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その後 悪魔の欠片

「それで、ここに来た理由を聞かせて欲しいんだが?観光とかじゃないだろ?」

ジョッキの酒を傾けながら、タイガが俺の目を見て来る。


奥では、ヒュウとリュイが一緒に飲んでいたりする。

と言っても、ヒュウは身重という事で、お茶のような物を二人で飲みながら、甘い樹液で煮詰められた肉を食べながら笑っていた。


その二人を見た後。

その奥で寝ている子供達を確認して。

「魔樹に会った」

「魔樹?あれ以来出て無かったが、、何か緊急の用事か?」

タイガの目が鋭くなる。


「魔樹が言う限り、、アレの破片が、この森に落ちていたらしい」

「はぁ?アレって、アレか!?」

「完全に光の中で消滅したと思っていたんだが、実際はかなりの数の破片が散っているらしい。その一つを、魔樹が、その体の中に隠してくれていたらしいんだが」

「だったら、大丈夫じゃねぇか?魔樹だろ?あいつらを見つける事も、触る事もまず無理だ。お前さんなら出て来てくれるだろうが」

タイガは安心した顔をしているが。

「そうも言っていられない。アレを隠していた魔樹が枯れたらしい。そして、見える状態になっている所で、ナニモノかが、持って行ったそうだ」

「は?」

タイガの手が、顔が驚きを超えて間抜けになる。

「だとしたら、また復活するのか?アレが」

「神の力で爆砕したから、あの異常な回復力は無くなったと思う。もしあの時のままの力を持っているのだとしたら、今頃アレが大量発生してるはずだ」

「だよなぁ。考えたくもないけどよ。で、ここに来たのは、、」

タイガが俺の顔を見て来る。


「アレが復活したら、、助けて欲しい。おそらく、次は俺じゃ勝てない」

真剣な顔で、タイガを見る。

その瞬間。タイガは大笑いをしていた。

「なんだ!そんな事を言いに来たのか?俺を誰と思ってるんだよ」

豪快に笑いながらジョッキを傾ける虎。

「お前は、俺の友だ。戦友だ。なら、お前が嫌と言おうが、来るなと言おうが、嫌われようが、駆け付けてやるよ。浮島に乗ってでもな」

ウインクをする虎に、俺は思わず吹き出していた。


「くだらねぇ事言ってないで、次の欠片を探しに行くんだろ?だったら、今日はしっかり飲んでいけや。お前さんはいっつも背負い込みすぎなんだよ。気楽に行こうぜ。滅びる時は滅びるもんだ。

まぁ。抗ってはやるけどよ」

器用に二度目のウインクをする虎。


ヒュウと二人で、この殺されるしか未来の無い森で、町を作って来た虎の言葉に。

俺は少し心が楽になったような気がしていた。



「あー痛てぇ」

「どんだけゆっくり寝てやがるんだい。シュン達ならもう出たよ」

タイガが、頭を押さえて起き出して来た時、ヒュウが、呆れた声を出す。

「マジか。俺と一緒に飲んだくせにどんだけ強いんだよ。シュンは」

頭を押さえながら、豪快に水の入った樽に顔ごと突っ込んで水を飲む。

「後で、水の汲み直し、してくれんだろうね」

ブルっと顔を震わせたタイガは、笑いながら腕を突き出す。

「で、どうするんだい?」

微笑むヒュウ。

「決まってる。欠片が散ったなら、探せる範囲で見つけ出して踏みつぶすまでだ」

「やれやれ。村の護衛もあるのに、厄介そうな仕事が増えるねぇ」

ヒュウは、肩をすくめるが、出来ないとは言わない。


「それと、ウルの鍛え直しだな」

タイガが、突き出した自分の腕を見ながら、誰かを思い出していると。

「そうだねぇ。ミオとか言ったっけ?相当強くなったね。あの子」

ヒュウも笑顔のまま返事をする。


「次の戦いは、本当に総力戦になるかもしれん。覚悟はしてくれよ」

「はぁ。今までの戦いで、総力戦じゃなかった戦いがあったら教えて欲しいものだよ」

ヒュウは、大きくため息を吐く。

そんなヒュウを抱きしめると。

「気苦労ばかりかけるな。すまねぇ。けどな、この子が生まれる前にはケリをつけてしまいたいんだ」

真剣な夫のその言葉に。

ヒュウは、そっと大きな虎の背中を抱きしめ返すのだった。






「何処に行くの?」

僕は、お母さんの背中の上から、パパに声をかける。

「港町の方だ。もう一人、会っておきたい人がいる」

ママは、それだけで分かったのか、少し微笑んでいる。


「港町なら、今あの当りにいるのは、、、」

ミオが何かを思い出した時。

ミオの体にリルがぶつかって来る。


「ちょっと、危ないなの!」

ミリが叫ぶが、リルはぶつぶつと何かを言っている。

 大丈夫。もう慣れた。私は出来る子。

なんて聞こえて来る限り、まだ高いところは苦手みたいだ。

けど気を失ったり、吐いたりしてない所をみると少しは慣れたのかな。

そんな事を思っていると、後ろから誰かに抱きしめられた。


顔を上げると、僕の真上に、大人っぽい整った顔が見える。

「流石に、私でもこの高さは怖さを感じるというのに。ミオは強いのだな」

アティの声に、ドキドキしてしまう。


隣で、にゃあが髪を逆立てていたりするけど僕たちはお母さんの背中に乗ったまま、港町へと飛んで行くのだった。

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