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その後 次の行先。

「もうそろそろ終わりみたいなの」

ミリが、少し大きめの陶器の瓶を投げつけると、回復していたはずのオークの体から再び血が噴き出す。


「ミリ、その薬なんなのにゃあ?」

にゃあが恐る恐る聞いて見ると。

「にゃあも浴びて見る?回復阻害ポーション」

その後で、ミリの長い説明を短くすると、黒炎の効果というよりは、バジリスクの溶解液を濃色しているような物であり、相手に継続ダメージを与え続けると言ったものらしい。


ダメージ量が回復量を常に超えている状態だから、回復阻害なのだろうけど。


「絶対あびたくない薬だね」

アティの言葉に僕は大きくうなずく。


最後に残っていた亜人たちが見えなくなるのを確認して。

僕はその場に座り込んでいた。


「ん?地面?なんで私、降りてるの?」

今頃になって、目がさめたリルが、目を丸くしている。


「のんきに寝てて羨ましかったにゃぁ。何回も死んだと思った戦闘が終わったとこにゃあ」

にゃあが、そんなリルに呆れた声で返事をしている。

「ずっと寝てるなんて、根性すわっているの。で、あれ、誰?」

ミリが、容赦ないとどめを刺して、リルは、必死に何かを叫んで言い訳をしていたりする。

時々、高い所が。とか、ミオのカッコいいところを見損ねたとか言っている気もするけど。


「で、これが、、何処につながっているか、、だな」

パパはそれだけ言うと、集落の真ん中にある巨大な紫の光りを放つ扉へと歩いていく。


「え?」

「シュン様!」

皆の驚きを残して、パパは躊躇なく、その中へと入って行ったのだった。


「入ります!」

「いや、ダメなの!パパは、百歩譲って、この世界の加護がまだあるけど、ママは無いから!」

ミリが必死にゲートの中に入ろうとするママを押さえている。


僕も気が気じゃない。

本当に入って大丈夫なものなのか、そもそも、この光の扉が何なのかも分からないのに。


僕たちが、心配して見守る中。しばらくして、パパはすんなりと戻って来た。

「あんな所につながっているとなると、、やっぱりあの当りが怪しいのか・・・」

そんな呟きが聞こえていたけど、その後に。

「シュン様!だから、あなたは!何度も私の心臓を潰す気ですか!」

ママの久しぶりの怒鳴り声を聞く。

ぎゃんぎゃんと叫び続けるママに平謝りしながら、パパがママの頭を優しく撫でると。

だんだんと涙目になっていって、パパの胸で泣き出す。


ミリも、シリュもその光景を見なれているので。

「この光の先、行って見たい気もするよね」

二人でのぞき込んだりしている。

「ふむ。伴侶とは、ああなりたい物だな」

アティが、真剣な顔でそんな二人を見ていて。

いやいや、まだ早いと、ガルスのおじさんが止めに入っていたりする。


そんな状況の中。

「あの先は、もう廃墟だ。()()()()()()()る」

ミリは何かを感じたのか。頭を押さえる。

シリュも、自分の体を抱えるようにしてぶるっと震えていた。


「ただ、あれは魔の森の近くだと思う。行って見る必要はあるな」

パパは真剣な顔で僕らを見渡す。

僕らは皆、パパの言葉に頷く。

付いて行く。その返事なんだけど。

パパがずっとママの頭を撫でてて、ママの顔が真っ赤になってる事に誰も突っ込みを入れられなくなっていた。





「ちっ。なんだよっ!」

両足で走りながら、巨大な剣を振るい。

2メートルくらいの虎は悪態をつく。

「こいつら、この辺りにはいない奴だろうがよっ!」


その巨大な剣が振り下ろされ。

白いゲジゲジのような巨大な虫が切り倒される。


「アシダカとか言ってたわね」

豹の姿をした魔物が短剣を振るい飛んで来ていた蛇を斬り落とす。

蛇に羽が生えているのは、気にしてはいないらしい。


「また、何かが起こる前兆か?」

虎の魔物は、切り倒した魔物の群れを見ながら呟く。

「子供も大きくなったから、少々の事は大丈夫でしょ」

豹の魔物が小さく笑う。

「けど、次の子は、たくましくなりそうね」

「はぁ?」

間抜けな顔をする虎に。

「やることやってるんだから、出来るでしょうよ。加減てのを覚えなさいよね」

「本当か?本当なのか?」

嬉しそうに豹の手を掴む虎。

「嘘言っても、仕方ないじゃない」

「ははは。よくやった!いや、ありがとうだな!酒でも飲むかぁ!」

「飲んだくれは、嫌いだよ」

「連れねぇ事をいうなよ!ヒュウ!」

「はぁ。なんでこんな人を好きになっちゃったのかねぇ」

二足で歩く、虎の魔物が小躍りするという、不気味な光景を見ながら、豹の魔物はため息を吐く。

「けど、この世界は優しくないからね。特に私たちにとっては」

魔の森という、弱肉強食のこの森で、生きると言う事。


何度も絶望を見続けて来た二人にとっては、今のこの幸せがずっと続いて欲しいと願うだけだった。





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