表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
293/312

その後 広がる異変

「すっごーーーーーい!!」

森を抜けた先。

突然広がる目の前の光景に、目をキラキラさせているリル。

「地面が、丸く見える!なんで?目の前全部地面とか凄すぎる!」


「そりゃ、平原だもの」

シリュが、そんなリルを引いた目で見ている。


けど、僕もこの景色を見ると少しだけ安心するというか、ほっとする。

僕たちは、この先の町にあるキンカで生まれて、育ったのだから。


森の中よりも、平原が合ってると自分でも思う。

パパも笑いながら、歩き出す。


リルはうきうきしながら僕たちに付いて来るのだったが、、


「体がだるいー。足が痛いー。もう歩けないー」

歩き始めて本当に少ししか経ってないのに、そんな事を言い出し始めた。


「休憩にするです?」

ママがそんなリルを心配して見ている。


「これくらいで、根をあげるんじゃまだまだミオのお嫁さんには程遠いにゃあ」

にゃあが、不機嫌そうに呟いている。


僕が、そんな二人をなだめようと、声をかけようとしたとき。


背中から、頭の先までしびれるような感覚を感じて、立ち止まってしまう。

思わず爪を出す。

今までで感じた事の無いほどの恐怖。


心臓を掴まれているかのような感覚。

僕が動けないでいると。


キン!

と激しい音とともに、空中に突然クナイと言う、投げナイフのような武器が現れる。

光りの壁にはじかれた武器は、空中で消えてしまう。


「ふうーーーー」

にゃあが毛を逆立てているのが見える。

「なに?なにが起きてるの?」

まったく理解できていないリルは、ただ、周りを見回して慌てているだけ。


パパが、何もない空中を斬りつける。

その先で。


ゴブリンが、真っ二つになっていた。


「ありがとうミュア」

と呟いているパパ。それを聞いて、少し不機嫌なママ。


そして、突然空中から現れた亜人を見て、シリュが息を呑んでいるのが分かった。


なんだか分からなかったけど。

「これ、ゴブリンアサシン!」

シリュの声に、僕は思わず、その亜人を二度見してしまう。


ゴブリンアサシン。

隠密というか、まったく見えない敵というので有名で、出会ったら死ぬとまで言われている。

冒険者を暗殺しまくる悪魔だ。



冒険者になった時、少しでもゴブリンアサシンがいるという話を聞いたら、絶対に近づいては行けないと言われた事を思い出す。


でも、パパ、今見えない敵を見事に一刀両断した気がしたけど。

パパを見るも、パパはすごく真剣な顔をしている。


「リルのために、歩いてキンカまで行こうかと思ってたが、歩きは中止だ。急ぐぞ」

それだけ言うと、シリュを見るパパ。

シリュも、一つ頷くと、上空に向かって魔法を放つ。


緑と青が絡まったような光が柱のように上空に上って行く。


「何したの?」

リルが、不思議そうに首をかしげる。

僕は、ちょっと意地悪く返事をしてあげた。

「お母さんを呼んだんだよ」






「バカぁ!しねぇ!聞いてないぃぃい!」

お母さんの上に乗って、叫び続けるリル。

必死にしがみついているけど、ママの上は捕まる所はあまり無かったりする。

結局は、僕の服を握りしめたり、僕の腕を抱え込んでいたりする。

大声を上げて、悲鳴まで上げているリルとは正反対に、シリュは、端っこから下を見て、喜んでいたりする。

今にも落っこちそうでこちら見ていてハラハラしてしまう。

けど、万が一、落ちてもすぐにパパとママが助けそうだけど。

パパとママは、自分の魔法で飛んでたりするけど、空中のことにおいてはあの二人は異常だから気にしたら負けだと思う。

あの魔天使やら、飛ぶアシダカ相手に、空中戦を延々としてた二人なのだから。


あの戦いの後、パパは空を飛ぶ練習をし始めていたし。

「飛行魔法は、やっぱり便利だから」

そんな事を言っていたパパの目が僕より子供みたいだったのは、笑ってしまったけど。


横で、ママとを繋いで飛んでるパパを見ながら、「やっぱり私も覚えようかなぁ。飛行魔法」

とかシリュが言っているけど。


シリュならすぐに覚えれると思うから、やればいいのにと思う。

ちょっと嫉妬もしてしまうけど。


僕たち、ミリと僕は魔法が使えない。

その代わりに、身体能力が高いけど、パパとか、シリュが全力で魔法強化をかけてしまうと、僕たちなんかより圧倒的に力も、速さも上になってしまう。


本当に魔法ってずるいと思うのだ。

「ミオ、着いたよー!」

そんな事を考えていたら、シリュが嬉しそうに下を指さしている。


足元を見ると、見慣れた街並みが見えて来ていた。

豆の畑の世話をしながら、多くの人が上を見上げているのが見える。


水も川のように流れていて、穏やかな田園風景だ。


けど、僕たちが生まれるちょっと前まで、人を殺して食べないといけない時があったと聞いた事があって、子供ながら、思わず震えてしまった事も思い出す。

「わるい子から食べますからね!」

今でもキンカで言われている、子供をしかりつける時の言葉だ。

僕もママ以外の人から何回も聞いた事がある。


人を殺し、奪い合い生きて来た町を、分かち合い、助け合う町にしたおじさん。

その手伝いをしていたと言う、パパ。


僕は思わず、自分の頬を叩く。

びっくりして、わめくのを止めてしまったリルに笑いながら。

英雄という言葉に、追いつきたいと思うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ