その後。 決戦
ゆっくりと球体の両側に開き始めていた目が、開ききり。
光る。
「ダメっ」
叫びながら、巨大な結界魔法を使うシリュ。
蒸発は避けられたが、そのまま吹き飛ばされる。
「魔力が、、」
シリュが、泣きそうな顔をしている。
今の魔法盾で、魔力の大半を使い切ったらしい。
ミオと、にゃあは地面に落ちたまま動けなくなっている。
「ちと、辛い戦いになりそうだな」
タイガの牙がちらりと見える。
ミリにいたっては、最初の光りに吹き飛ばされて動けなくなったままだ。
「ちょっと、休んだら、動けるから。大丈夫なの」
小さく呟いているのが聞こえるが、強がりなのは分かっている。
俺は、自分の槍斧を構えなおす。
全体に張った回復陣も、さっきの攻撃で吹き飛ばされた。
目しかない、上空の球がにやりと笑った気がした。
俺は、自分の槍斧を握りしめる。
しかし、その手を柔らかい手がそっと支えてくれる。
「また、ろくでもない事を考えているです。ダメです。シュン様は、皆の父親なのですから」
リュイが、小さく笑う。
ふと、自分が、にやりとした笑みを浮かべていた事に気が付いた。
「時間がいるか?友よ」
白く大きな犬のような獣がにやりと笑う。
獣人の長は、大きな咆哮をあげると。
一気に突撃していく。
「あの、脳筋がっ!」
その後ろを、黒い風が追いかけていく。
「十分、ヒウマも脳筋なのにゃ」
そんな声を残して、飛んで行く黒と白。
無数に伸びて行く手を、ヒウマが、長が、弾き飛ばして行く。
そんな二人をあざ笑うかのように、再び目が光ったと思った時。
その目の周りで、爆発が起きる。
「総力戦ですな」
ギャルソンが、両手を伸ばしていた。
「竜人の力。忘れてもらっては困ります」
再び、ギャルソンの手から、光が弾け飛ぶ。
「私たちは、あなたを守るために、あなたの傍にいるのです」
リュイの言葉が優しく感じる。
そうだ。
俺は、守る。いや、守られ。守るんだ。
「そうだな。忘れかけていたよ」
一人じゃない。
全部を背負う必要も無い。
こんなにも、一緒に背負ってくれる仲間が、家族がいるのだから。
俺は、球体に向けていた槍斧を下げる。
「リュイ、やれるか?」
「いつでも。です」
即座に返事が返って来る。
自分の相石に、頼もしさを感じながら、俺は右手を伸ばした。
「いってぇ」
ウルが頭を押さえながら起き上がる。
痛い?
僕は慌てて飛び起きる。
パパの魔法陣が吹き飛んでいる。
「回復がなくなってる!」
僕の声に、慌てるウル。シミュを探しているらしい。
僕も、慌ててにゃあを探す。
あの高さから落ちたんだから、二人とも無事じゃないはず。
そう思っていたのだが。
「痛かったにゃあ」
「もうちょっと、優しく落としてくれても、良かったんじゃないの?」
二人とも、ふらふらしながら、立ち上がっていた。
「あら。二人とも、もしかして、私たちに何かあったかと思った?獣をなめてもらっては困るわ」
「そうだにゃあ」
笑っている二人に。
僕と、ウルはそれぞれ自分の相方に抱き着いていた。
「ちょっと」
シミュが照れた顔をした時。突然、目の前が赤く染まる。
ふと、僕たちが顔を上げると。
そこにいたのは、巨大な、巨大は火で出来た竜。
紅と黒をまとった炎の竜が、目玉に向かって飛んで行く。
「あれは、流石に、、無理ね」
シミュが呟く。
何が無理なのかは、聞いても分からないと思う。
けど、僕もそう思う。
パパとママが二人で作るアレは、、無理だ。
「愛羅舞竜! 紅黒!」
リュイの叫びと共に。
弾け飛ぶように飛んでいった竜は、球体を呑み込み。
空に巨大なハートマークを打ち出し。
その炎が全て地面に落下していく。
そして。
巨大な炎の柱となった魔天使の。目玉は弾け飛ぶ。
「ちっ」
タイガがその姿を見て、舌打ちする。
「やっと、本体か」
ぼろぼろになった長も、着地する。
球体が、ぼろぼろと崩れ落ちて行き。
中から、オークのような体をした青年が出て来る。
「倒したとか思ったかい?無駄だよ。無駄。なぜなら、オークナイトの力。いや、これは、もう、オークキングと言ってもいい力だからね」
青年はそう言うと、自分の手を自分で斬り落とす。
斬り落とされた手は、血が出る事もなく一瞬で再生する。
下に落ちた手は、上で笑っているオークとまったく同じ姿で、再生していた。
「まだ、逆らう気かい?無駄だよ。無駄。僕はね、、いや、私は、、、神になれる器を手に入れたのだから!」
青年は大きく手を振り上げる。
「さぁ。始めようじゃないか。私に逆らう者のいない、誰も失う事の無い、私の理想の世界の創造を!」
その姿が、一瞬、別の人間に見えた気がした。
「お父さん、、、まだ、諦めてなかったの」
その姿に、かつての身体の父親の姿を見たシリュは、茫然とその姿を見つめていたのだった。
定期更新できなくて、本当にすみません。 なかなか、筆が進まないと言う状況に陥っています。
なんとか、終りまではいきたいと思いますので、気長に待ってくれると本当に嬉しい限りです。
誰か、力を貸してーーー




