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その後。 巨大なゆりかご

「本当にコレに乗るのにゃあ?」

目の前にある大きなお腹に後ずさりするにゃあ。

「これが、うちの一番早く、一番大きな乗り物だ」

当たり前のようにその生物を見ているアティ。


「さすがに、これは考えた事もなかったわね」

シリュまで小さく呟いている。


身長が低めの妹は、首が折れそうくらい上を向いている。

「これがいた事に気が付かなかった事も問題だけどな」

パパも苦笑いしかない。


そう目の前にいたのは、ジャイアントバッファロー。

5メートルにもなる、超巨大な魔物だ。

しかも、2体。


「テイマーとか言う奴がこれをくれてな。俺の集落には、なんだっけ?【隠匿(いんとく)】とかいうスキルを持ってるやつがいて、そいつのスキルで完全に【視えない】状態にする事が出来るらしいぜ。

俺達はいつも見えてるから、別にもう気にもならないんだけどな」

「とは言っても、ジャイアントバッファロー2体とか。これだけでキンカくらいなら壊せるぞ」

パパは笑うガルスに苦笑いしか返せない。


ジャイアントバッファローと呼ばれるだけある、巨大な牛のような魔物はとにかく大きい。

そして、一度動き出したら止まらない。

全てで踏みつぶすまで、


僕も何度か戦っている所を見た事があるけど、こいつだけはみんな苦労して倒していた。

この魔物。ただただ大きい過ぎるのだ。


「私のスキルで、集落の外の人間には見えなくなっていますが、たしかにそこに【いる】のです」

「おお。こいつが、さっき言った【隠匿(いんとく)】のスキルを持っている奴だ」

「初めまして。英雄様。【(かくれ)】と申します」

すごく細い男の人だった。切られていない長い髪がふわりと揺れる。

女の人と言われても納得してしまうくらいの。


「他に何の特技も無いですが、何かを隠す(かく)のは得意です」

にこやかに笑う男の人に僕は何か、嫌な気配を感じてパパを思わず見る。


けど、パパは全く気にしていないようすだった。

「ガルス。これを持って来たテイマーとかは?何処にいるんだ?」

パパが尋ねるも。

「さぁな。これを押し付けて、何処かに行っちまったからなぁ。なんか、テストだから、とか言ってたが」

ガルスさんの返事に、また考え込むパパ。


「ちょっと、もしかして、もしかしなくてもだけど!まさか、これに、乗るとか言わないわよねぇ!」

あまりの大きさに、完全にフリーズしていたリルが騒ぎ出す。


「もちろんだ」

「悪夢よ。きっとこれは悪夢なんだわ」

パパの返事に、ぶつぶつと何かを呟き始めるリル。


「暴れたら危ないから、何かで縛っておくといいのにゃあ」

そんなリルをにゃあは、ジト目で見ていた。


「本当に、これを捕まえたテイマーが何処にいったのか、知らないのか?」

「シュン、お前そんなにしつこかったか?知らないものは知らないんだよ。顔を見たことすらなかったから、俺が在籍していた時の冒険者でもないだろうしな」

「考えても仕方ないか」

パパは前を向くと。


「とりあえず、行ってみたら何か分かるかも知れない」

それだけを言うと、圧倒的に高い背中に飛び乗る。


「シリュはこっちに来るです」

シリュがママに抱えられて飛んで行く。

「行くにゃあ?」

にゃあが僕の方を見て来る。


僕が頷く先で、アティがするすると器用にとんでもない高さを登って行くのが見えた。

「ライバルが増えたら困るにゃあ」

小さくにゃあが呟いたような気がしたけど、気のせいだと思いたい。


「絶対乗らないからね!あんなの!魔物じゃない!絶対嫌だからね!」


騒いでいるリルの腰を抱え上げて、僕は地面を蹴る。

飛び上がった先で、にゃあが大きくなる。

その背中に空中で乗った僕は、にゃあの首筋を撫でるとにゃあはジャイアントバッファローの膝を蹴ってさらに上空へと上がって行く。


「ダメだからぁ!高い所は本当にダメなんだからぁ!許してぇ!許してくださぃーーー!」

必死に叫ぶリルの声を真横に聞きながら。






「2つ目。やっと見つけたよ」

緑色の髪を持つ男は、拾った肉塊を持って微笑んでいた。

「空中で弾け飛んだと思ったら、ゲートの中に入ってしまうなんてね。本当に探すのに苦労するよ」


神殿のようにも見えるただただ広いだけの地下で、改めて肉塊を見る。

ピンクのその塊はあまりにもグロテスクだ。


「さすが、、英雄の子共、、と言うべきなのかな」

心臓のようにも見えるその肉塊は、小さく動いている。

「【融合】あんな便利なスキルがあれば、もっと楽なんだがな」

目を細める男。


「救いをこの地に」

男は小さく呟く。

拾った肉塊を大事そうに懐に抱えながら。


「長居は無用だな。ここの主が帰って来ると面倒な事になりそうだ」

神の気配を感じ取りながら、男はちいさく笑う。

「あと一つ。あれは、【魔の森】か」


男はそれだけ言うと、ゲートの中へと躊躇なく入っていくのだった。


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