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その後 魔天使

アンデットの中を縦横無尽に走り回るミリ。


獣人化したミリの足は誰も追いつけないし、誰も捕まえる事が出来ない。

走っていった先から、何かうっすらと青白い光が見える。


「ミリ!急いで!」

シリュの声が響く。


「あーもう!」

上空で、ミオの声が聞こえる。

切っても斬っても生えて来る手に、苦戦しているようだ。


飛びたいと、体がうずく。だが、ビットが使えない以上、俺が空にかけあがる事は出来ない。

「大丈夫。子供達は強いです」

同じく、竜の羽を失っているリュイが、俺の手を握りながら笑う。


「パパ!地上の敵を倒して!」

シリュの焦った声が聞こえて来て。

「ツエエのは分かるが、この数は、、ちとしんどいぞっ!前よりも多いんじゃないか?」

タイガの声も張りが無くなってきている。


「タイガ!リジェネの効果が無くなるぞ!いいか!」

俺の叫び声に、剣を上げて答えるウル。

俺は、薄く広く張っていた回復魔法を切った。


両手で自分の槍を握り直す。

薄く。薄く。

シリュに出来たんだ。

回復魔法なら出来たんだ。


出来るはずだ。

俺は、魔力を伸ばし。延ばし。

リュイが俺の両手を握り魔力を追加してくれる。


「いけぇ!」

空に向けて放った2人分の魔力は、空に赤い雲を生じさせ。

紅黒の雨が降り始めた。


「リジェネより強力じゃねぇか」

タイガは、降って来た赤い雨に、笑いを隠せない。

雨に当たった場所から、自分の傷が回復していく。


そして、目の前のアンデットは、一部溶けていた。

「弱体化の雨。全範囲とか、やっぱり、シュンは強ええよ」

にやりと笑い、動きが明らかに遅くなったアンデットを切り倒す。


「撃て、撃て!敵の動きが遅くなったぞ!」

矢が再び勢いを増して、敵を倒して行く。


そして。

「いつも思うけど、パパって、神様に近いと思う」

シリュは、突然降り出した、紅と黒がまざった濃い紅い雨を見ながら茫然としていた。


「シリュ!ぼーっとしないでなの!」

ミリの声に、はっとして魔法を打ち始める。


全てのアンデットの動きが遅くなり。

走りやすくなったミリは、最後の一本を書き切る。


「出来たの!」

「いくよっ!」

シリュが、魔力を込める。

「無理!魔力が全然足りない!」

シリュが泣きそうな声を出した時。

「手助けが必要ですかな?お嬢様」

聞き覚えのある声が聞こえ、顔をあげると、そこには、パリッとした服を着こなして、華麗にお辞儀をしている竜人がいた。


「ギャルソン!」

シリュが驚いた顔をすると。

「我がご主人は、いつも何も言われずに、死地に旅立つゆえ、バトラーとしては、気が気ではありません」

苦笑いを浮かべたまま。顔を上に向けると。


バサバサと、降りてくる数名の竜人と、数十匹のワイバーン。

「急ぎであったため、着いて来れる者しか連れてこられませんでした」

その声と同時に、ワイバーンの炎が地上のアンデットを焼いて行く。

「では、始めましょうか。お嬢様」

ギャルソンは、笑いながらシリュが手をかざしている魔法陣の中心に手を当てる。


二人が魔力を込めた時。

一気に地上に書かれた線が光り出す。


「広範囲、魔力浄化魔法陣なの!」

ミリが無い胸を張る中。


魔法陣の上にいる全てのアンデットがとけていく。

「これで勝ちなの!」

笑うミリ。


「周りを良く見ろ」

俺は、そんなミリを叱り飛ばす。

娘の首をねじ切ろうとして延ばされた、手を切り飛ばしながら。


「あ、ありがとう、なの。パパ」

ミリが、落ち込んでいるのを見ながら、俺は空中を見る。


ほぼ全ての手を切り落として。

中央の球体を切り刻んでいる二人。




「もう少しだ!」

「分ってる!」

僕は、ウルと顔を見合わせる。

勝てる。


僕たちは確信していた。

「一機に切り裂くよ!」

「了解だよ!」

シミュが一気に羽を広げる。

「いっくにゃあ!」

にゃあも羽を広げる。


そして、僕たちは球体に突撃し。

二人で、同時に紫色の球体を切り裂く。


終ったと思って、球体を見ると。

振るえていた。


倒せたわけじゃない。

何かがおかしい。

「まだ、やる気か!」

ウルが剣を構えなおした時、僕の背中、いや、全身から一気に汗が噴き出た。


殺される!!!!

咄嗟に、にゃあの首の毛を掴み、にゃあを走らせる。

そのまま、ウルに突進する。


僕もウルも、にゃあも、シミュも落ちていく。

その上を、光が、そう。巨大な光が通り過ぎて行き。


キンカの町どころか、その先のドウタクの水源地まで一気に薙ぎ払う。


「た、、助かったよ」

ウルが震えながら、その光景を見る。

けど、僕はそれどころじゃなかった。


震えは、殺されるという感覚はまだ強くある。

いや、さっきより強くなっている。


「ありゃ、、やばいな」

タイガおじさんの声が遠くに聞こえていた。


紫の球体に。

僕とウルが付けた深い傷が限界まで開き。


球体の両側に巨大な目が生まれていた。

「勝てるか、、」

草原の民たちが、ざわつき始めている中。


球体の真下から突然、木のようなツタが延び地面に突き刺さる。

突き刺さった地面が紫色に侵食されて行き。


死んだはずのアンデットが再び地面から生まれて来る。

「マジかよ」

タイガおじさんは、その光景を見ながら、自分の大剣を再び構えるのだった。




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