その後 黒幕
「だから、パパがココに用事があるからって言うから来ただけで」
「もふもふ」
「えーー。でも、ここには、パパがいるから、何があっても大丈夫だよ」
「うん。僕も名前を知ってるくらい凄い人だもの。それは知ってるんだけど、パパが」
「もふもふ」
「だーぁーかーらぁーーー!ミオの耳は、リルの物なんだからぁ!気軽に触らないでよ!」
突然、大声を上げたリルの声に僕の耳をもふもふしていた他の子たちがびっくりした顔をする。
話をしていた、ロアさんの子共のロラも呆気にとられた顔をしていた。
それでも、そっと僕の耳に手を伸ばしてくる子。
「ダメッ・・て」
再びリルが叫ぼうとしたとき。
突然地面が震えた。
「「地震か!」」
パパと、ロアさんが同時に叫ぶ。
「え、え!」
慌てているママたちを見て、僕も不安になってしまう。
「大きいか?」
「余震っぽい気がするね」
パパとロアさんは冷静に話をしていたりする。
僕はというと、思わずロアさんの子供達を全員抱えるようにして抱っこしていた。
一番年上のロラが、僕を見上げてほわあっと顔を赤くしてるのはきっとびっくりしたからだと思う。
「シュン様?今のは。。。?」
ママが恐る恐るパパを見る。
けど、二人は何故か何も無い所を見たままで動かない。
どうしていいか分からない時間が流れていく。
「ぱ。。」
僕が声をかけようとした時。
「テーブルの下に隠れろ!丸くなって動くな!」
パパが突然叫ぶ。
「ライナ!結界魔法準備!」
ロアさんまで叫ぶ。
僕の周りに、ライナさんの防御用結界魔法がかけられ。
パパの絶対結界が周りに張られる。
何が起きるのか、まったく分からなくて混乱している最中にそれは来た。
地面が突然無くなったような衝撃。
その後で、横に引っ張られるような揺さぶられる感覚。
「動くなよ!」
パパの真剣な声が響く。
「でかいね」
ロアさんの声が酷く落ち着いているようにも感じる。
ママも、ミリもシリュも全く動けないというか、震えている。
いや、地面も揺れているんだけど。
長い、長い時間が過ぎて。
揺れが落ち着いて来る。
「でかかったな」
「だね、、震度、、4、、いや、5、、かな」
「それくらいはありそうだったな」
「なんで、ロアさんも、シュン様もそんな?地面が、地面が」
ママがへたりこんで言葉が出なくなるなんて珍しい。
そんな事を思っていると。僕の腕が引っ張られる。
「なんで、ミオもそんなに落ち着いていられるのよっ」
リルが、涙と、鼻水でぐちゃぐちゃな顔で僕を見ていた。
「ミオ君は、シュン君の血を濃く受け継いでいるのかも知れないね」
にこやかに笑われて、僕は思わず顔が赤くなるのが分かる。
いや、空中でくるくる回る事が多いから、耐性があるだけだと思うんだけど。
「しかし、、地震とは、、」
「ロア隊長!!!」
突然、家の扉を開けて、一人の青年が駆け込んで来る。
「さっきの揺れで、冒険者のギルドが壊滅的被害を受けました!けど、それよりも!」
青年は、切羽つまった声で叫ぶ。
「海が、水が一気に引いて行ってます!」
その言葉を聞いた瞬間。
パパと、ロアさんは顔を見合わせる。
「ロア!」
「分ってる!」
突然立ち上がる二人。
「ライナは、すぐに子供達を連れて、高台に上がって欲しい!」
「いや、ミオ!全員をすぐにミュールに乗せて空中に上がれ!魔力は、シリュと、ミリに頼む」
ロアはパパの言葉に、目を伏せて小さく何かを言う。
「それよりも、避難を優先だ!」
「だね!」
二人はそれだけ言うと、外へと走り出して行ってしまう。
何が起きたのか、分からずに呆気に取られていると、ミリに頭を叩かれた。
「パパの言った事をすぐに行うの!お母さんにすぐ乗って、空中に逃げるの!多分、津波が来るの!」
「津波?」
「説明は上でするの!急ぐの!」
ミリが久しぶりに真剣で、怖い顔をしていた。
「これが、、津波、、、」
僕たちの真下で、人の身長を遥かに超える波が、パパの絶対結界に当たって、弾けて二つに分かれていた。
絶対結界を張っているパパの後ろには、ほとんど町の人全員と言ってもいいくらいの大勢の人がひしめき合っている。
「これだけ巨大な結界を張れるなんて、、、」
ライナさんが信じられないと言った顔で下を見ている。
パパの結界は、町の半分をカバーするほど巨大なものだった。
「ほんとに、人と思えないわね」
レイアさんがぼそりと呟く。
その言葉に、ママがレイアさんを一瞬睨んだような気がした。
波が結界を打ち据え。
引いて行く。
崩れた瓦礫を全部海へと連れて行く。
その全てが引きかけた時。
海の上に、誰かが立っていた。
「男か?」
アティが疑問を浮かべる。
普通の人が海の上に立てるわけない。
魔法使い。
もしくは。
「やっとそろった。これで、彼が出来なかった事が出来るようになる」
男は小さく笑う。
小さい声なのに、何故か良く分かる。
男が笑う。
だんだん笑い声が大きくなる。
そして。
男は。
「シュンリンデンバーグ!やっとお前に!お前の大事な全てを奪い取れる時が来た!お前が大事にしてきた全てがある、あの場所でまたやり合おうじゃないか!」
大声で叫びながら、空中へと上がって行く。
そして、男は空中へと消えていったのだった。




