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ロマンを求めて。

これなら使えるっ!そう思ってました。私にN◯能力をください。

ダルワンさんから、物体飛行の魔法を見せてもらったから、2つを組み合わせて、これで、ロマン武器が使えると思ったのに。


今、俺は、激しい頭痛と、吐き気に襲われていた。


やっと使えると思って魔法球を飛ばして見たら、こんなに制御が難しいとは思わなかった。


まず、真っ直ぐ飛ばない。地面に刺さる。空中にどこまでもあがって行く。

行きすぎたと思って、逆制動をかけると、飛びすぎて、地面にぶつかる。


2個扱おうものなら、吐き気と、頭痛と、目がぼやけ出す。

右手で、チェスをしながら、左手で、編み物をしながら、足で、ビーズアクセサリーを作る事を、同時にしてる感覚。


絶対無理。


力一杯叫ぶものの、もうちょっとで、扱えるようになりそうで。


狩りの後、みんなと別れたて夜中に、宿の後ろで、地味に魔法球の操作練習をする事が増えていた。


――――――――――――――――――――――――

「お願いがあるのです」


学校が終わり、久しぶりにレイアとライナが、用事があって行けないといわれた日。


ギルドに行くと、ギルドの受付でそんな事をいわれた。


ダルワンさんは、奥でエールを煽っている。

 本当に酒飲みオヤジめ。


仕方ないから、聞いて見る事にする。

「本当なら、みなし冒険者さんに依頼のお願いは出来ないのですが、どうしても個人的にお願いしたい事がありまして。私の兄は、行商をしているのですが、昨日到着の予定だったのにまだ帰って来てなくて。いつも、シュンさんが行って下さっている、迷いの森の横の街道を走っている頃のはずなのですが、数日前から全く連絡もつかないので心配で。もしかして、何か危ない事でもあったのかと。もし良かったら、近くで何かなかったか森の探索がてら、気にしていただけないでしょうか?」


「まあ、いいですけど、依頼として出すのは駄目なんですか?」


「変なパーティーに当たると、調べてもないのに、何もなかったと言われて、お金だけ取られる事もありますので・・・」


聞かなかった事にしたかった。信頼が大事なのに、そんなことをする奴もいるのか。


まあ、ほぼ毎日薬草採取の依頼は受けているけど。

森の浅い所の薬草はほぼ取り尽くしたから、別の依頼に切り替えたい所だったので、とりあえず受ける事にする。


たまたま目についた、街道沿いのオオカミ退治という依頼を薬草採取の代わりに受けたのだった。


町の外に出て、マップを開いて見ると、意外とオオカミが街道に出て来ているのが分かる。

この前、9000匹を狩り尽くしたばかりなのに。


「オオカミ退治かぁ。戦いは好きじゃないんだよなぁ」

ダルワンさんはぽりぽりと頭をかきながら、あくびをしている。


「まあ、とりあえずやれるだけ、やりましょう」


俺が言うと、ダルワンさんはにまっと笑い、魔法を使う。

「我は風。我と同じく風であり、命の伊吹を知る者よ。その調べを我に知らせよ![気配察知!]」


相変わらず、魔法詠唱は、聞いてて恥ずかしくなる。


「あ~意外といるなぁ。てか、おかしくないか?20体近くこの回りだけでいるんだが。これじゃあ、まともに移動なんかできやしねぇ」


確かに。マップには、50体近く街道にいるし、行商と思われる、荷台を追っているのが見える。


このままだと、囲まれるな。


俺は、気配察知を使うふりをしてから、走り出す。


「どしたい?」


さすが、ダルワンさん。いきなり走り出してもしっかりと着いて来てくれている。


「この先に、オオカミに追われている商人がいます!オオカミの数は多分20近く!」


「マジかよ。応援がいる数じゃないか」


「ダルワンさんは、商人の護衛に専念してくださいっ!僕は、ちょっと本気でやりますっ!」


俺たちが走っていると、前から、全力で走って来る馬車が見えた。限界までスピードを上げていたらしい馬車の車輪がぐらついているのが見える。


そして、ついに車輪が壊れ、馬車が横転した。オオカミが一斉に飛びかかる。


「魔法球!」

俺は魔法球を出し、普通の風の盾を展開したまま馬車の上に飛ばす。


風の盾に数体のオオカミが引っ掛かり、弾き飛ばされる。

「エアニードル!」


間髪入れずに次の魔法を発動。

空中に残ったオオカミを串刺しにする。


馬車の前で、飛び上がり、更なる高度魔法を馬車の上で準備する。

ダルワンさんが、馬車の横に着いたのを確認してから、一気に発動した。

「ドーナツサークル 凍結っ!」


馬車を中心として、馬車以外の地面がペキペキと凍り出す。

よしっ!ほとんどの足止め成功っ!

俺は馬車の上に一回着地して、一気に殲滅に向かう事にした。


―――――――――――――――――――――

僕は商人をしている。ギルド受付をやっている妹もいるけど、今まで行商をやって来て、今回ほど運がない事はなかった。

最初の不運は、魔物に襲われた馬車を発見した時だった。

持ち主は、ボロきれになっていて、荷台の中は、ほぼ空っぽだった。

それでも、積める物は、自分の馬車に詰め替える。


商人のたしなみとして、欲しいと言っている人がいるのなら、運ぶのは当然だから。


その時に、10才にならないくらいの見た目のエルフ奴隷が荷台に隠れているのを見つけた。

良く助かったものだと思いながら、彼女も馬車に乗せる。


奴隷商人に渡せば、いくばくかのお金になるからだ。


その夜、ホーンバッファローの大移動に遭遇してしまった。


土煙を上げて、走って来る恐怖の集団に何人かの冒険者が逃げてしまった。


その日は、あわてて逃げ出したのだが、そのバタバタの中で、水を積んでいた樽に穴が空いていた。


首都に到着予定の日はすでに過ぎてしまっている。

妹にも、連絡していないから、心配しているかもしれない。

あいつは昔から心配性だったから。


水を節約しながら、進んでいると、突然、オオカミの鳴き声が聞こえ出した。

「あり得ないっ!あいつらは、夜行性だっ!」

と、叫ぶ声も聞こえるが、オオカミの鳴き声は、容赦なく増えて行く。


「やってられるかっ!」


冒険者は散り散りに逃げて行く。


別に、私も命は惜しい。冒険者の行動はある意味正しい。

逃げるなら、バラバラに逃げた方が助かる確率は高いのだから。


私は、冒険者に恨みを抱く暇もなく、一気に逃げる事にした。


オオカミの数は増えるばかり。


昨日の夜から、全力で走らしている馬車の車輪が、鈍く折れる音が絶望を運ぶ。

馬車が横転し、気がついた時には、自分の回りは凍りついていた。

馬車から弾き飛ばされて、気を失っていたらしい。



「噂には聞いてたが、本当に化け物だな。あいつは」


私の近くに、中年から、初老くらいの男が立っていた。

 杖を持ったまま、頭をかいている。


改めて回りを見ると、足の氷りついたオオカミをハンマーのようなメイスで、叩き潰している少年が見えた。


やっている事は、悪魔。

走り回り、次々とすれ違い様に殴り飛ばし、頭を、体を引き潰して行く。

だが、氷の上を滑るように走る彼は、綺麗だった。


この日。助かったという安堵と一緒に、本当の悪魔は美しいのだと私は実感したのだった。





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