は、人との間に子供を作るらしいとも言っていた。

無理矢理に。


だから、もし見つけた場合は絶対に手を出さずに、隠れている事と言われていた。

もし、見つかったなら、全力で逃げる事とも。


けど、もうそろそろ半日近く私達は隠れている。

私達も限界。


コボルトは、数体ずつで活動していた。


帰りの時間を考えてなくて、暗くなって来たから森の浅いところで夜営をして。

朝になってから、探索がまだまだ全然できてないから、ちょっと奥に入っただけだったのに。


私達は泣きそうになりながら、うずくまっているしかできなかった。

助けが来てくれる事だけを信じて。


―――――――――――――――――――


俺は走っていた。

森の中には、2つの緑色の点が動かずにじっとしているのを、マップで確認していた。


二人はまだ生きている。

けど、周りに赤い色が数体いる。

魔物に囲まれているのに、動きがないのを見る限り、二人は、隠れている可能性が高い。

俺は、焦りながら森に走る。

しつこいやつは、メイスで叩き、魔法で蹴散らす。

しかし、数が多い。というか、湧く量が多すぎる。

 前に、数千体倒した時並みに敵が森から湧いてくる。

焦りはピークになっていた。


「ジャマだぁっ!」

森に出てくる魔物もやけに強い。

いつもなら、ワイルドウルフとか、群れでDランク相当の敵が一番強いくらいなのに、ハーフバウンドとか言う、木を蹴りながら飛んでくる身軽なオオカミなど、単体でDランクの敵が群れで出てる。


襲いかかってくるドーベルマンみたいな犬を、メイスで弾き飛ばして、土魔法で串刺しにする。

少し敵が強いから、一撃で確実に死なない。

2、3発殴らないといけないのに、数が多すぎる。


自分の焦りからか、前に狩りまくった時より、殲滅速度が遅くなっている。

魔物に囲まれる速さが違う。

視界に入ってきたウルフ達がさらに追加で、まとめて俺に襲いかかってくるのが見えた。


少しの怪我は覚悟して、突っ切るか。


そう思った時、数発の火の矢がそのウルフを撃ち抜いた。

倒れて行くウルフ達。


「何をしているんだい?彼女達の危機なんだろう?ここで、君のハーレムフラグを作る手伝いなんてしたくないけど、彼女たちの涙はもっと見たくないからね。迎えに行ってあげなきゃ」


数個の魔法球を飛ばしたまま、笑顔で出て来るロア先輩。


俺は、頭を少し下げて、森の奥に走って行った。


「はあ。焦りすぎだよ。シュン君。いつもの舞うような動きが全くないじゃないか。けど、僕もちょっとこの数は骨が折れるかな」


ロア先輩は、目の前に出てくる数にため息を吐く。


「よく戦ってたよね」


周りにいる敵の数は多分、50に近い。

しかし、それ以上に足元には100近い魔物が、転がっている。


「君も十分。化け物だよ」


森の奥に走って行ったシュンに、薄く笑いながら、ロアは、周りを見る。


「やれるだけやって逃げますか」

森の中に、魔法のきらめきと、爆発音が響き渡り始めた。


――――――――――――――――――――――――


さらに走る。先輩が引き付けてくれたから、マップで見る限り、赤色は近くにいなくなっていた。


しかし、突然、自分の横に赤い点が表示され。

真横に黒い大きな塊のもやが現れる。

もやの中から、とてつもなく大きな足が現れる。

ジャイアントバッファローがリポップしたらしい。

その黒い塊が暴れ出す前に、俺は、空中に迷わず飛び上がる。


俺がいた場所が広範囲で、踏み潰される。

よかった。あそこにいたら、ペタンコだった。


魔法球を出し、絶対結界を魔法球の上に張り。

それを足場にさらに飛ぶ。


自在に動かせないなら、設置型にしてやればいいんだよっ!


ジャイアントバッファローの周りに魔法球を数個出し、周りから風魔法の一斉射で、ジャイアントバッファローの頭を落とす。



生まれて、1分以内でその命を終えるジャイアントバッファロー。


そのまま、落下していたら、黒い影に空中で拾われた。


「ほら、トロトロしてたら置いていくぞ」


「にゃっ!」


一匹と一人は、俺を地面におろしてくれると、森の奥に走って行った。


途中、にゃんが、熊をひいて行くのが見える。

今のひき逃げだよね。


そう思う余裕も出てきていた。


――――――――――――――


ずっと隠れていた私たちは、絶望していた。

漏らしたとか、そんな些細な事じゃなくて。


いきなり目の前のコボルトたちが慌て出し、地面が開いて、数体のコボルトが出て行くのが見えた。


ガウガウ言いながら、薬を近くのウルフに飲ませると、ウルフが一回り大きくなり、森の外に走って行く。


授業で聞いた事がある。

コボルトアルケミスト。

コボルトの上位魔物で、薬による強化、回復を行う、面倒な魔物。


何で、Cランクの魔物がいるの?


私達が混乱していると、今度は、骨の魔物が数体出て来た。


そして、禍々しいローブに身を包み、骨の首飾りをしたコボルト。


聞いた事もない魔物。

その魔物は、こっちを見て、ニヤリと笑った。


私達が震えた瞬間、黄色い煙が周りを包み、私達は眠くなってしまった。


助けて、シュンくんっ!


叫んだつもりだったけど、声も出せず、私達は意識を失った。



気づかれたと思いますが、誰かが死んだり、深く傷つく時は、タイトルに『赤』を使用します。

 苦手な方は飛ばしてもらって構いませんが、シュンを形作る原因でもありますので、ご了承いただけたらと思います。

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